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【SPARK】TRRR!!【新刊サンプル】

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前日譚


 始まりは些細なもので、殆どの人が気づかなかった。
 始めは平和島静雄だった。池袋名物と化している彼は突如としてその姿を消した。最初に気づいたのは静雄の上司である田中トムだった。指定の時間になっても仕事場に来なかった彼を訝って携帯、自宅と当たっていったが所在は知れず。数少ない友人とも云える岸谷新羅を尋ねても彼さえも首を傾げる始末だった。
 続いては折原臨也。しかし彼に至っては静雄が消えたことに対して大層浮かれていたことは同じく友人の闇医者によって証言されているが、残念ながら臨也が居なくなったことに気づくのは、大分後になってからであり、更に彼を気遣う人間はついぞ現れなかった。
 次は園原杏里。そして竜ヶ峰帝人。この二人を襲った怪事には同じ高校に通う紀田正臣によってすぐに明るみに出た。

***

「セルティさん!!」
 普段の明るさとは裏腹に切羽詰まった声が都市伝説を呼ぶ。
「あの…帝人と杏里は……?」
 不安の中に僅かながらの期待を滲ませつつ正臣は問う。
 それに答えられない心苦しさを覚えながらも彼女はかぶりを振り、現実を突き付ける。
『残念だが、帝人も杏里ちゃんも静雄の行方さえも分からない。』
「そう……すか…」
 がくりと目に見えて落ち込む正臣にセルティはだがと言葉を続けた。
『新羅が何かしらの情報を掴んだようだ。』
 聞いてみないか?という提案に、当然彼は一もニもなく飛びついた。
「勿論す!」
『なら公園へ行こう。そこに新羅が待っている。』

***

「情報を掴んだというよりは思い出したと言った方が正しいね。
 この一連の神隠し騒動は実はある携帯電話が原因なんだよ。」
 西口公園にて、自販機のお茶をもてなされつつ話を聞いていた正臣は眉をひそめた。
「携帯すか?」
 双方から疑わしげに見つめられて新羅は肩を竦める。
「所謂呪いの携帯ってやつだね。何でも、持つ人の身に不可思議なことが降り懸かるいわくつきの携帯らしい。
 ねえ、紀田君、こういうのに帝人君なんかは凄い興味持ちそうじゃない?」
「まあ……」
『確かに。目を輝かせる様が想像できる……』
 両者から賛同を貰ったことで新羅は満足そうに頷き、仮説を続ける。
「私が思うのは、帝人君は何かのきっかけで彼と会い、その過程で例の携帯を渡され、好奇心の促すままいじくっていたら何かが起こってしまった。」
『なるほど、帝人はそれで説明がつくな。しかし静雄や杏里ちゃんはどうなんだ?』
「いや、ちょっと待ってください!それよりも<彼>って誰っすか!?」
 突如新羅のシナリオ中に現れた第三者に正臣はすかさず言及する。しかし新羅はさも当たり前かの如く、動揺一つ見せずにその片鱗を口にした。
「その“携帯”の話をしてくれた張本人だよ。」
 それだけでセルティには心当たりが生まれたようだ。『まさか』と打たれる文字列。
 それを確認し、新羅は「流石僕のセルティ」と称賛の声を上げる。
 だがしかし、彼が<彼>の正体を口にするその直前――

♪♪♪♪♪♪♪♪

室内に響く電子音。
「あ、すんません。俺の携帯ッス。」
 帝人たちの情報をいつでも受け取れるように、正臣は最近では携帯のマナーモードを解いて持ち歩いていた。
 現在もそうで、彼は二人に断りを入れつつ、携帯を取り出した。
「え?」
 だが正臣の携帯はおかしなことになっていた。
『どうした?』
「これ……俺の携帯じゃない…。」
「!?」
 新羅に手渡された正臣の全く見覚えのない携帯。それがけたたましく着信を告げている。
「これは紀田君の携帯じゃないのかい?」
「違います。こんなの見たことない。」
 気味悪そうに、しかしけして視線をそれから外すことなく、僅かばかり距離を取る。
 その間にもその携帯は諦め悪く鳴り響く。
『もしかして、これが“例の携帯”なんじゃないか?』
「“呪いの携帯”?」
 先程まで話題に上っていたキーワードを聞き咎め、正臣もPDAに目を走らせる。
「でもいつの間に……?」
「擦れ違ったときにでも潜り込ませたとかじゃないかな?」
『有り得る。』
 打ち込んでいるうちに怒りが込み上げてきたのか、ダンッと机を拳で叩く。
 しかし、打って変わって正臣は冷静だった。
「でも、ってことは“これ”は帝人に繋がってるってことっすよね?なら俺、出てみます。」
 やっと掴んだ親友たちの手がかり。正臣からしてみたら、これを逃す手はない。
「漏れなく君も非日常の仲間入りになっても?」
「っ、かまいません。」
 彼の決意の固さを読み取り、新羅は頷いて見せた。
「なら俺が言うことは何もないよ。」
 静かに促され、覚悟を決めた正臣の手が鳴りやまぬ携帯へと伸ばされる。だがその手が届く前に黒い影に遮られた。
「セルティさん!?」
 影が収縮し、次の瞬間に件の携帯はセルティの手元へと移動してたのだ。
「セルティ!何を……!?」
『私も行く』
 ひゅっと息を飲んだのは新羅だった。
「だ、ダメだ!そんなの危険すぎる!」
『だからこそだ』
「止めてくれセルティ!!」
 新羅は駆けだす。セルティを止めるために。
『すまない、新羅』
 しかし非力な新羅が彼女に敵うはずもない。

ドッ

鳩尾への一撃の元、彼は無様に昏倒した。
 倒れる彼を丁重に受け止め、近くのベンチへと横たえさせる。さらりと愛おしげに前髪を撫で、決意を新たに正臣の元に向かった。
「セルティさん……。」
 不安と恐怖と戸惑いが綯い交ぜとなった正臣の表情。
 安心させるように『大丈夫だ』と自らの覚悟を伝える。
 それに呼応するように正臣も頷き、

ピッ

二人は異世界への扉を潜った。

~♪~♪