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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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芳醇完



「でね、2人は旅立って行ったー。」

話は終わり、という感じでヒナタが最後に言ってヒオウを見る。

「・・・。」
「えっと・・・テヘ?」

無反応なヒオウにたいして、上目遣いに愛想をふってみる。

「・・・。」

ヒナタは少しもじもじした後で逆切れした。

「なんだよ、なんで黙ってんのさ。ちゃんと話したじゃん。なんか言ってよーっ。」

するとヒオウは深いため息をついた。

「はぁー・・・ヒナタ・・・君ってほんとに・・・。どんな危険な事をしてたか分かってるの?」
「わ、分かってるよ。」
「まったく・・・冗談じゃない。それで僕に黙ってて症状が悪化したらどうするつもりだったの。」
「ぐ・・・。だ、だってーシエラ様が消えていくって言ったし・・・ごめんって、ヒオウに迷惑かけるつもりはなかったんだ。」
「いや、ヒナタがどんな状態になろうと、どんな事をしでかそうと、僕は迷惑だなんて思わないよ。」
「ヒオウぅ」

ヒナタは目をキラキラさせた。

「・・・普段から十分迷惑かけられてるしね、慣れた。」

そう言われガクッとなる。

「ふ・・・それは冗談。まぁね、ヒナタの困ったぶりは今に始まった事じゃないのは冗談ではないけどね。僕が言ってるのはそんな事じゃないって分かってるんでしょ?」

分かっている。

ヒナタには十分分かっていた。
どれほどにヒナタの事を普段から守ってくれていて、大切にしてくれているかを知っているから。
だからこそほんとは言いたくなかった。
またさらにヒオウに心配をかけさせてしまう。
ヒオウはそんなのはかまわないから、といつも言うが、自分が嫌だった。

ほんとはヒオウといつだって対等でいたい。
心配をかけっぱなしだなんて情けない。
いつだって肩を並べていたいのに・・・
そんな事を考えている事すらヒオウにはばればれだとも知っていた。
だからこそ、ヒオウはいつもヒナタをからかう。
バカにするのではなく、そうやって冗談を言ってなんでもないようにしてくれている。
そしてまた、ヒオウの大人ぶりを実感してしまう。

昔は年上だし、と思っていたけども、いい加減この歳になってくるとあんまりかわらないような気がするからだろうか。
最近少しだけ、自分の情けなさが気になるようになってきているのかもしれない。

「で?あと僕に何か言う事は?」
「・・・ごめんなさい・・・もう二度としません、二度と黙って行動しない。勝手な事、しないよ。」
「はい、よく出来ました。」

そう言ってヒオウはにっこりとした。
くやしいながらもその笑顔にいまだに見惚れてしまう。
いつだって勝てない。

・・・だが、ん?待てよ?

改めて自分から内容をまとめつつヒオウに話した事により気がついた。
僕には人を感染させる力はない。
だからといって、あの不思議な感覚にさせられる力までないかどうかは分からない。
・・・何よりも・・・先ほどからヒオウの治りかかっている傷口のところからなんとも魅力的な香りがする。
もちろん、怪我をさせてしまった時のほうが濃厚だっただろうが、あの時はもう気が気ではなく、それどころじゃなかった。
その後はヒオウもちゃんと傷口を包帯でカバーしていたしあまり香りは気にならなかった。
・・・あれの時も。

だが今はなぜか気になってしかたがない。
それに驚いた事にめずらしく自分がその気になっている。
・・・もしかしたら・・・吸血行為をまだ欲してしまう今なら・・・ヒオウを負かせられるんじゃない?
血だってそんなには吸わない。
だってヴィンスだってあの時そんなに吸っていなかった。

珍しく黒い笑顔でニッコリとしたヒナタを見て、ヒオウはいぶかしむ。

「・・・ヒナタ・・・?」
「・・・ヒオウ・・・ねぇ・・・ちょっとだけ・・・いい・・・?」

賢明な事に、ルックは部屋には立ち寄らなかった。
後で2人が出てきたときにちらりと2人をみて、ふぅとため息をついてからレックナートのところに案内した。
彼女もルック同様、体が入れ替わったのも、紋章が持ち主の為を思い力を使ったのだろうとの意見だった。
少しでも負担を和らげようとしたのではないか、とのこと。
もちろん、だれでもそうなると言うわけではなく、多分ルックだからこそ発生したのではないか、とも言っていた。

ヒナタがレックナートと話をしている間にルックがヒオウに話しかけた。

「・・・まぁ、僕はもともと器だったからね・・・。・・・で、ヒナタは大丈夫そうなの?」
「え?あーうん、まぁ、ね・・・。しかしヒナタにあんな事をしでかした奴・・・ヒナタが許しても僕は絶対に許せないね。」
「ああ、ヒナタを吸血鬼もどきにした奴の事かい?まだ生きてるって事?」
「生きてるどころか今頃始祖様と一緒に旅でもしてるみたいだね。」
「??状況が読めないんだけど・・・。」
「別に読めなくたっていいよ。とりあえずぴんぴんしてるって事。まったく・・・友達?冗談じゃない。シエラはまだ仕方なかったにしても・・・」

ルックがけげんな顔をしているなか、ヒオウは背景をどす黒くしつつそうのたまっていた。