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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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Worst D × Best L

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 大体がもうおかしいというか、これはもう自分がめちゃくちゃになったっていうか、早恋なんてものに気づいてしまってからあいつの前ではすなおな態度がとれなくなっていた。あの悲劇を起こすとはね、俺も全く思って、いなかった。『世界』の破滅とかいうものはありの穴から始まるらしい。そうか、それなら俺は今どの辺に立っているのか。破滅した恒星に立っているのか、何とか食い止めようとする勢力に守られた恒星に立っているのか。全てを終わらしてしまいたかった。全部消えて無くなってしまえばいいと思っていた。いわゆる、中二病というやつだ。そうさ、あの日、あの場所で、あの少女は僕が手に持ったナイフに刺さっていた。その時ちょうどジャンバーを俺はきていて、それを後で燃えるゴミにして捨てた。親は俺の服なんて何にも知らないから、それだけでごまかすことができる。要は、共働きって言うやつだ。俺は自分で服を買っていて、夫婦は俺の服を全部確認したことはない。おかげであの日の事件は迷宮入りした。ナイフはもう捨ててしまった…というわけではない。埋めてあるのだ、山に。そこにあいつの血のついたナイフがある。そこに、その山の土に、その雫はしみ込んで、今あいつは…そうさ、あの山に魂をしみこませて。
 俺はあの日、彼女にとんでもないことを知らされてしまった。それは、俺がまだ中学生のガキだというのに、してしまった大いなる過ち。彼女の心と体をズタボロにした事実。もうすぐ他の人にばれてしまう。このままでは、俺とあいつの『リンク』した事情がすべて表にあらわになる。彼女はその事実から逃げることは許されない。胎動が聞こえる。動き出しているのだ。俺が、してしまった間違いは明らかに、そこに一つの生命体を形作っている。どうしたらよいだろうか。もはや焦っていた。彼女も俺も、互いに、この出来事には何もすることが考え付かなかった。極端な話、彼女が不衛生な生活をするならば、あるいは死んでいたのかもしれないが、当時そこまでの発想に至る知能をお互い持ち合わせていなかった。
 銀色の刃はそこにあるなによりも尊く見える。『世界』に罪の十字架を背負った生命体を生ませてはならない。ならばひと思いにつき殺してしまおうか。そう、俺は、彼女の体に深く、その歯を差し込み、彼女の顔が引きつるのを見ながら、深く入れ込んだ。彼女が声を出そうとする。その姿は痛々しく、夕日に照らされて一種のアートと化していた。垂れる血は二人の関係と、彼女の人格の崩壊を示していた。彼女が口に出して物事をついて言う。終わりなんだね。この、蝋燭は霧散したんだね。彼女はつづけて言う。クラムボンは死んだよ。俺はこたえる。クラムボンは笑ったよ。彼女はそれを聞くと、今まで見せたことのない笑みを見せた。私が壊れたら、私にキスをして。そして、私の残った「ココロ」をすべてそのまま、すいだして。そしてそのまま、倒れこんだ。彼女の何かが『崩壊』した。『世界』を、またひとかけら崩した。
 あの日から2年ほどたって彼女の遺体は発見された。それはもはやミイラと化していて、彼女だということはDNA鑑定をしなければわからないほどだった。服がなくなっていたらしい。おそらく、風化したか、そこら辺に落ちているのに気付かなかったか、誰か猟奇的な人がはいだのか、と思われる。俺はあいつを裸にはしていない。俺はあいつがせめて身につけていたかったろうものをはがすことはない。
 当然だが、腹部に眠る生命体も発見された。だがその時俺は高校生となっており、引っ越していて、もはや彼女の両親の頭の中から抜け落ちていた。そもそもこの付き合いはお互いの両親が共働きだったこともあり、ずっと秘密にしていたものだったし、周りで知る人もいなかった。ただ、恋愛はそもそも他人のまねごとなのかもしれない、なんて。知る人がいないのにみんなと同じようなことをやっているのだ、俺たちは。そういうことか。結局俺たちは何も特殊なことをしてないんだよ。もっとはっちゃけて暴走すればいいのにね。所詮中学生というものは親や先生にばれていない禁断の味が楽しみたいだけなんだろうね。そんなことであいつは俺のために犠牲になってくれた。
 俺は、成長して、一流とまではいかないが二流の大学を卒業した。そして、これもまた一流ではないが大手の会社に就職した。そして、平均よりは速いスピードで昇進した。そうやって、すべてのことをかき消すように、俺は人生を過ごした。だけど、俺は結婚しなかった。よその女に興味を感じなかった。彼女らはあいつとは違う。我が身かわいさの処世術の一環で俺を利用しているだけだ。それはよく見て取れた。だが、それでも気晴らしに逆利用させてもらうこともあった。それでもとても気にしやすいタイプで、その女たちに揺さぶられないか心配だった。結局結婚なんてものには縁がなく、39になってこのざまか、と自分を笑うしかなかった。やっぱり、俺はあいつしかいなかったんだ。あいつしか、俺の心をゆだねられるやつはいなかったんだ。何でもう少し待てなかったのだろう。そしたらあいつも死なず、ハッピーな夫婦になって、幸せな家庭を築くことができたはずなのに、それを十分理解できてなかった。そういう人間なのか、俺は。俺は結局『世界』に反旗を翻したためにさばかれているんだ。『世界』。強大な力をもった、『世界』。俺はその一部で、悪性新生物であった。それを取り除くための自然が持つ、自己治癒作用。神か仏か、姿も見えない、だがそこに存在している、科学では絶対に行きつかない、そのエリアに、それは確かに存在しているんだ。それこそがこの世の法則、自然は言うはずだ。「俺がルールブックだ」と。
 俺は会社をそれでも辞めなかった。せめて剤をためておかないと、父も母も心配するだろう。ありがとう、俺をこの世に生みだした大いなる母よ、父よ。せめてなんか美味い物食って死んでくれ。俺にはそれくらいしかできることはない。自分の幸せ?そんなもの、もう十分さ。俺は自分から幸せを捨ててしまった男なのだから。そこにある栄光を、奈落の闇に捨てた、そういうものなのだから。全ての心と体を打ち鳴らした。後はせめて、この『世界』に、罪滅ぼしをし続けるしか俺の生きるための目標はない。老いたらさっさと漂浪して死んでしまえばいいのさ、この身など、土にかえればそれでよい。
作品名:Worst D × Best L 作家名:フレンドボーイ42