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ルック・湊(ルク主)

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喚起2



「けっこう美味しかったね、晩御飯。これだったら本当にここの学生になっても・・・」

ナナミが楽しそうに湊に話しかけている時に、向こうから日中に助けた少女がやってきた。
ちなみにこの少女、さきほど既に学校前でも皆に会って、その際にフリックに対してガンガンに攻めていた。
どうやらフリックに熱をあげたようである。名前は、ニナ、と言ったか。

「あら、あなた達。あ、そうか、ここの学生になったのね。フリックさんが付き添いで来たって言ってたし。」
「あ・・・昼間の・・・」

ナナミがつぶやいた。そんなナナミをじろじろと近づいて見つめ、ニナはニッコリとする。

「うん、大丈夫。OKよ。えっと・・・ナナミちゃん、だよね?」
「え、え?何が大丈夫なの?」
「だってどっから見ても私の方が上ですもん。フリックさんをとられる心配ないわ。」
「・・・・・・」
「私達、お友達になれそうね、ナナミちゃん。???どうしたの?ま、いいか、じゃあね。」

言いたい事だけ言ってしまうと、ニナは手を振って行ってしまった。

「・・・えっと、ナナミ。ナナミは十分可愛いよ。」

湊はあはは、と苦笑いしつつ、ナナミに言った。そしてブーッと可愛くふくれているナナミの扱いをアイリに任せて、フッチに手を振り、今の自分の部屋に入る。

「あのニナって子、変わった子だよねぇ?」

そして同じく部屋に入ってきたルックにニッコリと話しかけた。

「・・・あ?ああ、そうだね。」

相変わらずなんだかぼんやりしてそうなルックは、そのままベッドに座りこんだ。
湊はそんなルックの様子がやはり心配だった。具合でも、悪いのだろうか。肌の色はもともと白いから顔色はよく分からないけど・・・熱とか、ないのかな・・・?
おもむろにルックに近づき、そっと手をルックの額に持っていった。

「っ!?な、何!?」

ふいに湊に気づいたらしいルックがびっくりしたように顔を後ろに反らした。

「え、何って、熱とかないのかなぁって思って。」
「ないよ。」
「え、でもなんかルック、変だし・・・」
「失礼だな、変とは何。」
「だって・・・」

そう言いつつ、やはり気になる湊はまた手を額に持って行く。

「ちょっ」
「・・・ねえ、やっぱり熱、あるんじゃない?なんか、熱いような気がする。」

そう言って心配そうにルックの顔をうかがえば、心なしか顔も赤いような気がする。
やっぱり、どこか悪いんだ・・・。

「ご、ごめんね、ルック。具合悪いのに来てもらって。どうしよう、薬とか、あったかなっ。」
「ちょ、もう離して。熱なんてないし、具合だって悪くない。」
「だって、なんか熱いもん。顔色だって、なんか熱っぽいっ。」
「っ!気のせいだからっ。あ、確かにちょっと疲れたような気はする。僕はもう寝るよ。明日はまた色々する事あるんだろ?君ももう、寝たら?」

そう言うと、ルックは湊を手を払いのけて、そのままベッドに入り、壁の方をみて横になってしまった。

「うん・・・ルックがそう言うなら。でもほんと、もし具合悪いなら我慢とかしないでね?」
「・・・・・・」
「じゃあ、おやすみ、ルック。」

湊はしかたなく、自分のベッドに入った。
せっかく同室だし、色々話とか、したかったというのもあるけど、ルックが心配だし、確かに明日も色々する事があるだろうし、と大人しく眠る事にした。
しばらくすると湊の方向から小さな寝息が聞こえてきた。

・・・やはり、なんだかおかしい。
ルックは全然眠れてなかった。むしろ湊の寝息が聞こえてくる事によって、一層目が冴えてくる。
なんだろう、本当に。

・・・今までにない感情。
もともとルックには基本的に感情らしい感情はなかった。そう、だって自分はもともと器だし。
それがレックナート様に連れられてあの魔術師の島で暮らすようになって(ついでに小間としてこきつかわれ)。
次第にヒトとしての感情というものが分かるようには、なった。
といっても普段は周りにレックナート様以外だれもいない状態。気づけば独特の性格になっていたようだ。
あの戦争によりたくさんのヒトに会う事によって、とりあえず自分はあまり褒められた性格ではないという事を知った。
それでも、あの2枚も3枚も上手な、まったくもってとんでもない軍主のもとで数年、戦争の間たくさんのヒトと接して色んな感情と言うものを知ったつもりでいた。

でも。
こんな感情は知らない。
なぜ心臓が痛い。
子猿のせいだ。

初対面ではなんともたよりなさげな小さい生き物のようにしか見えなかった湊。
だが彼はその小さな体で毎日を一生懸命生きている。自分にはない懸命さで。そして周りに光を与えている。
灰色の夢しか見えないような僕ですら、湊の光はまぶしくも暖かく届いてくる。
少しとんでもないところもある性格ではあるが、元気で明るく、笑顔が絶えない。
もちろんやはりまだ子供らしく、今の状況におびえ悩むことはあるようだが。
そんな湊の色んな面が見えてくる度、ルックはなぜか不思議な感情に悩まされた。

ほんとうに、いったい自分はどうしたというのだろうか。
静かに聞こえてくる湊の寝息により、また心臓の痛みを覚えつつ、ルックは眠れぬ夜を過ごした。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ