零時前のヒール
おまけ6 グッドマン宅にて
「ところで臨也、シズちゃんとは仲直りしたのかい?」
「………意外、覚えてたんだ、あいつの名前」
「確かに彼の顔を見たのは一瞬だったけれども、君がよく家で彼の事をしゃべってたからね。 強く印象に残ってるんだよ」
「お願いだからいますぐその頭からその名前を消してくれないかなあ、チャットならまだしもここでその名前を聞くとは思わなかったよ本当……」
「むっ? その調子だと仲直りしていないね? 君が落ちたのは彼のせいではないと二人とも理解しているんだろう?」
「確かにあのときは俺シズちゃんに追いかけられてたけど、その前から俺たちの仲は最悪なわけ。わかる? ……いやーあのとき、俺をヨシオさんが助けてくれたときのシズちゃん、さいこーに呆気にとられてたなあ、あぁ、今でも笑えるほどだよ! 写真撮ればよかった」
「今でもそんなに鮮明に思い出せるなら、その必要はないんじゃないのかい?」
「……ヨシオさん、りんご切れたよ」
「あぁ、ありがとう、そしてありがとう!」
「はいはい、ジョン、ちょっと待って、今エサ出すから。……はぁ、あのさぁヨシオさん」
「どうしたんだい? 溜息なんてはいていると幸せが逃げてしまうぞっと☆」
「……うん、いや、俺ってさ、動物に嫌われやすい性質らしくってね、よくて逃げられる、普通唸られる、悪くて襲い掛かられるんだけれど、君のジョンはさ、そりゃあ最初はのしかかられたけれど俺にもなついてくれるよなって」
「そうなのかい? 私には君に他の人よりも心を許している気がするが……うーん、そうだね、私が君の事を信頼しているからだろうか? ……どうしたんだ臨也、頭でも痛いのか?」
「……いいや、今一瞬体育座りをして部屋の片隅で暫く時を過ごしたいほどの羞恥に駆られただけだから大丈夫。ちょっとそんな顔しないでよ駆られただけだから本当にしないってば」