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ルック・湊(ルク主)

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病気



「ねえ、湊、君、具合、悪いだろ。」

いつものように石板前の番人のところに湊が立ち寄ると、しばらくは黙って湊を見ていたルックがおもむろにそう言ってきた。

「え?何言ってんのールック。気のせいじゃない?」
「・・・前に言ったろ。君の嘘はバレバレなんだって。」
「う・・・。で、でも他には誰もそんな事言わなかったよ?」

ここに某英雄やら某放蕩息子がいれば、『それはルックがいつもずっと湊を見てるからすぐ分かるんだよなー?』とでも言ってからかっていたであろうが。
ルックは少し違うところを一瞬見た後で続けた。

「ごまかさない。いつからさ?」
「・・・昨日の夜。」
「まったく。なんでそんなでうろうろしてるんだよ。医務室には行ったわけ!?」
「・・・行ってない。だ、だって、ね?この間も倒れて皆に心配かけちゃったし、その・・・」

嫌なんだ、と湊は言った。
ただでさえ自分は軍主としてあまりちゃんと仕事出来ていないと思うのに、せめて余計な心配はかけたくないんだ、と。

「・・・バカだね。それでムリして、また倒れる羽目になったら元もこうもないだろ。」
「う・・・。」

ため息をつくと、ルックは湊の額に手をやった。

「・・・。」
「わ、ルックの手、冷たくて気持ちいい。」
「・・・冷たく感じるのは君が熱いからだ。まったく。」

そう言うと、ルックはおもむろに湊の手をつかみ、シュウのいる執務室に瞬間移動した。

「何用だ?・・・湊殿も?」
「シュウ。ちょっと軍主は疲れ気味なようだ。周りに心配かけない為にも、ここじゃない別のところで数日休ませる。いいだろ?」
「ちょ、ルック!」
「・・・。」

シュウは2人に近づいてきた。そうして湊をじっと見る。それから手を伸ばし、先ほどルックがしたように額に手をあてた。

「・・・。ほんとにあなたという人は。・・・分かった、ルック。頼む。」

呆れたように、だが優しい眼差しで湊を見たあと、シュウはルックに向かって簡単にそうとだけ言った。

「え?あ、あの・・・」

戸惑っている湊を無視して、ルックはまたそのまま移動した。


「おや、相変わらずの不法侵入、歓迎するよ?あれ?湊?いらっしゃい。」

詩遠は優雅に午後のお茶を飲んでいたところに不意に現れたルックに驚きもせず、皮肉を言ったところで湊に気づいた。

「あ、マク・・・詩遠さん!こ、こんにちはっ。ってルック!いったい・・・」
「詩遠。この子、ちょっと風邪ひいて熱もある。数日、治るまで安静にさせておきたい。不本意だが、君の家が丁度良くてね。」

相変わらず戸惑っている湊をまた無視して、ルックは詩遠に言った。

「不本意なのにそれは残念なことで。って、湊、具合悪いの?おいで?ちょ、グレミオー?」
「え?あ、あのっ」

詩遠はニッコリと含みのある笑みをルックに見せたあと、今度は優しく湊に微笑んでその湊の肩をそっと持って、台所にでもいるのであろう、グレミオを呼んだ。

「はいはい、坊ちゃん、何で・・・あれ?いらっしゃい、湊くん、ルック。」
「グレミオ。湊は具合が悪いみたいだ。熱もあるようだから、ちょっと部屋につれていって・・・」
「なんですって?可哀そうに。分かりました、こちらにいらっしゃい、湊くん。」

詩遠の言葉を最後まで聞かずに、グレミオは優しく、戸惑ったままの湊を連れ出して行った。

「グレミオがいるから、あとはまかせてもらったらいい。で?」
「・・・何さ。」
「いや、いくら湊が好きだからって、ただの風邪でお前がそこまで、しないよね?なんなの?・・・紋章の絡みか?」
「・・・前にナナミが言ってた。いつも薄着な湊だけど、実は風邪すらひいたことないんだって。さっき手で触れただけだけど、けっこう熱、あると思う。多分・・・紋章のせいで身体の抵抗力も弱っているんだろう。直接命を吸われて、という訳ではなさそうだ。・・・今はまだ。」
「・・・そう。・・・いっそハイランドに行って、手っ取り早く紋章を一緒にしたい思いにかられるね。」
「言うな。僕だってそうだ。だけど湊の気持ちを尊重したい。」

ルックはプイ、と身体の向きをかえて、ドアに向かった。詩遠はそんなルックの後ろ姿を、ふ、と優しげな眼差しで見たあとで口を開いた。

「ルックも泊まっていく?」
「いや。周りにおおごとだと思われたくないそうだ。僕はもう帰るよ。後は頼んだ。」
「へぇ、いいの?俺に湊預けていって?」
「ろくでもない事したら、コロス。」

お互い、軽口だと分かりながらもそう言ってから、ルックは色々看病の準備をしているグレミオをつかまえて湊がいる部屋を聞いた。

「湊。」
「あ、ルック。もう、おおげさだよー。ルックも詩遠さんやグレミオさんも!」

ルックが部屋に入ると、グレミオに言われたんだろう、湊が大人しくベッドで寝ていた。
何気に湊はグレミオに弱い。多分、自分にはいなかったお母さんでも彷彿とさせているんだろう、と前に詩遠が本気か冗談か分からないような口調で言っていたが、まあきっと当たっているだろう。
グレミオは、男ではあるが、間違いなく、属性はお母さんとしか思えないし。

「いいから。とりあえずグレミオがいいっていうまで、この家でゆっくりしてる事。もし城でなにか展開があれば、僕が伝えにくるから。」
「・・・帰っちゃうの・・・?ルック・・・?」

湊が寂しげに言った。

「ああ。おおごとにしたくないんだろ?じゃあ大人しく、ここで安静にしてなよ。」
「・・・分かった。でも、また会いにきてくれる?」

ルックはベッドに近づいて湊に優しくキスをした。

「うつっちゃう、よ・・・?」
「もらえるならもらうよ。ああ、会いにくる。」

ルックはそう言って湊から離れ、ドアノブに手をかけたところで振り向いた。

「・・・湊。何度も言うが。君はよくやっている。誰もが君を立派な軍主だと認めているよ。もちろん、僕も。」

そして出ていき、グレミオに再度湊を頼む、とだけ言うと、瞬間移動で城に帰っていった。
後に残った湊は、目を潤ませ、それは顔を真っ赤にさせており、入ってきたグレミオをやたらに心配させていた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ