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Over The Aurora

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4.Beautiful World


 時間は、士が川に叩き落とされた所まで遡る。
 クウガもブレイド相手に劣勢を強いられており、後退また後退で、キングラウザーの重そうな斬撃から身を躱し続けていた。
 士からどんどんと引き離されていく。近寄る事ができない。
 ブレイド相手に有効なダメージを与えられる打撃が、クウガにはなかった。
 彼が変身可能なフォームの中で、最もパワーのある紫のクウガの攻撃が軽くあしらわれたのだ。
 封印エネルギーを込めたキックをたたき込めれば勝機はあるかもしれない。ブレイドは間合いを遠めにとっており、決める機会を作り出せないわけではなかった。
 だが、クウガには躊躇があった。
 もし、それさえ通用しなければ、本当に打つ手を全て、失ってしまう。それが恐ろしかった。
 クウガは仕掛けられず、ブレイドは自分からは動かない。戦局は膠着状態に陥っていた。
 クウガは迷っていた。勿論、攻撃が通用しないブレイドへの警戒もある。だが、それだけではなかった。
 俺は、信じているのではなく、信じようとしているだけなのではないだろうか?
 沸き起こったその疑問を、クウガいやユウスケは、はっきりと違うと否定する事ができなかった。
 動きらしい動きといえば、武器を落としたクウガが赤のマイティフォームへと戻った事。それ以外は、ただ睨み合ったまま時間が流れていく。
 均衡を破ったのは、夏海の絶叫だった。
「止めて!」
 その声にクウガは、眼前のブレイドの存在など忘れて振り返ったが、ブレイドは動こうとしなかった。
 ディケイドが闇の中に吸い込まれて行く。転げ落ちて行く。
 駆け寄る事も、手を差し伸べる事も、叶わない、間に合わなかった。
「士……君、士君!!」
 周囲は急に明るくなって、キバは紅渡の姿に戻っていた。
 夏海の声だけが甲高く辺りに響くが、クウガにはその声もどこか遠く、現実味がないように思われた。
「……畜生、畜生……畜生!」
 振り向くとクウガは、腰を落として構えを取り、その右足に力を溜め始めた。
「そんな事に、何の意味がある?」
 ブレイドの声は変わらず低く単調で、感情が篭っていなかった。何も起こっていないかのような変わらなさは、ユウスケを苛立たせた。
「うるさい……うるさい、うるさい! 士が何をしたっていうんだ! あいつは俺と、皆を守る為に戦ってたのに!」
「守りたかったなら、何故もっと早く、そうしなかった?」
「黙れ、お前の御託なんか、聞きたくない!」
 クウガが右足を後ろに摺り、さらに深く構えを取ると、それに応えるように、ブレイドの体の各所に埋め込まれたレリーフが光を帯びた。
 左の上腕、右の下腕、右腿、左脛、右脛。
 光は力の奔流となり、ブレイドが両手に持ち右上段に構えたキングラウザーへと吸い込まれていった。
『Straight-Flash』
 機械音声が響き、キングラウザーが力を得て光り輝く。
「おりゃあああっ!」
 僅かな助走の後、クウガは雄叫びを上げて宙に舞い上がり、ブレイドへと向けて、充分に力の溜まった右足を繰り出した。
 その動きに合わせるように、ブレイドは剣を振るった。
 二つの力は交わって、反発しあい、閃光が生まれて、離れた場所にいた夏海の長い髪が巻き上げられ、翻った。
 光の眩さに夏海は目を閉じ、風が止むのを感じて、恐る恐る顔を庇った手をどけ、目を開いた。
「……ユウスケ…………!」
 クウガは、夏海のしゃがみこんだ場所のやや手前に背中から叩きつけられた。したたかに背中を打った後に変身が自動的に解除された。
「ユウスケ!」
 夏海が駆け寄ると、ユウスケは低く呻き声を上げながら、のろのろと体を起こそうとした。
 肩を支えて起こしてやると、ユウスケは夏海は見ず、前方を睨みつけた。
「あいつは……」
 土煙の向こうに、無残に抉り取られたアスファルトが見えた。その更に向こうに、ブレイドは倒れ込んでいた。
 だが、ややあって、その金の鎧は、何という事もなかったように、平然と体を起こした。
「何だよ……あいつ、何て奴だ……」
 大きく肩で息をしながら、ユウスケは目を見開いて、呆然とした顔で、動こうとしないブレイドを見つめていた。
「ごめんな夏海ちゃん。俺、勝てないわ」
 口の端を手の甲で拭って、ユウスケは、あまり悔しくもなさそうに呟いた。
 平坦なその声があまりにもユウスケらしくなくて、夏海は無性に悲しくなった。
 ブレイドは腰のバックルに右手を当てると、レバーを引いた。青いオリハルコンエレメントが彼の体を通過して、消える頃には、そこには何の喪に服す為なのか黒に身を包んだ剣崎一真が立っていた。
「何なんだよ、あんた……俺の事を、馬鹿にしたいのかよ!」
 ユウスケはよろめきながら立ち上がって、ふらつきながら剣崎に向かって歩き、そう叫んだ。
「馬鹿に……? 違う。俺は、君を助けたい」
「助けるだって!? どうやって! 俺は、あんたの助けなんかいらない!」
 怒りを顕わにしてユウスケは叫んだが、すぐに、何かに思い当たって、泣き出しそうな顔をした。
「助けなくちゃいけないのは、俺じゃ、ないだろ……」
 川から吹き込む緩やかな風にも飲み込まれてしまいそうなほど、ユウスケの言葉は弱々しかった。
 夏海は、ますますやりきれなくなり、締め付けられるような胸の苦しさに息を吐いた。
 こんな戦いに、何の意味があるだろう。
 門矢士が消えれば、全ての世界は平穏を取り戻すのかもしれない。
 街が喰われ、砕かれていく、あんな破壊が、何処かでひっきりなしに起こっているのかもしれない。
 それでも夏海もユウスケも、士を犠牲にして得る平和など、納得出来ない。
 夏海は剣崎一真を見た。彼の表情は、何も映し出してはいなかった。ユウスケをただ見つめているだけだった。
「……昔の話だ。俺には、親友がいた」
 唐突な言葉に、ユウスケと夏海は剣崎一真を見つめた。剣崎はそんな視線など意に介さない様子で、言葉を続けた。
「俺は彼を助けたかった。そうだ、丁度、今の君のように。何か方法があるはずだ、そう考えて、結論を出すのを引き伸ばしていた」
 ユウスケも夏海も、彼が何を言わんとしているのかが分からず、黙って彼の言葉を聞いていた。
 剣崎は尚も言葉を続けた。
「そうして、何か見つかったと思うか。全て手遅れだと気付いた時には、何もかも取り返しがつかなかった。大切なものも、どうでもいいようなものも、何もかも、なくなった」
「……何も、かも?」
「そうだ、何もかもだ。俺は一人で、何もない世界に取り残された」
 何もない、というのが、何かの喩えなのかは判然としなかったが、平坦な調子で語る剣崎の感情のない声は、嘘を語っているようにはどうしても聞こえなかった。
「君が友達を助けたい気持ちは、誰よりも分かるつもりだ。俺だって、絶対に助けられると信じていた」
「あんたなんかに何が分かる!」
「分からないのかもしれないな。だが君は、門矢士をどこまで信じる事ができる。世界が本当に崩壊を始めてから気付いたって、もう遅いんだぞ。最後まで信じきる事が出来るのか? そして、信じていた気持ちは間違っていなくても、滅びの時が訪れたなら、君は一体どうするんだ」
作品名:Over The Aurora 作家名:パピコ