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みかど☆ぱらだいす@11/27UP

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恋の蕾



かっこいい人だと思った。
そして何より優しい人だと、そう思った。
軽々と自販機を持ち上げる力を持つくせに、頭を撫ぜるときはいっそ臆病なくらい優しすぎて。
怒っていることがほとんどだけど、ふとした時に見せてくれる笑い顔は結構幼くて。
時々怖い言葉を吐くけれど、普段は気をつかって言葉を選んでくれて。
手も、笑う顔も、声も、全部全部。
ああ、好きだなぁって、思った。
僕はこのひとが、とても好きなんだって。



「そう、思ったんだ」
帝人は長い髪を風に遊ばせたまま、広がる街並みを見つめていた。
放課後の屋上は誰も居らず、佇む彼女の傍らでミカドだけがその声を拾い集める。
(どうしよう)まるで他人事のように呟いた片割れに、ミカドは(どうしようか)と同じように返した。
帝人とミカドは心を通じ合わせることができるけれど、結局別々の心だからミカドには彼女の心をどうすることもできない。
当たり前のことであるそれがとても歯痒くて、ミカドはそっと瞼を伏せる。
帝人は相変わらずフェンスの向こう側も見つめたままだ。
その街に居るであろう彼を、捜すかのように。
(悔しい)
ミカドは後ろ手でフェンスを強く掴んだ。
(かなしい)
片割れはひとり大人になってしまう。
ミカドを置いて、ひとりで。
それは予感であり確信だった。
(帝人)
心の声で片割れを呼ぶ。
けれど帝人は振り向かない。
今の帝人の心はもう彼だけに向いているから。
ミカドの声はもう、届かない。
(寂しい、帝人、さみしいよ)
帝人は前を、ミカドは後ろを。
二人別々の方向を向き、別々の心で、違う想いを抱く。
ふたりはずっと一緒で、同じだったのに。
それでもいつかはくると知っていた。
都会に出て、たくさんの人と知り合いになって。
帝人は平和島静雄と出会った。
出会わなければなんて想えるほどミ、カドは薄情じゃなかった。
そう思う以上に、帝人のことが好きだからだ。
悔しいけれど。哀しいけど。寂しくてしょうがないけど。
ミカドは片割れが大事で大切なのだ。




「―――帝人」
「うん」
「大丈夫だよ」
「・・・・うん」
「大切にしようね」
「うん」
「大事にして、たくさん暖めて、それでも躓いてどうしようもなくなったら」
「うん」
「泣いて泣いて、そして伝えようか」
「・・・・・・うん」





怖がらないで。
大丈夫だよ。
だって、あのひとも帝人のことが好きだもの。
悔しいから教えてやらないけど。
帝人をとられるのはかなしいけど。
置いてかれるのもとてもさみしいけれど。




帝人は前を向いたまま、そしてミカドも後ろを向いたままだ。
二人の視線は交わらない。
でも帝人がどんな顔をしているか、ミカドにはわかっていた。
だって帝人の右手と、ミカドの左手が硬く繋がっているから。




「――――叶うと、いいね」
心から、そう告げた。







そして蕾が花開く。
作品名:みかど☆ぱらだいす@11/27UP 作家名:いの