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月の出を待って 前編

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 私は各国の文化や製品を世界各地へ知らせ、販売する会社の情報部門に勤めており、今は日本支社で仕事をしているが、本部はオーストリアにある。
会社は、キシリアやガルマの父であるデギン・ザビが会長を、長兄であるギレンが社長をしている親族会社なのだが、けっして独裁的な経営を行ってはおらず、広く優秀な人材を雇用し、長女であるキシリアでも世界各国へ飛ばされている位だ。
それなりに大手なので、収集する情報量は多岐にわたり多忙なのだが、現地での住居は高級物件を宛がわれるのが利点である。
故に私の日本での住まいは、タワーマンションと称され、専従のポーターや管理人が居るような高層マンションだ。
当然ペット可なので、アインを連れ帰るのに問題はなかった。

 私は点滴が終わるまでにホームセンターでペット用のトイレやベッド・クッションを購入し、20畳ある広いリビングの窓際にそれを置いた。

54階建ての最上階とその下をキシリアとガルマが住居スペースとして契約しており、私はその下の52階の半分のスペースを住居とした部屋を宛がわれている。
窓からの展望はなかなかのものだし、採光も十分で暖かい。
これならアインも気に入るはずだと私は思い、彼を引き取るべくガトーのもとへと戻った。

丁度よく点滴が終了していたが、アインはまだ目を覚ましていなかった。

「容態が悪いのかね?」

私は心配からガトーに問うと、彼は首を横に振った。

「点滴の中に安定剤を少量投入しておいた。移動中に暴れられると貴様が困るだろう?浦木を同乗させてこいつを自宅へ連れて行け」
「ガトー。こいつ、じゃない。アインだよ」
「アイン?」
「そう。彼の名前だ。初めての同居人だからね。一番目と言う意味でアインにした。そう呼んでくれたまえ」
「はっ!貴様、こいつにぞっこん惚れ込んでいるな」
「アインだ!」
「はいはい。アインね。で?準備は出来たのか?」
「ああ。トイレやベッドなんかをリビングに設置した」
「なんだって?!あのリビング…に、か?」
「うっそ〜〜。すっごい高待遇」
ガトーと浦木が揃って驚きの声を発した。

無理もない。
あのリビングの床は大理石が敷かれているし、スウェーデン製のソファーセットと大型のプラズマテレビにAVセットが置かれているのだから……。
だが、私はアインを最高の環境に置いてあげたかったのだ。だから何とも思わない。
しかし、次にガトーが告げた言葉に慌てた。

「あそこじゃアインの足が滑って余計にまずい事になるぞ。猫と違ってイヌ属の肉球は湿らないんだ。爪も立たない床では歩行が難しい。別の場所にするか何か敷かないと…な」
「そ、そうなのか」

私は舞い上がっていた分、ひどく落ち込んだ。
がっくりうな垂れる私に哀れみを感じたのだろう。

「ま、当分は歩くのは大変だろうからアインの行動範囲内だけ簡単な敷物をしておけば大丈夫だろう。その間に本格的に考えればいいさ。幸いとこういったペットグッズの本もある事だしな」

ガトーが慰めるように言って冊子を私の前に出してきた。
そこにはペットの洋服からリード、シートにフード、更にはオーナー用のグッズとペット用品全般が載っていた。
その中にコルクで出来たクッション材があり、イヌの足跡や小屋をプリントしたものもあった。

「ほぉ。こんなものもあるのか。可愛いな。これをリビング全体に敷き詰めれば良いか…」

私はつい独語的に言っていたのだが、ガトーと浦木が「「はぁ(いぃ)?!」」と揃って盛大に呆れた声を発し、

「貴様のインテリアにはどう考えてもこれは合わないだろうがっ!」
「もう少し普通の、無地で考えてみた方が…」
と反対されてしまった。

しかし、アインの為には…と私が言うと
「わかった!俺が業者に発注して届くようにしてやる。それまでは何でもいいから何か敷いとけ!」
と、ガトーに仕切られた。

「了解した。やはり持つべきものは親友だなぁと、今の私は軽く感動しているよ」
私は素直にそう言ったのだが、

「軽く、なのか……。貴様という奴は…」
と、余計にガトーに呆れさせただけだった。

2009/04/15
作品名:月の出を待って 前編 作家名:まお