これでおしまい
10:Ed il mondo dice la fine
膝の上に急に現れた温もりに、少年は視線を向けた。
いつの間にか、絵本を読んでくれとせがんだ子どもは夢の世界へいっているようで、すうすうと規則正しい寝息をたてている。
この絵本の内容をこの子どもは最後まで知っているのだろうか、と苦笑した。いつも最後まで聞いているのを見たことがないから知らないのかもしれない。
もしかしたらまたこの絵本を持ってくるかもしれないな、と思い、大事に大事に抱えなおした。
空を仰いぐと、きらきらと光る木漏れ日に少年は目を細めた。
そのうち少年も欠伸をして、眠そうに目を擦る。
膝の上のあたたかい体温の子ども髪を撫でてから、少し眠ってしまおう、と壁に背をあずけた。
片手で絵本を持って、何気なく最初のページからぺらぺらとめくりながら。
そして、最後のページに辿りつく前に、少年は眠気に負けて、瞼を閉じた。
こ れ で お し ま い