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dmc3双子短編詰め合わせ

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もうなんにもいらない(1V:最初の話の少し前)


閉じる世界は真っ黒で、それはひどく終焉じみてて吐き気がした。常に胸元へせりあがる熱い何かが喉を焼き、まともに言葉もしゃべれずに、めまいのするような世界の中で頭の中に響く声だけが、やけに現実味もなくあいまいだった。殺せ殺せ殺せとわめき散らす警告のような音。サイレンにも囁きにも似た、ひどく焦燥に駆られる声だ。剣をにぎる。振り払う。幾度となく戦った男が目の前にいた。赤いコートをまとう、どこかで見知っているような気がしたが、そうでない気もした。耳の中で殺せと声がこだまする。そうだ、あいつを殺さなければならないと納得をする。目の前の男は、長い剣を振りかざして向かってくる、恐れはない、高揚もない、なにもない。剣が胸元を貫いても、それは痛みではなかった。男の胸元からこぼれおちたアミュレットに驚きとともにめまいがする。知っている気がする、けれど知りはしない。意識がゆるりとブラックアウトするさなか、自分の胸元から地面へと落下した、男と同じアミュレットを見た。どうしてここにあるのかわからなかった。けれど、自分の胸元から落ちたアミュレットを見て殺さなくてはならない男が、ひどく衝撃を受けているのがよくわかった。知っているのだと思った、しかしそれは何だかわからない。目を閉じる。ひどく安堵した。あの声はもう頭に響くことはなかった。沈黙があった。ひどく静かだった。
(もう、なにも必要ない。これでようやく、全部が終わる。)