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The Last One

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06.色眼鏡(マキスとジグ)





 確かに顔はいい。
 なんて。
 横目に彼を見遣り、マキスはそんな感想を抱く。濃い紫の色眼鏡に隠されて、送る視線には気づかれやしない。
 精悍な顔立ち、紅玉の瞳、きりりと意志の強そうな眉も魅力だろう。引き締まった体格もよし、身長もまあまあ、無愛想な表情もクールでいいのかも。
「ねえジグ」
 通りすがりの女子がこちらを目で追ってさっと頬をピンク色に染める。それがどうにもいたたまれなくて、マキスは小さく肩を竦めた。
「なんだ」
 対して彼はまるでひとつも頓着なく、無造作にマキスを振り向いた。迷いなくまっすぐに人を視るのは彼の癖なのだろう。その度にマキスは少し心臓を縮ませる。けれども、それをおくびにも出さず口の端を吊り上げるのも得意技だ。
「君はやっぱり、気づいてないのかなあ」
「……なんのことだ」
「さっきから女の子たちがちらちら、ジグのこと見てるよ」
 実際、さっきの彼女だけではない。向こうの通りにたむろする女子ランカーも、隣のカフェでひとりお茶する眼鏡女子もそうだ。人の視線に注意する癖のあるマキスには、彼女らのアピールは少し過剰なほどだった。
 が、この鈍感には、まるで効力がないらしい。
 頭に分かりやすく疑問符を浮かべて、ジグはたっぷり沈黙する。あげくに頬に手のひらを遣り、
「俺の顔になにかついているのか?」
 なんて真顔で問い返される。
 はああ、ため息をつくのも馬鹿馬鹿しく、マキスはジグに首を振った。
「そういうことじゃ……ないんだけどね……」
 説明するのも、癪だし面倒だ。気を遣う自分が間抜けじゃないか。
 おそらくマキスより少し年下のこの男は、田舎者で、鈍感で、野生児だ。彼に直接言ったことはないが(言えやしないが)短い付き合いでマキスはとうに、彼の性質を見極めていた。
 恐ろしいのは野生児ゆえに、時折とんでもない直感を働かせることと、田舎者で鈍感がゆえに、驚くような大胆な行動をしてみせることだ。
 しかも多分、この男は、運命の女神に好かれている。
 オッズを賭け違えたかもしれないが、今回の博打には勝てるような気がするのだ。
 まだ不審顔で自分を見遣るジグに、マキスは気にしないでと手のひらを振った。そうか、ひとことだけで手元の防具整備に戻った彼に、まあなんと真面目な、つい微笑む。
 多分彼は本当にひとつも気づいていないし、深く考えもせずただむやみ生真面目なのだ。マキスがとうの昔に無くしてしまったものを、疑いもせず全て持っている。
 色眼鏡の奥で、マキスはもう一度微笑む。
 この男はどうやら、ほんとうに、好ましい。
 色眼鏡の奥から見遣る世界は、平坦で均一に慣らされている。けれどその中にひとつふたつ、異彩放つものを見つけるのがマキスは好きだった。
 ガンドアは昔から変わらない。通りも、人々も、何もかもそのままだ。さてそれを知らぬ異郷の青年は、マキスに何を見せてくれるのだろう。
(いや、一緒に見るのか)
 今はまだ見通しもたたぬ“未来”を思いやって、マキスはもう一度笑みを刻む。

(でも、とりあえず、女の子のあしらいくらい、早めに覚えてほしいなあ)
 




100902 とりあえず軽めにひとつ。


作品名:The Last One 作家名:まなと