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Over The Aurora

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7.君は海を見たか


 二人の士は、互いを見つめ合っていた。
 士は、自分に瓜二つの顔を、気味悪そうに眺めた。
 彼は自分の容姿をそれなりに気に入っていたし、人後に落ちるものではないという自負もあったが、それにしてもその顔が、鏡に映っているわけではなく実体として目の前にあると、言い知れぬ気味悪さと不快感を覚える。
「お前が俺ってのは、どういう事だ」
「俺はお前じゃない」
「じゃあ誰だってんだ」
「門矢士だ、さっきも言った」
「門矢士は俺だ」
 二人の士は、容姿、雰囲気、口調から性格まで、瓜二つに夏海とユウスケには思われた。
「おい、紅渡。さっき、剣崎は、あんたをやった奴は役者が揃うのを待ってるって言ったな。これはその事か」
 紅渡はユウスケの質問に、僅かに頷いた。
 失血が酷いのだろうか、彼の意識は今にも途切れてしまいそうに見えた。
「門矢士とは……本当はもういない筈の男……。だから……こそ、何回でも繰り返される……」
「何だそりゃ……もっと分かりやすく話せないのか」
 だが紅渡は口を閉ざして目を瞑り、ユウスケの質問には答えなかった。
 汗が酷い。これ以上喋らせるのは無理なようだった。
「この人……すごく冷たいです、どうしようユウスケ」
 夏海がおろおろしてまくし立てたが、もとよりユウスケに答える言葉などない。
 ――これを士が、やったというのだろうか?
 ユウスケは眼前で睨み合う二人の士を再び見た。
 士には出来るのかもしれない。だが士がこんな事をするとは、ユウスケにはどうしても信じられなかった。
 それに、もういない筈、とはどういう事だ。士は目の前に、二人もいる。
「お前、一体ここに何しに来たんだ」
「俺は……夏海とユウスケを探して来た。そういうお前こそこんな所に何の用だ」
「俺か? 俺は、この茶番劇を終わらせに来た」
「何……?」
 告げて士はディケイドライバーを取り出し腰に当てた。ベルトが生成され、ドライバーが腰部に固定される。
 そして士がいつもするように、一枚のカードを目の高さに掲げ、示した。そのカードにはディケイドが描かれていた。
 但し、色違いの。
「変身」
 士は告げると、カードをドライバーにセットし、ドライバーをクローズした。
 次元を越えてアーマーが彼の体を包み、飛来したライドプレートが頭部にセットされて、モノクロに沈んでいた彼の鎧が鮮やかに彩られる。
 その色は、黒とシルバー。そして目に焼き付いて離れないような、鮮烈なイエローがラインを走らせる。大きな複眼は鮮やかなコバルトブルー。
「何なんだ……お前?」
 士は、目の前のディケイドを目を見開いて見つめ、呻くように言葉を吐き出した。
「何度も言わせるな。俺は門矢士、そしてディケイドだ」
 言い切って、ディケイドは駆け出した。
「!!」
 士に避ける暇のあろう筈がない。ディケイドのタックルを食らい、士はまるで、丸められた紙屑のように吹っ飛んだ。
「士!」
 黄色いディケイドは、士を一瞥もせず、悠々と歩きだした。
 一歩一歩を踏みしめて、ユウスケと夏海が、どうすべきかなど分からず硬直している場所へと歩を進める。
「待ちやがれ……このっ!」
 立ち上がって士は、駆け出しながら己のドライバーとカードを取り出し、ドライバーを腰に当てた。
「変身!」
 彼もまた、先ほど眼前で行われたプロセスを繰り返し、夏海とユウスケにとっては馴染み深いマゼンタのディケイドへとその姿を変えた。
 マゼンタのディケイドは、ライドブッカーをガンモードに構えて、先を行く黄色い奴に何発かの射撃を浴びせた。
 彼の向こうには夏海と変身していないユウスケがいるが、狙いを外すような士ではない。
 放たれたエネルギー弾は黄色い奴に命中し、黄色い奴は派手に吹っ飛ばされた。
 だが、吹っ飛ばされた黄色い奴は、地面に叩きつけられる前に空中で回転して、何事もなかったように着地してみせた。
「これは、お前の為でもあるんだから邪魔をするな」
「……俺の為だと?」
「ライダー共を全部叩き潰せばそれで終わる。お前も、破壊者だの何だのと命を狙われずに済むようになるだろう。まずは手始めに、そこで死にかけてる奴からだ」
「待て、……っつってるんだよっ!!」
 士は、自分の射撃のせいで開いた距離を埋めるべく駆け出しながら、一枚のカードを取り出してドライバーにセットした。
『Kamen Ride Kabuto』
 テンションの高い電子音声が鳴り、マゼンタのディケイドの姿は瞬時に仮面ライダーカブトへと切り替わる。士は続けて、もう一枚のカードをドライバーにセットした。
『Attack Ride ClockUp』
 その瞬間、周囲の時の流れが急にゆったりとする。
 今士は、普段の時間とは切り離された時間流の中にいる。速いとか遅いとかではない、違う流れにいるのだから、クロックアップを使えない者にクロックアップ状態の者を捕捉する事は理論上は出来ない。
 このまま、奴を追い抜いて、夏海と紅渡を担いでこの場を脱出すればいい。ユウスケは自分で何とかするだろう。
 そう考えた士は、次の瞬間、驚きに目を見開いた。
『Attack Ride ClockUp』
 それまでぴくりとも動かなかった目の前の黄色い奴が動き出し、走り込んだ士に蹴りを浴びせた。
 急に止まる事も出来ない士は蹴りをカウンターで喰らった格好となり、大きく後ろに吹き飛ばされる。
「なん……だと?」
 地面に叩きつけられると同時に、カブトへのカメンライドも強制解除された。士は上半身を起こして、黄色い奴を見た。
「俺はディケイドなんだ、使えて当然だろう。何を驚いているのかが分からん」
 ぴしりと、士がするように軽く両手を叩いてから士を指さして言い放って、黄色い奴は背を向けて、また夏海達の方へと歩き出した。
 使えて、当然。それはそうかもしれないが、士のディケイドとは決定的な違いがあった。
 黄色い奴は、カメンライドをしないまま各ライダー固有のアタックライドを使用した。
 今まで士が各ライダーにカメンライドしてから各ライダーのアタックライドを使用していたのは、そうしなければ使えないのを情報として知っていたからだ。
 そのひと手間が必要のない黄色い奴は、さらに改良強化されたディケイドなのではないだろうか?
 だが誰が、何の為にそんなものを。そしてそれが大ショッカーの仕業なのだとしても、士がもう一人いる事や、ディケイドが二つもある必要性の説明にはならない。
 そして今は、そんな分からない事を延々と考え続ける時間もない。
「待て、止まれって言ってるんだ!」
「そう言われて止まる奴がいるか? 馬鹿かお前は」
「ぜってー止める!」
 叫んで士は、更に一枚のカードをドライバーにセットした。
『Final Attack Ride De-De-De-Decade』
 士が飛び上がると、宙空にホログラムが展開される。高く舞った士は、そのホログラムを通過して、黄色い奴を撃ち抜くべく右足に力を込めた。
 士自身もこの技を自分が喰らえば只では済まないだろうと常日頃思っている。それならば奴にも効果がある筈だった。
 だが、いつもは心強い、テンションの高い電子音声が今日は耳障りでならない。
作品名:Over The Aurora 作家名:パピコ