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左手の真実【試し読み】

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サンプル3※R18


身じろぐ度にまだ繋がった部分がびくりとうごめき、射精の余韻に浸っていた覇鬼の男を刺激する。
「…ちょ、鳴介…あまり刺激するな…また、したくなる…」
やはり最初に『一度だけ』とか言うのではなかったな、と覇鬼は嘆息する。
「……いい、ぜ…どうせ、し足りないん、だろう?…」
くたりと投げ出した腕で、物憂げに目元を拭って鵺野は言った。覇鬼の思いが見透かされているのは、繋がっているからだろうか。
「し足りないのは、先生が、でしょう? 一度覚えると人間というものは貪欲ですね」
急に玉藻がそう横から声を掛ける。おそらく、瞬間的にその存在を忘れていた鵺野は、悪戯を見とがめられた子供のように身体を強ばらせ、その怯えは覇鬼に伝わった。
「そんなにいじめてやるな、玉藻。可哀想に、恥ずかしがってるじゃないか」
「知ってます、むしろもっと恥ずかしがってくれた方がいい。空腹は極上のソースというのなら、羞恥心は良質の媚薬なんですから」
「…さすがは妖狐、上手いことを言うな」
覇鬼は妙なところにひとしきり感心した様子で頷いている。
「と言うわけで、そろそろ代わって頂ければ」
「…そうだな。名残惜しいが、仕方がない」
そういう約束だからな、と言って覇鬼は鵺野の中から自分自身を引きずり出す。一度放出したはずなのにそれはまだ硬さを保っていて、鵺野の内側を擦っていく。
「あ………ぁんっ!」
改めてえぐられるような刺激に、腹を波打たせて小さく鵺野は叫んだ。
「先生も、もちろんまだいけますよね?」
覇鬼と入れ替わりに玉藻は、くすりと含み笑いをしながら鵺野の上に覆い被さってくる。はらはらとしなだれかかる薄い金色の毛先が頬や首をくすぐっていく。
「玉藻……っ」
玉藻でない相手で感じてしまったことに対する申し訳なさか、緊張の糸がほどけたのか目尻に涙がにじんでいる。
「……困りましたね、泣くほど嫌でしたか?」
「ちがう、…嫌じゃない…嫌じゃなくて…ただ、そうじゃないのが、」
こわい。
玉藻の耳にだけ届く声音でそう訴えた。思いがけない快楽は、却って鵺野という人間を不安にさせる。それでも、
「なにも恐い事などありはしません。…私も、あの鬼も、いつも貴方と共にいるじゃありませんか」
闇の中をただ一人歩いていく貴方の道行きに、我らは影になり付き従っていく。
貴方を誰よりも愛しく想い、貴方のために今を生きる私たちは、おそらくこの後も貴方と共に道を歩く。
鵺野の寿命が尽きれば、流石に鬼も地獄へ帰るだろう。その時自分はどうするのだろうか。玉藻はちらりとそう思い、頭を振ってその考えを追いやる。
「愛しています、鵺野先生。愛している…」