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みっふー♪
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novelistID. 21864
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ワンルーム☆パラダイス

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「……、」
表面にうっすら汗をかいた牛乳瓶の蓋を開け、少年は一気にぐいと中身をあおった。確かに少しぬるかったけど、少年の乾いた喉を潤してそれは静かに身体中に滲みていく。まるでおじさんがときおり少年に見せる優しさそのものみたいに。
「はーーーーっ! 美味しかったですっ」
本格的に涙が出そうになる前に一気に飲み終えた少年はおじさんの方を見た。おじさんは、……おじさんのはコーヒー牛乳だったが、いまだちびちびやっている最中だった。
「ああ、すぐに飲んでしまうから」
おじさんは大きく瓶を傾けた。飲み終えて、少年の分も瓶を預かると、はにかみ笑いにおじさんは言った。
「……ほらここ、瓶返すとお金戻って来るだろ?」
「――、」
少年は頷いた。こういう、経済観念のしっかりしたとこもおじさんの数えきれない魅力の一つであると少年は真摯に思うのである。
小銭を受け取ったおじさんがほくほく顔でグラサン湯ののれんを捲って表に出てきた。
「それじゃ帰ろうか、」
上機嫌におじさんが言った。少年は同意した。
先に行くおじさんは右手に湯桶を抱えている。少年は左手に持ち替えた。角を曲がって、街灯の薄暗い通りに入ったあたりで、鼻歌まじり、半纏の袖下にぶらぶら揺れている腕によぉーーーっくメガネを凝らして狙いをつけて、少年はそろりと、
「――こんばんは、」
少年とおじさんの背後に声がした。
「!」
――はぅあ! 心臓が飛び出すかと思いながら少年は振り向いた。
「こんばんは」
少年の隣でグラサンおじさんがのんびり返した。「今帰りですか?」
「――ええ、」
街灯の明かりを背に、ズタボロマントに破れ麦藁帽、水筒を提げてデカい布包みを抱えた世紀末おじさんがぬうっと姿を現した。
「銭湯の前でお見かけして、お風呂帰りですか?」
少年の方を見て、強面を綻ばせたおじさんが語りかけた。
「はっ、ハイ……」
少年はそっと道の脇へ避けた。和やかに談笑しながら、おじさん二人が並んで歩くすぐ後ろに、無口になった少年も俯き加減についていく。
(……。)
――誰も悪くない、何を責めるわけにもいかない、ただほんのちょっとツキがなかっただけさ、少し滲んで、東の空に昇りかけの月を見上げて少年はほんのりフルーツ牛乳風味の、しょっぱい鼻水を啜った。


+++