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Over The Aurora

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2.物語のない世界


「わかった、他に女がいるのね!」
「うおっ、とっ」
 狭い部屋の中をキバーラに追いかけられ走り回っていた小野寺ユウスケは、ディエンドの世界が描かれた背景ロールに勢い余って激突した。
 足をもつらせ転ぶ事こそなかったものの、衝撃で新たな背景ロールが降りてくる。
 新しい背景ロールが降りてくる事によって、光写真館は未知の次元へと移動し、ロールに描かれた絵が新しい世界を示す。ここ最近の、光写真館の恒例行事だった。
 いつも新しい世界が描かれた絵に秘められた謎やドラマに一同は喧々囂々となるのだが、今回はあまりに勝手が違っていた。
「おじいちゃん……」
「うん、何も、描いてないねえ」
「どういう事だ、爺さん」
 三者の戸惑った様子に、背景ロールを下ろした当の本人も描かれている筈の絵を見ようと振り向いたが、そこには光栄次郎の言葉通り、何も描かれていなかった。ただのまっさらな、生成り色をした背景ロールが吊り下がっていた。
「もしかして、旅が、終わった……って、事?」
 意味ありげに呟いたユウスケを、他の三人は一度に見やった。恐らく思いつきで口にしただけなのだろう、ユウスケは見つめられて困ったように頭をかいた。
「いやだってさ、ここ、何もないって事になるじゃん。絵がないんだから。でも外はちゃんと建物建ってるみたいだし。訪れるべきって決められた世界がないのに何処かの世界にいるんなら、士の旅が終わったって事なんじゃないの?」
「分からんぞ、俺達は何らかの陰謀で集団催眠にかけられているかもしれん」
「……本当ですか?」
 士があまりに真顔で口にするので、光夏海は思わず心配になり、真剣な眼差しで士の顔を覗き込んだ。
「そんな訳があるか。まあ、俺の旅が終わったっていうのと同じくらいの確率で有り得るかもな。大体集団催眠って誰がかけるんだ。爺さんか、それともそこの怪しい銀コウモリか」
「あっ、キバーラなら超音波出せそうだから、集団催眠とかいけるかもね」
「そうそう私の自慢の超音波で…………って、そんな訳ないでしょ!」
「私は真面目に話してるんですから、皆茶化さないでください!」
「お前は学級委員長か。ミカンでも愛媛ミカンクラスとか和歌山ミカンクラスとか、静岡ミカンクラスとか熊本ミカンクラスとかあるのか」
 尚も茶化そうとする士を睨みつけ、夏海は拳を作って突き出した親指を士の首筋に当てた。
「光家秘伝、笑いのツボ!」
「だっはははははっはははははは、あっははは、はっ、てめっ、はははははははは、なつみ、はははははっ」
 笑い続ける士が耐えられなくなって膝を折り、勝ち誇る夏海を見てユウスケと栄次郎も釣られたように笑い出す。
 本当にいつも通りの光景だった。
 ――実は、ディケイドの旅が終わるっていうのも、満更でたらめでもないんだけどね。
 栄次郎の肩に収まって、まだ回復しない士を見下ろしながら、キバーラは心の中でだけ呟いた。
作品名:Over The Aurora 作家名:パピコ