裏ふぁーすとでーと?
10
「何言ってやがんだ、オマエ?」
――ただでさえややこしいってのに、さらにややこしくする気か!?
「……いえ。もしかしたらアリかもしれません。それ」
「大宮!?」
――なに一人で納得してやがる!
怪訝そうな顔の俺らを一人一人眺めてから口を開く。
「――考えてもみてください。
ま、じゃなくて、夏男さんが桜田さんの彼氏として断りに行ったとします。
そこで、『俺と勝負しろ!』といわれて勝ったとしても、それだけじゃ不十分なんです」
「……どういうことだ?」
早坂が問う。
俺や黒崎も同じく疑問符を飛ばしている。
「わかりませんか?
――つまり、相手が男ならまだ『もしかしたら……』という希望を持ってしまう可能性があるんですよ。
まあ、華奢な美少年が好みなら、多少あきらめもつくかもしれないですけど。
今回は完全にあきらめて欲しいですし、さすがに性別からまるごと好みじゃないといえば諦めてくれるとは思うんですけど」
「――なるほどな。それなら確かに『彼女』のほうが適任かもしれないな」
「だろう?」
頷く早坂に得意げな由井。
――って、ことはつまり。
「く――じゃなくて、夏男が女装するってことか?」
「――え“?」
「そういうことになりますね。」
……………………………………………………。
「「うえええええええええええええええっっっ!!!」」
俺と黒崎の叫びがハモる。
「――ちょ、なんで俺が!?」
焦る黒崎に大宮はこともなげに、
「だって、今から彼女になってくれるような女子を探すのは無理ですし」
「……女装すんのか、夏男。」
「うむ。まあ、似合いそうな体格ではあるな。
――忍ちゃんほどではないだろうがな」
……なんでそんな自信ありげなんだオマエ。
「ちょっと待てよ! 俺の『彼女』になるなら相当美人じゃなきゃつり合いとれねーぞ!」
「……自分でいうか、ふつう?」
呆れた口調の黒崎を睨み、
「俺と葵さんの人生がかかってんだから、仕方ねーだろ!!」
このアルパカが男ならともかく、女装して美人になれるのか?
俺の不審な眼差しに口元をひくつかせなtがら、
「仕方ねーからやってやるよ!
絶対、オマエより美人になってやる!!!」
「ハッ! 望むところだ!!!」
――かくして、黒崎の女装(?)が決定したのだった!!!
「…………女装勝負って……いいのか?」
「まあ、夏男さんがやる気だしてくれたんだから、結果オーライですよ」
作品名:裏ふぁーすとでーと? 作家名:如月花菜