【どうぶつの森】さくら珈琲
41.トライアングル(とまとside)
肯定したら、あたしやヴィスくんの恋愛自体否定している気がした。
否定したら、ヴィスくんの片思いを応援することになる気がした。
どうしてかわからないけれど、言葉だけが勝手にあふれて。
「なんで? なんでさくらさんなの?」
あたしの方が、たくさん一緒に時間を過ごしたのに。ずっとずっと見ていたのに。
ずっとずっと大好きだったのに。
何がだめなの? 料理が下手だから? ドジだから? かわいくないから?
そこに理由なんてきっと存在しないはずなのに、誰が悪いわけじゃないのに、あたしは責めるように言い続けた。
「なんであきらめないの? ずっとヴィスくんの片思いなんだよ!? どうしてそれでもさくらさんが好きなの!!」
急に声を荒げるあたしに対しても、ヴィスくんはあたしに興味がないみたいに、表情を変えなくて。だからこそ余計に辛くて。
必死な自分がちっぽけに思えてきちゃって。あたしだけが舞い上がってたんだなって。
この恋に意味なんてなかったんだって。
泣くな、あたし。
「そうだよ。」
ヴィスくんはまた、繰り返した。
「さくらが僕じゃない人を見ていても、僕はそれでもあきらめられなかった。今も、多分これからも。」
でも、大事だから決して迷惑はかけないと。見守るだけの存在でありたいと。
それがどれだけ自分を傷つける結果であるとしても、ヴィスくんはそう言うんだ。
こんなに、さくらさんはヴィスくんに好きになってもらってるんだね。それって、ずるいよ。
だめだ、汚いあたしがもっと出てきてしまう。
さくらさんを憎んでしまいそうで、あたしは思わず逃げ出した。
久々に走ったから息が切れた。冬の空気が肺に流れ込んで、冷たくって。
そのまま家に飛び込み、心配して起きていたリクを無視してベッドにダイビングする。あまりにも速い動きで、リクも圧倒していた。
どうか夢でありますように、どうか嘘でありますように。
そう考えるだけ、無駄だ。この胸の痛みが、現実であることをいやってほど教えてくれている。
さくらさんが悪いんじゃない。
ヴィスくんが悪いんじゃない。
でも、でもあたしだって悪くないじゃないかあ……。
それぞれ勝手に恋してるだけ、なんでこんな単純なことがうまくいかないのさあ……。
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗