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みっふー♪
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novelistID. 21864
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かぐたんのゲテモノ日記

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×月×日(11)



――この話にはね、ところがもうひとつ恐ろしいオチがあるのさおじょうちゃん、
地面に手を着いたまま、コーチはハハハと肩を揺らした。私ははじめ、コーチはそうして泣いているのだと思ったのだ、しかし私のその考えはまったく的外れであった。私の遥か想像を超え、コーチの抱える闇はなお暗き深淵へと続いていた。くつくつと啜り上げる笑いの狭間にコーチは言葉を繋いだ。
――土下座で天下獲ってやる、獲れるモンだと勘違いして逆上せ上って挙句根性足らずに叩き落された、哀れな男の辿る末路さ、かつて私の土下座は金の成る木だった、私の四つん這い外交が人知れず国家に巨万の益をもたらし、そうして私は私の土下座で悠々メシを食っていた、それが今じゃどうだ、こっちから金を払ってお願いして土下座させてもらっている立場なのさ、――な、わかるだろおじょうちゃん? コーチがちらと私を見上げた。
――……んっ? 私は一歩後ずさった。少女の直感、本能的なものだ、――ちょっと、おじさん何言ってるかわからないアル、私まだ子供なんでーぇ、ティヘッ☆
――都合のいいときだけ子供ぶるんじゃないッ!
グラサンを吊り上げておじさんが一喝した。あまりの態度豹変っぷりに私はびっくぅ!となった。だっておじさん、私いちおう恩人じゃん、さっきおサカナたくさん捕ってあげたじゃん、一緒にはふはふ仲良く食べたっしょ、なのにその恩人に対していきなりこの仕打ち? それで大人名乗るってどーなのよ、まったくだから最近のオトナってヤツはさーァ、しかし私の述べるグチなどもはやおじさんは聞いていなかった。額に滲む尋常でない脂汗、グラサンの下の血走った目、――同じだ、件の本屋で怪しいブツを購入していたときの銀ちゃんと、私はゾッとした。
――私はね、地面にデコをめり込ませておじさんが言った、
――私は土下座の魔力に獲り憑かれた男なのさ、そりゃ一度は真っ当な道に戻ろうとしたよ、そのために己のキャリア人生棒に振った、だけど結局ダメだったよ、それこそ髪の毛一本、みっちり染み付いちまってんのさァ、私の血が、細胞が、欲しているんだ、土下座したい、土下座させてくれ、地面に這って這いつくばって気の済むまでなじられたい、――このブタまんじゅう野郎がァァ!! 思いっきり心を土足で踏み躙られたい、カラダの芯から沸き上がるどうしようもないこの欲求に抗えないんだッ、さぁそのイカすチャイナシューズの靴底で容赦なく私を踏んづけてくれっ! 呆れたクズ野郎だと蔑んでくれ!! 二度と立ち上がれないほど、どっちかと言うと主に精神的にギッタンギッタンに痛めつけてくれ! ……なぁいいだろ? 頼むよ、かかか金は払うッ! 一生かけても払いますからァァァ!!! おながいしますゥこの通りですからァァァァ!!!!!
おじさんが地べたを例のGのヤツのスピードよろしくカサカサ歩きで迫ってくる、
――……!!!!!
私の身体は、思考も瞬間停止してしまった。しかしそのゼロ時間の中で私は私の中にいる二人の私と対峙することとなる。
ひとりは濡れた烏羽の衣装に身を包み、紫檀の毛皮を持つペルシャを抱いて気だるげに暗黒微笑を浮かべる美少女の私、そしてもうひとりは、真っ白の学ランにチャイナ帽とバラの刻印のゆびわを持ち、剣をかざして颯爽と立つ美少女の私、二人の美少女の私が私の中でせめぎあう、オッドアイのペルシャの背を撫でながら濡烏が言った、――いいじゃないの、おやんなさいな、あのろくでなしのブタ野郎の望みを叶えてあげるのよ、そうすりゃアンタはムチとボンデージ教の女王様、あいつはこの先未来永劫アンタの言いなりよ、
女王様、の甘美な響きによろめきかけた私の前に立つように、――ダメ! 絶対!! 白学ランが両手を広げた。――いいこと? アナタは気高きバラの乙女の革命戦士、アナタはあなたのその純真無垢さゆえに、汚れた大人たちを糾弾できるの、その権利があるの、それを自らヨゴレに落ちてその特権を放棄する気? とても正気の沙汰じゃないわ、愚かだとしか言い様がないッ! まくし立てる白バラを苛々と濡烏が遮った、――つーかバカじゃないの、だいたいアンタ設定がトートツなのよ、イミわかんないわよ、何よバラ乙女革命戦士って、どっからいくつパクってきてんのよダッサーっ、鼻で藁う濡烏に、――ううううるさいうるさいっ!!! 白バラがキーキーじたばたヒステリックに喚き叫んだ、私は再度黒バラ(あ、濡烏だっけか)の意見に同意しかけた、――ウンウン設定は大事よねー、設定に説得力がないといまいち物語に入り込めないからねー、
――ネ申楽!
そのときだった。私の耳に、何かとても懐かしい響きを帯びた声が届いた。私の思考と身体は、時の縛りから解放された。


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