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また恋におちてしまった〔銀新〕

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どういう経緯でこれを手にしているのか、新八は考える。
手の中には一度くしゃりと潰された煙草があった。それを同じように握ってみると、同じように潰れた跡があるからだ。潰されたそれを見ながら、落ちてきた眼鏡の蔓を持ち上げる。
新八はもちろん吸えないし、吸ったこともない。その銘柄からも何も想像できなかったが、不意に口の中が苦く感じた。つまりはそのくらいしか知識はない。少し興味はあったものの、その白い先に火を灯したことは無い。
だが、ここから思いつく人はそう多くない。そしてこの持ち主だった相手を思い出した。

買い物の帰り、本当に偶然に土方に会った。
「お前、あそこで何やってんだ?」
スーパーの袋を下げた新八を見て、うんざりした様な表情で開口一番そう告げられた。ちょっとムっとしたので言い返そうと思ったのに、新八もその時土方同様、確かに何してんだろうなあと少し思った。
でも、これは仕事という範疇ではない。だって仕事に出ているのは銀時と神楽だ。今回自分は留守番を兼ねた、ただいまと出迎える役目だ。そこそこ報酬のいい仕事に向かった二人は、新八に久々肉食うぞ、用意しとけと喜び勇んで出かけていった。だからこうして、それでも特売の肉を買ってビニール袋をぶら下げているのである。
「そっちこそ何してるんですか?」
黒い隊服に身を包んで、腰には帯刀とくれば土方も仕事中ということだ。一人でこんな道端で暇そうにしていたら、こっちだって言いたくもなる。
「俺はあれだ、あの、………」
言いよどんだ後、土方は肩の力を落として諦めたように言う。
「近藤さんを探してんだよ」
「はあ…」
同情したらいいのか、果ては呆れたらいいのかわからなかったが、新八はそう返す。
その返事に土方は溜息をこぼし、いつものように煙草を取りだす。そしてその先に火を点けた。じっと燃えた音に、新八は一瞬視線を持っていかれる。自分の周りには、というか銀時は吸わない。少なくとも見たことはない。
紫煙は吐き出され、土方は少し満足したのか顔を上げた。
「美味しいですか、それ?」
新八の言葉に、少し意外といった顔をして土方はこちらを見た。そしてもう一度紫煙は宙を舞う。
「煙吸って、何が美味いんだよ」
そう返され、やっぱり「はあ…」としか新八は返せなかった。それが最後だったのか、くしゃりと握りつぶすと何故かそれは新八へ放られた。
「やる」
「やるって…」
受け取ったそれに視線を落として、もう一度顔を上げると土方は片手を挙げ歩き出していた。
「ゴミじゃないですか…」

そのまま、結局道端に捨てるわけにも行かずに持ち帰った結果だ。
帰ると仕事は成功したらしく、夕食に満足した神楽は疲れも多少あったのか早々に寝てしまった。深夜とまではいかないでも、そこそこ深い時間に新八は銀時と二人居間にいる。
どうしたものかと新八はじっと視線を向けていると、銀時がすぐ隣まで体を寄せている。
「おいおい、新ちゃん。反抗期?不良第一歩コース?盗んだバイクで走り出そうとしてんのか?」
矢継ぎ早にそう言う銀時に、新八は「何言ってんですか」と返す。
「買い物の帰りに土方さんに会って、貰った…っていうかこれゴミですよ、どう見たって」
「よけーな事、新八に教えやがって」
「だから!ゴミですって」
「どれ、かせ!」
その握りつぶされた煙草を、銀時は奪い取るようにして新八から持っていく。
「人の話聞いてます?」
「聞いてる」
絶対嘘だと新八は思い、溜息を零す。なんだかいつもより強引な銀時の様子に、もしやと思い新八はある可能性を試す。
「もしかして、妬いてます?」
「はい?」
「そうなんですか」
「おいおい、何言ってんの。妬いてるとか違うから」
そう言いながら、銀時はぐしゃぐしゃになった煙草を捻じり返し、元の形に戻していく。
「ふーん。でも煙草ってちょっとかっこいいですよね」
もちろん銀時に対しての挑発ではあったが、かっこいいと思ったのも事実だ。
火が灯る瞬間の、ぼんやりと顔にあたる火と、その仕草は少し大人なイメージを新八に抱かせた。
「あ、っそう。お、残ってんじゃんか、一本」
そう言って、奥に潜り込んでいたらしい一本を銀時が取り出す。
「本当ですか?」
土方がわざと残した物なのか、本当に見落とした物なのかはわからない。
銀時はそれを見つめたまま少し考えた後、立ち上がる。
「銀さん?」
何かを探しているのか、戸棚をひっくりかえす勢いでごそごそとかき回している。
「あったあった。ババアの店のマッチ」
どさりとソファーに座りなおし、それを見せた。
「吸うんですか?無理しなくていいですよ」
「もったいないからだな」
とか何とか銀時は言って口に銜えた。
どうせ咳き込むに決まってる。この根っからの甘党が、どう考えても煙草など吸えるはずが無いのだ。
「火」
仕方なく、新八は渡されたマッチをする。ぼんやりとした火がついて、ゆっくりとそれを近づけた。
揺らめく火に、銀時の顔が照らされる。そういえば、こんなに近くでまじまじと顔を見るなんて、中々ない。キスする時は、いつも一瞬だった。
そしてすぐに咳き込むだろうと思っていたのに、銀時はゆっくりと吸い込んで、同じような呼吸で紫煙を吐き出した。
「げ、やっぱまじーな」
そう言うものの、意外に指先で煙草を持つその動きは自然に見えて、違う人を見ているようだった。
その横顔に見惚れてしまう。
「銀さん」
「こんなもん吸うんじゃねえぞ」
「美味しいですか、それ」
「…煙吸って、何が美味いんだよ」
同じ言葉に、つい笑ってしまう。
「なんだよ」
その新八の様子に、不満気な顔で銀時が返す。
「味、知りたいな」
新八がゆっくり体を近づけると、気づいたのか銀時に促されるようにキスをした。
触れた瞬間、いつもと違う苦い味がした。
けど、それは思ったほど悪くはなかった。
だがそれも一瞬で、すぐに舌が絡まると消えた。甘いキスの味だけがする。
「くせになりそう」
新八がそう言うと、もう一度銀時は煙草を銜え、煙を新八に吹きかける。

「キスがだろ?」