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【銀魂】黒き猫の赤き血流したるが如く、【土沖】

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雨の中傘も差さずに突っ立っている馬鹿野郎の頭を一発小突いてやろうと近寄ると、そこには真っ黒な何かがあった。一瞬何があるのか理解できなくて、もっと近くで見ようと覗き込んだとき、一言も口をきかなかった沖田が唐突に云った。

「猫の死体ですぜ」

突然耳元で声を出されたので、耳に掛かる吐息がくすぐったくて、それを我慢しようと顔を歪めていると、沖田はおもむろに自分の胸元のスカーフを引き抜いて猫の死体を手際よく包んだ。

まだほんの仔猫であった。あたりに尋常では無い量の血が流れている。最初沖田が切ったのかと思ったが、アイツは人間以外を殺さない。車に轢かれでもしたのだろうと無感動に沖田の旋毛を眺めていたら本日二度目の奴の言葉。


「コイツはアンタに似てますねェ」


何処が、思わず突っ込んだ。条件反射と云う奴だ。そして次の瞬間にはそうした考え無しの自分の言動を悔いるのだった。けれど黒い毛並み以外およそ俺を連想させる要素は何も無かった。


「アンタもコイツのように血を流してしにますぜ、きっと」



予言ではない。確定。確実に未来に訪れる俺の最期。俺は否定をしなかった。事実だと思ったから。武士だから、戦場で死ねるのなら全くの本望だ。
俺がぼんやりとそう考えていると沖田は無言で立ち上がり(死体を抱いたまま)、すたすたと屯所の方へ歩いていった。俺は頭と体がバラバラになったようで、アイツの後を追いかける事が出来なかった。








 あくる日の朝雨戸を開けて庭を見ると、そこには土饅頭があった。全く朝から縁起の悪い。いやそう云う問題ではなくて何故俺の部屋の前に土饅頭、起きぬけの頭で考えていると丁度そこに手に花を持った坊ちゃんがいらっしゃった。


「おはよーごぜーます」

「…ああ」


手には黄色い菊の花。そこらへんで取ってきたのだろう、不揃いな茎を視界の端に追い遣りながら思う。


「昨日の猫、ここに埋めてやりましたぜ」
感謝して下せェ、沖田はいつもの無表情で押し付けがましく云った。

「何でここに?」
なるべく穏やかな口調で云う。朝からわめき散らすのは勘弁だ。

「だってアンタァ死んでしまうから、寂しくないように」

優しさなのか?新手の嫌がらせなのか?もう全くもってこの男の考える事は理解不能であった。只、死んだからってここには埋めてもらわねえ、ちゃんとした墓があるから、そう云うと沖田はこう返した。


「大丈夫でさァ。俺がここに埋めてやりますから」