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looser / アジアンタムブルー

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constellation / ep.02 - dizzlover / Shinra and Celty



 この寝室に、映画で観るような甘い恋人同士のピロートークなんてものは聴こえない。
 それでも十分に幸福でいて、満たされていて、まあるい月には似合いの夜になった。

 梅雨を抜け出したかそうでないかくらいの過ごしやすい季節柄、ブランケット一枚をふたりで引っ掛けあって、うとうとしていたセルティの腕の中に埋もれていた新羅が、あ、と小さく声を上げた。え、とつられて身じろいだセルティの腕の隙間から、彼は抜け出すように身を起こす。
 「……ほら、あれ、見える?セルティ」
 寝たままの彼女にも見えるよう、ひらひら揺れていた薄いカーテンが引かれる。それまで必要のなかった枕元のPDAを引き寄せて、セルティは新羅の指差す方を見上げた。
 「あの星座、知ってるかい?」
 星座。
 星。
 そう言われて目を凝らすまでもなく見えた輝き。
 PDAを打とうとする前から、新羅は返答が聞こえたように続ける。
 「そう、オリオン」
 夜風にひやりと触られたセルティの肩にブランケットが掛かる。
 カタカタ、パッドを叩く音が響いた。
 【冬の星座だと思っていたが】
 「この時期はこれくらいに見えるみたいだね」
 天文学と謳う大それたものを知らなくても、特長的なかたちは夜空に見つけやすい。真冬のような視認ができるわけじゃないが、夜明けの近い空に光る。
 「昔さ、図書館に閉じ込められたことがあって、そのとき暇つぶしで読んだんだけど、あれって恋人の女神に殺されてしまった神の星座なんだって」
 新羅は人差し指でこつこつ、と自分の蟀谷(こめかみ)を小突く。
 「恋人に此処を矢で一発」
 【怖っ】
 「まあ、壮大な痴話げんかの顛末ってわけじゃなくて、それこそ昼ドラ顔負けの周囲を巻き込む愛憎劇の果ての悲劇なんだけど」
 【ま、待て新羅…、何だかあんまり詳しく聞きたくない雰囲気だぞ】
 言わずもがな、光り輝く星のイメージに不穏な影が漂っている。
 それでね、と絵本でも読むように新羅は続きをセルティに語らいかける。

 その星と、恋人たちを知っているストーリーテラー。