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ナターリヤさんが家出してきました。

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第3話



■前回までのあらすじ■
ナターリヤさんが「押してダメなら引いてみる作戦」で本田家に家出してきました。エリザベータさんは私がナターリヤさんのことを好きだとか言うし・・・。とりあえず夕飯の準備です!


彼女の紫の瞳はいつもある人物を映していた。
自分がそれを知っているのは彼女のことをいつも見ていたからだろう。
「世界会議のときいっつもナタちゃんのほう見てるじゃないですか。好きなんでしょ?ナタちゃんのこと。」
エリザベータの言葉には反論できなかった。自分が彼女を目で追っていたのは事実なのだから。初めて彼女と会った時、美しい髪と瞳に目を奪われた。何年も生きているが、あんな美少女に会えることは滅多にない。人形のような容姿なのに、いきなり突拍子もないことをし始める。そんな彼女のことを、自分でも気がつかないうちに目で追っていたのかもしれない。だからといって、恋をするのとは違う。彼女には結婚をせまるほど愛する兄がいるのだし、自分は彼女とは不釣り合いだ。
一つ大きく深呼吸した。自分の気持ちを確かめるためにも、彼女と暮らしてみるのは悪くない。本当に、彼女のことをなんとも思っていないのなら。


「本田、腹が減ったぞ。」
ぽちくんとひたすら遊んで、疲れて帰ってきたナターリヤは台所に立っている本田に向かって言った。
「わかってますよ。今作ってますからちょっと待っててください。早く食べたいならお手伝いしてくれないと駄目ですよ?」
「・・・・・・・何をすればいいんだ?」
嫌そうにナターリヤは答えた。手伝うのは嫌だが早くご飯が食べられないのはもっと嫌のようだ。
「そうですね・・・。お料理の経験は?」
「全くないな。だがナイフの使い方は心得ているつもりだ。」
ナターリヤは太ももに隠してあるナイフに服の上から触れる。
「ぶっそうなもの持ってちゃ駄目ですよ。あなたの家ならともかく、私の家では銃刀法違反で捕まってしまいます。犯罪者になりたくないんだったらどこかにしまってくださいね。」
「・・・・ちっ・・・。」
舌打ちしたナターリヤに、本田はにこりと笑う。
「なにか言いましたか?・・・とりあえず料理は私が作りますからナターリヤさんは机を拭いたりお皿や箸を並べてください。お箸を使ったことはありますか?」
「ない。」
きっぱりと即答するナターリヤに本田ははあと溜息をついた。
「お箸の使い方を教えてから夕ご飯になりそうですね・・・。この家で住む以上、この家のきまりには従ってもらいますよ。」
「う・・・お手柔らかに頼む。」



食事の支度も終わり、机に料理が並んだにも関わらず、ナターリヤが料理に箸をつけることは許されなかった。
「お箸はきちんと持てましたか?」
「ああ。これでいいんだろう?」
自身満々で答えるナターリヤの右手はなんとなくぎこちなかった。慣れないものを持ち、ぷるぷると腕が震えているのだ。
「お箸の間に中指をはさみ、上の箸を親指・人差し指・中指で動かして、下の箸は動かしてはいけません。料理をお箸で刺したり、お茶碗の上にお箸を置いてはいけませんよ。お箸は箸置きに置きましょう。」
延々と続く本田のお箸講座を前に、ナターリヤは色々限界だった。お腹も、腕も。
「本田・・・そろそろ食事にしないと、料理が冷めてしまうぞ・・・。」
「!そうですね、私としたことが失念していました。すみません。それではいただきましょうか。」
両手を合わせる本田を真似て、ナターリヤも手を合わせてみる。
「これは・・・何に祈っているんだ?」
「いいえ。私たちは命をいただいています。いただく命と、農家のみなさんのがんばりに感謝して、『いただきます』と合掌するのが私たちの習慣なんです。あとは、料理を作ってくれた人に対しての感謝とか、いろいろですね。」
「作ってくれた人か・・・本田、『いただきます』」
「どうぞ、召し上がれ。」
箸の使い方に慣れないナターリヤは箸に苦戦しながらも食事をしていた。
「お口には合いましたか?」
慣れない手つきで箸を進めながら、ナターリヤは言葉を零した。
「ああ。うまい。本田は料理がうまいんだな。」
「・・・ありがとうございます。」
おいしい、と言って食べてくれる人がいることは、とても幸せなことだった。本田は随分前から、料理を作る喜びを忘れていたのかもしれない。
「食べ終わったらお風呂をわかしてきますね。」
「風呂には来た時に入ったぞ。」
「ぽちくんと遊びまわって汗をかいたでしょう?きちんとお風呂につかって疲れをとらなきゃだめですよ。」
「わかった・・・。」
人差し指をさして注意する本田に、ナターリヤはこくりと頷いた。
「じゃあ食べ終わった食器は流し台に持っていってください。」
「・・・・お前はつくづく主夫だな。」
「むっ!これくらいできて普通ですよ。」
頬を膨らませた本田に、ナターリヤは口元を緩ませた。本田が、初めて見たナターリヤの笑顔だった。
「褒めてるんだ。・・・お前の家を選んでよかったと思う。」
「・・・・お風呂、わかしてきますね。」
本田は急ぎ足で浴場に向かった。ナターリヤの言葉を心の中で何度も反芻しながら。