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夜を臨む

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(空が高い。)

シカマルは縁に寝転びながら、上空に広がる空を見た。突き抜けるような青空には雲ひとつなく、その中を黒い染みのような鳥が一羽、戯れるように旋回している。
本当は寝てしまいたかったが、火影から頼まれている巻物(シカマルがこっちに来る理由となった巻物だ)の解読の定期報告(と言っていいのかわからない)が明後日に迫っていたので、うつらうつらと眠っているわけにもいかない。ナルトの書庫を借り、文献と照らし合わせながら解読を進めてはいるが、ところどころ未完成というか、雑というか、明らかに普通でなく作られているために解読は困難を極めていた。いろいろな所にあるべき印がなく、かと思えば見たこともないような、おそらく自作の印で補われていたりして、ともすればアカデミーの生徒でも解けそうな二重暗号の下に、キーの印が刻んであったりする。
(これ作ったやつ、ものすごく頭がいいか、ものすごく運がいい馬鹿かのどっちかだな。)
印には法則があり、それを組み合わせることで術を発動させるのだが、それはとても綿密に計算されたものでなくてはならず、間違えれば術は発動しない。
だからこそ、解読にはそれなりのプロセスやら、それなりの解法などの大筋は決められていて、後は暗号化された印などをいかに解くかがポイントとなってくるのだが、これには小難しい暗号がほとんど見受けられない。あっても先ほど記したようにアカデミー生でも解けるような簡単な二重暗号や、教科書にも載っていた換字式暗号がほとんどだった。けれども本当に数個、解部でもめったに見かけないような上級の暗号が使われていたりもしていたが。それならば簡単に解読などできてしまいそうだが、困難を極めているのは印のほうだ。あるべき法則がそこにはなく、あっても中途半端に模倣したような印で、中には発動すらしなかった余分なものまであった。それ自体は解読を困難にさせるためによくつかわれることだったが、果してこれを作ったやつは本当にそこまで考えてやったのだろうか、全く無意味な所に書き損じたような跡まで付けて書かれた印などを発見した時には呆れてものが言えなかった。よくこれで発動できたと、ある意味の尊敬の念をシカマルは抱く。
オリジナルらしい印は解読にひどく時間がかった。踏むべき手順を踏まずに記されたものだから、どういうわけで発動し、どういう風に他の印と連動するかがさっぱりわからない。融合させたものともともと一つだったものを無理やりつなげるようにして一つの術式となっており、それがまるで小さい子供が作ったように拙かったりするので、余計に解読するのに時間がかかるのだ。

ふうと重たい息を吐いて空を見上げたシカマルは、明後日、足踏みを続けている解読の状況をどう伝えようか真剣に考えていた。なにせ、巻物が未知のものすぎる。できればもう少し資料がほしかったが、それを許してくれるかどうかシカマルには甚だ疑問だ。何せ部外者、シカマルの言葉を三代目がどこまで信じているかさっぱりわからない。
八方ふさがりってまさにこういうことだよなぁ、とシカマルは思う。重々しく溜息を吐いてみて、空を見上げながら、久々に雲になりてぇななんてことを心の底から思った。

寝転んだシカマルの視界の端に立った楓の木は少しずつ紅葉を始めている。少し前からパタリと聞こえなくなった蝉の音の代わりに、小さな秋虫たちの音も響き始める季節になった。そういや昼間でも大分涼しくなったなとシカマルは思いだす。真上に輝いていた太陽は少しだけずれてやや西の空に浮かんでいた。
家主のナルトは今いない。アカデミーに出勤中の彼は今日もまた派手に悪戯などを仕掛けてイルカ先生にでも叱られているんだろう。今から思い返してみても、今までのナルトすべてが演技だったというなら、面の皮の厚さは並々でない。けれども、どこまでが本当で、どこまでが嘘だったのかなんて、今のシカマルには知りようがないことなので、そのあたりはまだ保留としている。
それにしても、とシカマルは考えた。
(大分、打ち解けたと思ってもいいんだよな。)
もちろん、ここにはいない幼い家主のことだ。
初対面は最悪、家に住み始めてからもっと悪くなった。一方的に殺気を飛ばされたり、鋭い目つきでひたすら睨み続けられたり、テリトリーに侵入されたのがそんなにきにくわなかったのか知らないが、それはガキの癇癪と呼べるほどかわいらしいものではなかった。実際何があったかということは割愛するとして現状を言えば、その頃が少し懐かしくなるくらいには進歩したと言っていいものだとシカマルは勝手に思っている。何より朝食を共にできるようになったことが、まあたとえそれがお互い別々に作られたものであって、さらに一切無言だったとしても、何より大きな進歩だったんじゃないかとシカマルは思っていた。あの雨の日の一件以来、お帰りという度に、返事はせずとも振り返るようになったナルトにどんな心境の変化があったかはまだ分かっていないが。
幼いナルトはとても不器用で、そしてそれはある意味ではとても素直だと言えた。
けれどもシカマルは、そんなナルトが無表情でいるのを見るたびに、今までどんだけ頑張って笑ってたんだと考えて、いつも、少しだけ不快になった。

秋の風は存外に冷たく流れている。
シカマルに煙草を嗜好するような趣味はなかったが、吸いたくなる瞬間というのは今のような気分の時なんだろうと、亡き恩師を思い返しながらそんなことを考えた。

作品名:夜を臨む 作家名:poco