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「好き」と「好き」

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五平がりんを嫁にもらいたいという。五平の祖父の周蔵から楓に話があった。五平がこの里へ来るたびにりんとよく一緒にいるところをみかけていたので、楓は話を聞いて、やはりな、と思った。しかし、問題は殺生丸だ。
楓は周蔵に言った。
「周蔵じい、りんは誠によい娘じゃが・・・。りんはもともと妖怪に連れられていた娘。そなたも知っておろう。犬妖怪の殺生丸が、りんの面倒をずっと見てきたのじゃ。この里に預けた後も、殺生丸は何かとりんの世話をしておる。そんな妖怪がつきまとっているような娘でも五平はかまわんといっているのか?」
「楓さま、それはわしも気になったんじゃ。じゃが、五平はそのことも承知の上じゃ。第一妖怪がいつまでも人の子の世話をみることはないじゃろう。殺生丸とやらはずいぶんりんのことを気にかけていると聞いたが、妖怪にも情があるのかのう。まあ、りんが嫁にいけば、もう世話をする必要はないと、近づかんだろう。妖怪は妖怪じゃからのう」
「・・・」楓は周蔵のいうことに素直に頷けなかった。

殺生丸とりんの間には、妖怪と人という異種であることが何ら障害になっていないようである。りんは親を亡くしてからずっと殺生丸が世話してきたからじゃろうか。殺生丸に対しても他の妖怪に対しても、怖がることをしない。りんが殺生丸を慕う様は、まるで・・・。

(そう、まるで愛しい男を慕うようじゃ・・・)

しかし、殺生丸がりんのことをどう思っているのかは、さっぱりわからなかった。

楓は周蔵に言った。
「とりあえず、りんの気持ちじゃな。りんにこの話をしてみよう。りんも年頃じゃ。もうそろそろ嫁入り先を探さなければと思っていたところじゃ」
「楓さま、よろしくお頼みします。五平がぜひに、といっておるのでな」
楓は自分たちが住む小屋に戻っていった。りんが小屋の前で柿を縄で結んでいる。干し柿を作っているのだ。
「りん」
「あ、楓おばあちゃん!お帰りなさい!」
「うむ。りん、話があるのじゃ」
楓はりんの横に座った。
「話?何の?」
「うむ・・・りん。お前も16じゃ。そろそろ嫁入り先を探さなくてはのう」
「え?りんの嫁入り先?」
「そうじゃ。もうこの里のお前と同じ年頃の娘は皆嫁にいったじゃろう。お前もそろそろ、な」
「・・・」
「りん、五平がな、お前を嫁にほしいそうじゃ」
「え!?」
「五平はいい子じゃ。どうじゃ?りん。お前さえよければ、私はこの話いい話じゃと思うぞ」
「楓おばあちゃん・・・」
りんはそれきり黙ってうつむいてしまった。
「りん?」
楓はりんの顔を覗き込んだ。
りんは楓の顔を見ようとしない。やがて、うつむいたまま言った。
「楓おばあちゃん、りんのこといろいろ心配してくれてありがとう。でも、私・・・五平のところへお嫁にはいけません」
「・・・いけぬか?」
「いけません。ごめんなさい」
楓はため息をついた。
「そうか・・・。やはり、殺生丸か?」
「え!?」
「殺生丸を好いとるのか?」
「あ・・・」
りんは頬を染めて、こくんとうなずいた。
「りん。そうではないかと思っておった。お前を見ていればな・・・しかし、殺生丸は妖怪じゃぞ?」
「わかっています。でも、殺生丸さまは殺生丸さまだから」
「しかし、殺生丸は人間を嫁にはとらんだろう」
「わかっています・・・りんも殺生丸さまのお嫁さんになれるなんて・・・そんなこと思っていません。それに、殺生丸さまは、りんのこと・・・そんな風には思っていないです、きっと・・・」
りんは切なげにため息をついた。
「殺生丸さまはいつもやさしい・・・。いろいろ気遣ってくれて・・・。でも・・・」
「りん・・・」
「でも、いいんです。りんは、殺生丸さまにあえるだけで。殺生丸さまのこと見ていられるだけで。」
「しかし、りん。ずっとこのまま嫁にいかんというのか?そういうわけにもいくまい?」
「どうして?りん、楓おばあちゃんのお手伝いします、ずっと。お嫁に行きたいなんて思わないです・・・」
「りん・・・」
楓はここまで思いつめているりんが不憫になった。

(桔梗お姉さまも、半妖の犬夜叉を愛した。犬夜叉の父母は妖怪と人間だったという。妖怪と人が添い遂げることも無理ではないじゃろうが・・・。相手があの殺生丸ではのう・・・)

殺生丸がりんを楓のもとに預けてから、足しげくりんのもとを訪れているのは知っているが、それは、父は子を心配するようなものかもしれない。父とはいわぬまでも、兄が幼い妹を世話するようなものではないだろうか。いや、そもそも殺生丸のような大妖怪にそのような人と同じ感情があるのだろうか・・・。

(ともかく、一度殺生丸に話さなければいかんな)

その機会は意外と早く来た。翌日殺生丸がりんのもとへ新しい着物を持ってやってきたのだ。ちょうどりんは川まで水汲みにいっていた。

「・・・」
殺生丸がりんの姿を探す。
「殺生丸。りんは水汲みじゃ。すぐ戻る。その前にお前に話がある」
殺生丸が楓に目を向ける。
「りんに嫁入りの話がある」
「・・・嫁?」
「りんももう16じゃ。すっかり娘らしくなった。りんをぜひ嫁にほしいといわれている。いい話じゃ。」
「・・・」
「お前からりんを預かったとき、りんが将来自分でどちらでも選べるようにと、お前いっておったな。そろそろ・・・りんに選ばせる頃ではないかな」
「・・・りんが嫁にいくといっておるのか?」
「りんはいかんといっておる。しかし、よい話じゃしのう。りんもいつまでも私の手伝いをしているわけにもいくまい。ずっとどこにも嫁にださんわけにもいくまい」
「・・・・」
ふと、殺生丸が顔を上げた。りんの匂いを感じ取ったのだ。
「りんの好きにしろ」
殺生丸はそういって、ふわっと空へ舞い上がった。


(嫁にいかせるな、とはいわなんだ。殺生丸のやつ、やはり何を考えているのか、さっぱりわからんわ)
楓はため息をついた。


川から戻ってきたりんは目の前に殺生丸が舞い降りたので、嬉しさで顔を輝かせた。
「殺生丸さま!」
「りん。変わりなかったか?」
「はい!」
殺生丸はりんを右手で抱き上げて空へ舞い上がった。

しばらく空を飛び、いつも二人で行く丘の上の大樹の下で舞い降りた。りんを腕に抱いたまま、樹の根元に腰を下ろす。
「りん・・・嫁入りの話があるときいた」
「え?あ・・・・楓おばあちゃんが?」
「お前は嫁にいかんといったそうだな」
「あ・・・はい・・・だって・・・」
(りんは、ずっと・・・ずっと殺生丸さまといっしょにいたい・・・・・)
りんは自分の気持ちをどう伝えたらよいかわからずうつむいていた。
(ずっと殺生丸さまといっしょにいたいなんていったら、殺生丸さまは迷惑だって思うかもしれない・・・。)

「りん」
「あ、はい、殺生丸さま」
「お前の好きにしろ。お前がそうできるよう、私はお前をこの里に預けたのだ」
「殺生丸さま・・・」
作品名:「好き」と「好き」 作家名:なつの