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本能

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拳を交わすたびに高揚する気持ちがあった。それでも初めのうちは、それが夜兎である自分の本能だと思っていたのだ。命の危険を伴うほど強い相手であればあるほどに、闘うことに歓びを感じる忌まわしい種族のそれだと。
そうだとすると全てに巧く説明がつくからだ。
信じて疑わなかったことを真っ向から覆されたのは柳生の道場に殴り込んだときである。 久々に新しい敵と戦い、そして相手は予想以上に強敵だった。
あの気持ちの昂ぶりが夜兎のそれであることは間違いなく、万事屋に来るまでと比較すると、その高揚感が押さえられていることが顕著なのは神楽にとって何より喜ばしいことだった。
しかしそこでひとつの疑問が浮上する。それならば奴と戦っている時のあの気持ちは何なのか?
言われてみると、確かに戦闘の際のはやる気持ちとは別種のようにも思う。 高揚の中に僅か交じる心地よさ。しかしそれは銀時や新八と居るときのものとは違い、微かな切なさも伴う。
まだ解すことのできない思いを携えながら定春と散歩に出た神楽は無意識に耳をそばだて、独特の訛りのある声を探してしまうのだ。
作品名:本能 作家名:あみだ