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乳帰る

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朽木白哉はおおよそ、「乳」というものにこだわりはなかった。
同級の者が「父」を「乳」、「乳牛」を「ちちうし」と脳内変換するお年頃、
彼にとって「父」は「御尊父」であったし、乳牛は、
「家畜化された牛のうちで、特に乳の出る量が多くなるように
品種改良された牛、またはそのもの」であった。

だから成長して、いっぱしの男になった彼の眼前で、あちらこちらから
乳だの尻だの押し付けられても彼の目に止まったのは、
胸というよりむしろ「胸部」を従属させていた女性二人だけだった。

白哉にとって「ルキアの胸」という単語は、その人生における優先順位の中で、
1位 ルキアの存在 2位、ルキアのすべて 3位 ルキアといる時間……
597位 ルキアの胃、の次席に甘んじる程度の価値しかなかった。

だから白哉は、目の前でこのせつない努力をする義妹を前にこう告げたかった。

いや、実は告げた。

案ずることはない、そなたの姉も揉めど暮らせど寸分の動きを感じさせぬ難攻不落の
名城、いや名胸であった。そなたも姉の血を濃く受け継いでいるのだから、
無駄な修練は即刻やめて、朽木家の名に恥じぬよう正当な努力をするがよい、と。

ここまではっきりとは言っていないが、大体似たようなことを言った。

そして彼は最後に、そんなことをせぬとも、そなたのすべてを愛しく思っていると
付け加えた、かった。

惜しむらくは、ルキアが兄の言葉を皆まで聞くことなく白哉の元から
泣いて走り去ってしまったことだ。

ルキアは、穿界門を光の速さで突っ走り、現世で爆睡中だった一護を叩き起こし
有無を言わず押入れにもぐりこんだ。


そして、今に至る。

至ったからどうだ、と一護は思う。
彼女が転がりこんでからずっと、近くから遠くから嫌というほど見知った霊圧が
一護を監視している。登校中、授業中、食事中、あるいは風呂の最中であれど。
そんなに気になるならとっとと連れて帰ってくれ、とどっかの誰かさんに、
正面きってどなりつけたいのは山々であるが、こんな痴話喧嘩に介入するのも馬鹿馬鹿しい。

かくして一護は、毎日毎日エストロゲンだの大胸筋だの乳腺だの知りたくもない単語を
念仏のように唱えるルキアを、そして今現在、隣で、

「大胸筋三十一、大胸筋三十二、大胸筋三十三、大胸筋三十四……」

と一心不乱に腕立て伏せを行っているルキアを、あえて放っておくことにしたのであった。

彼にとって幸運なのは、彼女の耳にまだ「誰かに揉まれると大きくなるよ♪」
というこの上なくどうでもいい知識が入っていないことだ。
ルキアが一護を含め他の異性に向けてその台詞を吐いたが刹那、
億の刃、その全てが覆い被さり、キゼツ・ソサエティを通ることなく、
刃の咽に呑まれて消えるはめとなる。

校舎の屋上で過ごす初夏の昼休み。

幸いにも今、一護とルキアの他に、ここにいるのは、
井上、恋次、一角、弓親とそれに日番谷。

恋次は、俺よりも事情を察しているだろうし、一角は戦闘バカだ。
弓親は人のことより自分の美醜にしか興味がないだろう。
日番谷も問題ない。彼は子供ながら実に見事な理性を持っている。
心底、誰かに見習って欲しいぐらいだ。
井上は、……たぶん言わない。言ったら俺の中の何かが崩壊するように思う。
小島を含めクラスの連中は、またルキアと面識が浅いからそこまで
突っ込んで聞いてはこないだろう。


あ、一人いた。


と、一護が思ったそのとき、無常にもその言葉がある人物から発せられた。

「胸は誰かに揉まれて大きくなるもんよ~」


言った。
言っちゃった。

恋次、日番谷、そして一護が目を合わせ同時に肩を落とす。
ついでに彼らを監視している大いなる霊圧がぶるっと震えるのが直に感じる。

「松本副隊長、やっぱりそうなのですか!?」
「そうよ~、自助努力なんてたがが知れてるわよ~、やっぱポイントはこれね、
だ、れ、か♪」

皆まで言うな、しかも強調して言うなと3人が目で訴えるが乱菊はそれを己が胸で
阻んでどこ吹く風の様子である。
胸というより「乳」の上に、夏服の方が申し訳なさげに被さっている。
皆に異論の余地を与えぬほど実に説得力のある、それの持ち主がそう言ったのだ。

「わぁ~乱菊さんってそうなんだ~」
「井上はどうなのだ?」
「えっ!?えへへ、ヒ・ミ・ツ♪」

駄目だ。流れ的に最悪だ。
なんでよりにもよってお前が援護射撃するんだよ。無理に意味深にしなくていいよ。
お願いですから、あんたらのそれは、遺伝と日々の自助努力の賜物であると
嘘でもいいから言ってください、ほんともうすいません、と懇願するような眼で
一護は巨乳族に訴えかける。が、族の皆様は、無邪気な笑顔で見事にスルー。

次に一護はルキアの方も見た。
なんだ、そのしてやったりという顔は。
しかも、「やっぱり」って、お前知ってるじゃん、
ていうか知ってたらまずくない?
この流れからいって、言われる確率が一番近い環境にあるの俺?

一護が思わず恋次、日番谷の方を向いた。
彼らは、憐憫という言葉では収まりのつかないほどの眼差しを一護に向け、
サッと目を伏せた。

それ以上、何も語ることはなかった。

予鈴が鳴った。

昼休みが終わる、俺も終わる。

今日は、いつ卍解を発動してもいいように、準備だけは整えよう。
一護は、今にも自らに襲い掛かりそうな無数の刃の霊圧に対し覚悟を決めた。
作品名:乳帰る 作家名:梶原