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手放せない恋のお題

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01. 例えば君がいなくなったら


 この辛気臭い年寄りは、俺がいなくなる不安を指折り数えて、大切なもののように胸に刻み込む。

 そうさせたのが自分だってことぐらい、もちろんわかってはいるけれど。
 時折、泣いているような顔で笑うのが耐えられなくて、キミの前から姿を消したくなる。
 いつまで。
 いつまで、その思いを、大切な宝物のように、しまっておくんだろうか。
 キミが何度も何度指を折って数えているのは、いつから今日までの時間?
 はじめて出会った日? キミと俺が共に過ごした日々? 俺がキミから離れた日?
 それとも、俺と出会う前の日からの、長い長い時間を。

 俺の知らない時間を、キミは何度も数え続ける。
 何度数えても同じ数字を、呪いのように呟き続けながら、
 キミは、いつだって泣きそうな顔で、俺の少し後ろを眩しそうに見つめる。
 キミが見ているのは、誰なんだろう。
 いまの俺の後ろには誰が見えるの?
 幼い頃の俺なのか。キミと離れた日の俺なのか。
 それとも、俺ではない、もっと遥か彼方の、キミ自信なのか。

 ねぇイギリス。
 もうやめにしてくれないか。
 その手も、その瞳も、そのすべてを俺の物にしたいと、何度も何度も思ったのに。
 本気で抱きしめたら壊してしまいそうで、いつだって手を伸ばすことを躊躇うのに。
 俺の隣に立つキミが、俺の斜め後ろを見て悲しそうにうつむくのが、本当に辛いよ。
 過去を背負って生きている俺たちだけど、
 いつになったら、過去の先にある俺まで、キミの光は届くんだろう。

 例えば君がいなくなったら。
 思い浮かべるだけで、叶ってしまうことが怖くて、考えを振り切る。

 ねぇイギリス。
 この手をとって。俺の目を見て。
 「俺」だけに、笑ってよ。

作品名:手放せない恋のお題 作家名:せらきよ