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みっふー♪
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novelistID. 21864
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かぐたんのゲテモノ日記

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×月×日(12)



――銀ちゃん!
私の足はもつれるように駆け出していた。――ああ、何ということだろう、右手に木刀を掲げ、雄々しくサダハル号を駆る彼の姿は、まさしく白犬に跨る銀髪の王子様そのものであった。
死んだ魚の目とか天パ以外特徴ないとか ょぅι゛ょ フェチとかしるこっ腹メタボ予備軍とか、ふだんいろいろ好き放題言っててゴメンね、私はちょっぴり心に詫びた。
――踏んでくれよォォォォ!!!!!
土下座の使い魔と化した哀れなおじさんが、猛スピードのカサカサG歩きでなおも私を執拗に付け狙ってくる、
――ネ申楽ちゃん!
そのとき、もうひとつの聞き慣れた声が私を呼んだ。私は川辺に振り向いた。
――ぱっつん!
川の上流から、どういう趣向か機械仕掛けのシャチに引かせたウェイクボードを操って師匠が現れた。”偽イルカの背に乗った少年”、私の脳裏をふとそんな言葉が駆け抜けた。意味はない。しかしいずれ何かしらドコかで使えそうなフレーズなのでとりあえずキープしておこう、メモメモ……っと。
――コレを! ぱっつん師匠はボードの上から私にスプレー缶を投げ寄越した。”瞬・間・冷・却”、私は脅威の動体視力でハイスピードの放物線を描くラベルの文字を読み取った。私と師匠との華麗なる連携プレイ、
――喰らえG野郎!
もはやヒトのカタチを借りたヒトなきものへと姿を変えたおっさんめがけ、私は力いっぱいスプレー缶のプッシュボタンを押した。
――しぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!
断末魔の叫びを上げてヤツは地面に転がった。天に腹を向け、氷柱の垂れた四肢を未練がましくピクピクと痙攣させながら、白く凍り付いたグラサンの下に僅かに濡れ光るのは、あれは涙か涎かハナミズかそのトリプルコンボか。いずれにせよ、かつて土下座で天下に上りつめんと野望を抱いた男の、陰惨な最期であった。
――ふぅ、私は額の汗を拭った。空になったスプレー缶を草の上に放り出す。
――こちとら鬼じゃないんでね、トドメはさしてやるよ、あの世でがっつりザンゲしなメイビー、
いざ引導を、私はチャイナシューズの靴底を振り上げた、
――待て! サダハル号から降りた銀ちゃんが間一髪制止した、――それじゃまんまとこのオッサンの策略通りだ、マジに昇天しちまうぜ、
――ヒィッ!!
私は慌てて足を引っ込めた。地面にくたばったおっさんの口元がニヒルに歪んだ。げに恐ろしきはこじらせたふぇてぃしずむ、私は心底恐怖を覚えた。
――ネ申楽ちゃん! 銀さん!!
シャチブレーキが利かなくてだいぶ現場を行き過ぎていたぱっつんが息を切らせて戻ってきた。
――だっ、だいじょう……!
無様に地べたに転がったヤツの姿にひと目視線を向けるなり、ぱっつんの動きが止まった。
――師匠? 私はぱっつんの眼鏡の前にひらひら手を振った。銀ちゃんも傍で怪訝な顔をしている。
――まっ、マ夕゛オっ、さんっ……、
ぱっつんの唇から、喉を押し出すような声が漏れた。
――知り合いアルか? 私は訊ねた。ぱっつんは激しく首を振った。
――しっ、知らないよ! こんな人ボクが知るわけないじゃないかっ!! ぱっつんは固めた拳でぐいと眼鏡の下を拭った。
――ぱっつん……、
二人の間に何らかの事情があることは明白であった、しかし私はそれ以上彼にかけるべき言葉を失った。天を仰いで虫の息だったおじさんが、そのときぽつりと口を開いた。
――すまなかったな、シンちゃん……、いや、そんな風に君を呼ぶ資格も、いまの私にはないがね、
おじさんは苦しげに眉を上げると肩を揺らした。
――マ夕゛オさんっ……!!
ぱっつん師匠は仰向けのおじさんの上にガバと身を投げ出した。そうしておじさんの胸に縋り、ただ子供のように泣きじゃくった。よろよろと上がったおじさんの手が、戸惑いがちに、震えるぱっつんの背を抱いた。――ヲーイヲイヲイ、箍が外れたように、ぱっつんのいっそうの嗚咽が辺りに木霊する、
――……。
銀ちゃんは死んだサカナの目……じゃない、木彫りの仏像のような慈悲深い眼差しでそんな二人を見守っていた。ハッハッと舌を出して尻尾を振っていたサダハルもおとなしくなった。私はぴたと銀ちゃんの隣にくっついた。何だかすごくほっとする、お父ちゃんのニオイがした――、と正直に言うとキズつくかもしれないので、……いやホラ単に白犬からの連想ゲームですよ、しかし大して面白くもない(サダちゃんの尾は白いアルけどネッ☆)気もしたので、この際黙っておくが花、川を渡ってさわさわ頬に当たる風を感じながら私は思った。


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