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抱える程の花束を、キミに

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「ハッピーバースディ、アメリカ」
「……ありがとう、イギリス」

 抱えるほどの花束を渡すと、アメリカは一瞬戸惑いながら、照れ笑うようにはにかんだ。
「なんだい、こんなすごい花束……珍しいじゃないか、キミが俺にまともなものくれるなんて」
「せっかくの誕生日くらい、ふざけたってつまんねぇだろ」
「どうせくれるなら、抱えるほどのアイスとか、新作のゲームがいいんだぞ……」
「うるっせぇ! いらないなら返せ!」
 文句ばかり言うならと手を伸ばすと、アメリカは花束を大きく掲げて俺の手を避けて、
「誰もいらないなんて言ってないよ!」
 慌てながら腕の中の花束を庇った。
「お前……実は、ちょっと嬉しいのか…?」
「嬉しくなんて言ってないだろう。それに、ちょっとじゃなくて、すごく嬉しいよ」
 拗ねたように唇を尖らせると、アメリカは抱えた花束を見つめて、珍しく幸せそうに口元を綻ばせた。
「花をもらって嬉しくない人なんて、この世にいないんだぞ」

 ……そういえば、小さい頃も、花を持っていってやったら喜んでたっけな。
 いつの間にかでかくなって、体も縦にも横にもでかくなって、
 昔の面影なんて、ほとんどないと思っていたのに。
 案外、そう変わってないもんなのかも、な。

「ありがとう、イギリス」

 アメリカにしては珍しく、本当に素直に、きっと心からの気持ちをこめて、ふわりと幸せそうに笑う。

「キミに誕生日を祝ってもらえるのが、一番嬉しいよ」
 抱えた花束が風に揺れる。
 あまりにも無邪気に笑うその顔は、俺の愛した無邪気な天使の頃のままだった。