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すずき さや
すずき さや
novelistID. 2901
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harvest festival?

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【harvest festival?】
10月31日に行われたオンリーイベント「アップセットマニア」にて無料配布をした同タイトルのタイトルのコピー本の加筆訂正したものです。
(9,184文字)

 
 
 今年の夏はやたらとイベントに駆りだされたような気がする。
 選手たちは、今年の夏は、いつもより余計に働かされたような気持ちで秋を迎えた。
 現実に広報の永田有里はチームのイメージアップのために努力を惜しまない。その為、選手をこき使うこともしばしばだ。
 地元が活気つけばチームも活気づき、観客動員につながる。ETUを応援する人間を増えれば、ETUが強くなる。有里の頭の中はそんな考えでいっぱいだ。
 そして、とにかくプラス思考で生きている。
 失敗もたくさんあるが、小さな成功をコツコツと積み上げて今の彼女がある。
 スポンサーを募る努力もサポーターを増やす努力も彼女は人一倍熱心になってやっている。
 そして、選手たちのことも考えてくれているはずだ。やたらとただ働きさせられている気がするが。
 いつか、彼女の努力が実る日か来るだろう。
 監督が代わりチームの印象が変わった。シーズン前の下馬評を覆す成績を今現在残している。
 それは監督の力だけではなく選手個々の努力もある。
 そして、実際にサポーターが少しずつ増えている。これはチームの調子が良いところが大きい。
 ピッチと観客席の近さが売りの隅田川スタジアムでプレーをすると選手はそれを肌で感じる。
 誰が自分を応援しているか。どんな声をかけてくれるのか分かる。
 もちろん、ヤジも聞こえる。それは時々傷つく。
 
 さて。話は戻って夏である。
 今年は、何故か例年よりもポスター撮影が多かった。ユニフォームを見て写真に収まることもあったが、何故か浴衣を着て写真に収まる機会が多かったのが不思議だ。
 これは有里の努力の賜物でもある。地域振興のイベントと夏祭りが妙な具合で融合し、選手が浴衣を着る機会が増えた。
 実際に選手が着用したいくつかの浴衣は売れたと言う話だ。なにかに貢献できれば嬉しい。自分が着たものが売れれば嬉しい。人気があるのだな、とほくそ笑んでしまうこともある。
 しかし、浴衣を着ることが自分たちの仕事ではない。
 選手はそう言いたいが有里には逆らえない。言い返せないまま夏は終わった。
 浴衣から解放されたが、有里の熱意はますます上昇気流に乗っている。
 それが選手たちにもひしひしと伝わるので「今度は何をさせられるか」と戦々恐々の日々である。
 
 練習前のロッカールームでは季節が変わったと言う話から今年の夏の話題になっていた。
「さすがにもう浴衣はないよな」
 肩肘が張る、とため息交じりに呟くと別の方向から声が上がる。
「秋に浴衣はナンセンスだ」
「秋祭りに浴衣はないな。絶対にない」
「もう、浴衣にはこりごりだ」
 浴衣は選手たちにとってトラウマになりつつある。
 着付けを手伝いに来たおばちゃん達が恐ろしかった。とにかくおっかないおばちゃん達で選手たち叱られ怒鳴られ、着方がなっていないと注意をされ、ほとんど全員がすくみ上ってしまった。
 容赦ない駄目出しにへこまされ、着ると暑く疲れるだけと良いところがない。少しだけ女の子から黄色い声をかけてもらえるだけだ。
 メリットは少なくデメリットばかりが目立つ。
 そんな訳で夏以降、選手たちは浴衣という言葉を聞くと顔がこわばるようになってしまった。
 そして、浴衣以外の着物は着たくない。そんな気持ちになりかけている。
 そんなタイミングで、秋祭りです。浴衣を着てください、と有里からにっこりと笑顔で言われてもおそらくほとんどの人間が首を横に振るだろう。
「秋か。収穫祭とかならあるかな」
「お米食べ放題とかなら嬉しい」
「収穫祭って言って案山子の恰好をさせられるぞ」
 選手たち口から秋と言えば食欲の秋、とばかりに暢気な話が出る。秋の味覚は何を食べたいか、と言う長閑な会話で盛り上がった。
「いつだったかカレーパーティやったよね」
 その話題が上がると「楽しかった」と言う意見もあれば「それよりも練習をするべきだ」と批判の声も上がる。
 しかし、監督である達海が唐突に思いついたものだったことを知っている。最終的には「達海には達海なりの考えがあるだろう」と言う結論を出した。
 シーズン前のキャンプ、夏のキャンプも全て彼の掌で転がされ角が擦り減ってしまった選手たちだが、次に何を起こすのか。達海は有里以上に予断の許さない相手である。
 有里の思いつきも、達海の思いつきも正直怖い。
 選手たちは思わず身震いをした。
 ロッカールームにいる選手たちはお願いだから余計なことをさせないで欲しいと言う気持ちで一つになりつつあった。
 
一方、選手達にトラウマを植え付けた有里は、今日も元気に忙しくチームのことを考えている。
「うーん。次は何をしようかな」
 事務室の有里は腕を組んで首をひねる。
 今年の夏はスポンサーのポスター撮りにお祭りの地域振興。そして、選手をこき使った浴衣のモデルとイベント盛りだくさんだった。
 選手たちには無理なお願いをした気がするが、地元の人たちの笑顔を見られて有里は幸せだった。
 一部の浴衣の売れ行きが良かったことも満足だ。
 そして、季節は変わり秋である。まだ、暑い日が続くが涼しい風が吹き、どこからともなく虫の音が聞こえ始める。
 有里は大きく背伸び伸びしながら窓の外を見ると日が短くなったことに気付いた。ついこの間まで明るかったはずだが、すっかり朱色の染まる夕暮れ時の空に変わっていた。
「どうしましょうね、後藤さん」
 話を振られた後藤は苦笑を浮かべながら「どうしようね」とオウム返しに答えた。
「もう。たまには後藤さんからアイディアを出してくださいよ」
 有里は後藤の言葉に頬を膨らませて見せた。
「スマン、有里ちゃん。でも、俺はこういうことのセンスがないんだ」
「秋か、あきねぇ」
 後藤は頭をかきながら有里から逃げようと廊下を出ようとする。すると、ドアが大きな音を立てて開いた。
「おー。まだ人がいる」
 隙間から達海が顔を覗かせた。
「後藤、仕事中?」
「そうだよ」
「見て分かるでしょう。達海さん」
 有里が肩をすくめて見せる。
「今度は何に悩んでいるんだ」
「達海さんこそ、次の試合の研究は?」
 眉根にしわを寄せた有里は、気楽そうな達海を見てため息をついた。
「俺?俺は腹減ったから気分転換したくてここに来たんだけどな」
 そう言って後藤に視線を向ける。
「何かおごってよ、後藤」
「俺かよ!」
 にやりと笑った達海を見て後藤はため息をつく。
 イライラする有里を置いて達海と二人きりで外食へ行くのも気が引ける。ならば、有里も誘って外へ行くか、と後藤は思い財布の中身の心配を始めた。
 
 
 
 気の進まない有里とお腹を空かせた欠食児童?の達海を連れて後藤は近くのレストランへ行った。
「私、おなか減っていません」
「でも、気分転換も大事だぜ」
 テーブルについても気の進まない様子の有里に珍しく達海は優しげな声で言葉をかけた。
「腹いっぱいになればいいアイディアも生まれるかもしれないぜ」
作品名:harvest festival? 作家名:すずき さや