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ヅラ子とベス子のSM(すこし・ミステリー)劇場

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【(よくわからない)突発・先生とボク(not少年編)のターン☆】



「……お昼のパスタ美味しかったです、」
横になった布団の中で半分眠そうな声に先生が言った。
(……。)
――晩メシの感想はないんすかとか、……いやそもそもそれ以前に、とか、いちいち聞くのはナシにしておこう。
「呼ばれてすぐテーブルに来てくれるならいつでも作るんですけどね、」
捲れた布団の位置直してやりながら、――だからそういうのはー、せっかくホメてくれたんだから黙って腹に収めときゃいいと自分でも思うのに。
「――そうですね」
目を開けて見上げて流れた長い髪に首を傾げて、神妙な面持ちに先生が言った。
「……前向きに努力します、」
(……、)
――何なんスかもー、めちゃめちゃもっぺんまじでぎゅーってしたいけど、絶対に際限なくなること請け合いなので全力に理性でブレーキ掛けて踏み止まる。歯ァ食い縛り過ぎて頭ン中フラフラする、フラフラついでに先生に聞いてみる、
「先生、俺ずっと先生のメシ作ってていいんすよね?」
伏せかけていた睫毛がゆっくり上がって訊き返す。
「……ずっとって、いつまでですか?」
「――、」
布団の脇の畳の上にかいた胡坐で腕組みして、考え込む素振りで明後日に視線を逸らして答えを返す。
「先生がもういらないって言うまで」
「……、」
先生がちょっと笑ったのが気配でわかった。顔はまだ見れない。――だってウソだし、いらねーって突っ返されても、――ハイそーですか、そんなすんなり諦め切れるわけねーし。
「いっそケッコンしちゃいましょうか、」
含み笑いに先生が言った。
「はっ?」
思わずこっちが振り向くタイミングで、すました顔に先生が促す。
「じゃあ、そこでぷろぽーずの練習してみて下さい」
「……いまですか」
突拍子もなく、……まぁ毎度のことだけど、何考えてんだろうこの人は、自然眉間に皺が寄る、いったんは引き締めたものの、先生の口元は再び緩んで綻びかけている、
「軽い気持ちでいいですよ(笑)」
「(笑)じゃないでしょうっ!」
「“!”は難しいですね、」
かと思うと急にまた真面目な顔になって、……つかイミわかんねーしいつの間にかしりとりになってんし、ハァァと一つため息まじり、
「寝ぼけてんじゃないでしょーね」
「“ね”ばっかりですね、」
人の顔見てくすくす笑う、こうなりゃこっちもだんだんヤケだ、
「年賀ハガキの当選したヤツ引き替えまだでしたね」
先生がおっという顔に瞬きをした、
「ねばりますね」
――そーいえば、
「ねっとで注文したアレもうすぐ届きますね」
天井を向いて、目を閉じたまま先生が言った、
「年中無休でたすかりますね」
「ネ……タ切れなら無理しないでね、」
――っとてめーの方じゃんあぶねーあぶねー、
「ネタはまだまだいっぱいありますよ、ね」
閉じた瞼が揺れている、ホントにまったくこの人は、
「根っからどえすなんですね」
「ネガティプ思考はよくないですね」
なるべく淡々とした口調に、声のトーンを変えないで、
「年配のおじさんとそうでもないおじさん、どっちがイイんすか」
「えーっ? それは一概には……」
「ハイ、先生の負けっすね、」
最後の“ね”を強調して、やれやれやっとカタが付いた、
「……」
――あっ、沈黙の後で思い出したように先生が言った。
「その前に君も最後“ね”じゃなくて“か”で終わってましたよっ」
「その次に“え”で始めたからどっちにしろ先生の負けです。“ね“が続いたのはたまたまぐーぜんでルールじゃないですから」
こういうとこは甘くするとそのままズルズル押されるパターンが多すぎだから、頭からきっぱり断言しておく。
「……わかりました」
観念した様子に先生が言った。
「君の勝ちだから、君が食べろって言う限り君のつくったゴハンを食べます」
「……まぁ、いいでしょう、」
って先生が差し出した手ェ取ってエラソーに胸張って、何がイイでしょう、やらコッチもあんまわかってねーカンジだけど。
だけどとりあえず気は済んだので、睡魔に片袖引かれながら笑いを堪えて小刻みに肩震わせてる先生のカラダを、布団に手ェ戻しがてら、一瞬だけぎゅっとハグして障子の外へ出た。


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