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ハロウィンつめあわせ

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悪魔と魔女の夜(べーさく)



薄くて大きな羽根を動かし、ベルゼブブ優一は人間界の夜空を飛んでいた。
やがて、マンションの一室のベランダへと降りた。
ベルゼブブの眼のまえにはガラス戸がある。内側から鍵がかけられている。カーテンが閉め切られているので、中の様子はまったく見えない。
そのガラス戸を、コンコンと軽く叩いた。
部屋の中から反応はない。
だが、しばらくして、カーテンがほんの少しだけ開けられた。
ノックしたのが何者なのかを警戒心たっぷりに確認しているのだ。
ベルゼブブは微笑み、ガラス戸の向こうに呼びかける。
「さくまさん、私です」
すると、カーテンがシャッと勢いよく引かれ、さらにガラス戸がガラララッと開けられた。
「ベルゼブブさん」
佐隈りん子が正面に立っている。
「どうして」
その眼は大きく開かれている。
驚いているのだ。
「今日はハロウィンなので、魔界と人間界の行き来がしやすくなります」
ベルゼブブは説明する。
「だから、召喚されなくても、ここに来ることができたんです」
そのうえ、ベルゼブブは今、結界の力のかかったペンギンのような姿ではなく、魔界にいるときと同じの人間に似た姿である。
「そうなんですか」
あっさりと佐隈は納得した。
この順応性の高さが彼女の良さである。もっとも、それは危険でもあるのだが。
しかし、ベルゼブブはそれについては触れず、別のことを口にする。
「さくまさん」
「はい」
「あなたの作ったカレーが食べたくなりました」
そうベルゼブブが告げると、佐隈はくすっと笑った。
「ハロウィンなのに、お菓子じゃなくて、カレーなんですか?」
「いいではありませんか。それぞれ好きなもので」
「それはそうですね」
佐隈は相づちを打ちながら身を退いた。
そうすることで、ベルゼブブの正面が空くことになる。
だから、ベルゼブブは部屋の中に足を踏み入れた。もちろん、魔界の紳士らしく、ちゃんと靴は脱いでベランダに置いておく。
ベルゼブブはガラス戸を閉め、鍵をかけた。さらに、カーテンも閉めておく。
そのあいだに佐隈は部屋を進んでいた。
カレーを用意するために台所に行くつもりなのだろう。
その佐隈の背中に、ベルゼブブは話しかける。
「こんなに簡単に男を部屋に入れてはいけませんよ」
自分は悪魔だが男であるのには変わりなく、そして、佐隈は契約者だが女であることには変わりない。
佐隈は歩く足を止めた。
だが、振り返らない。
「そんなことぐらい、わかってます」
ベルゼブブのほうを向かないまま、返事をする。
「私はベルゼブブさんだから部屋に入れたんです」
「……えっ」
つい、ベルゼブブは声をあげた。
驚いていた。
佐隈の言ったことの意味。
それは、つまり。
「……なんで、そこでベルゼブブさんが顔を赤くするんですか」
佐隈が振り返ってベルゼブブを見ている。
「私にも移っちゃったじゃないですか」
その顔は赤い。
自分の顔も、佐隈の言ったとおり、赤くなっているのだろう。
「本当に、これだからベルゼブブさんは……」
佐隈はベルゼブブから眼をそらし、困っているような少し怒っているような顔をしている。
照れくさいのだろう。
ベルゼブブは内心の動揺を静めてから、佐隈のほうへ近づいていく。
そして、そばまで行くと、手を伸ばした。
「カレーではないものが欲しくなりました」
ベルゼブブは佐隈に触れた。


とびきり甘いものを、いただきます。








作品名:ハロウィンつめあわせ 作家名:hujio