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沖神で「逃走ロマンティック」

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卒業式が終わった。

そしてみんなとわーわー騒いで。それで終わり。

解散したあとの静けさは、余計に寂しさを演出させる。

「んー、もう卒業したアルか・・・」

神楽は沖田に言った。

「何でィ急に」

それはこっちのセリフだ。もともと体育館裏に呼び出したのはそっちなのだ。

しかし、この心のポッカリ空いた感じを誰かに吐き出して、共感してもらいたい。

「みんなと会えなくなると思うと・・・寂しいアル」

「お前・・・。







俺に会えなくなるから寂しいのか(笑)」

「ぶっ潰す!!」

せっかくの雰囲気が台無しだった。

「でも否定はしねぇんだな」

「うぐっ」

沖田の言う通り、ちょっと寂しい。

「何ていうか・・・お前とは腐れ縁だったからナ。切っても切れないアル」

「腐れ縁、ねぇ・・・」

今更、自分が言ったことが恥ずかしくなってきた。気のせいか顔があつい。

「や、やっぱし今のは聞かなかったことにするべきアリュな!!〜〜っなしなし!!」

ここまで焦っているのに、笑いもせず沖田はじっ、と神楽をみていた。

「な、何か顔についてるアルか」

「俺―――」

沖田の口から、出された言葉。

「―――お前の事が、好きだ」

沖田の口から、出された言葉。

大事なことなので2回言いました。

「・・・へ?」

地の文で無茶苦茶になるくらい神楽は混乱していた。

「え、えーと・・・。友情的な意味で?」

いや、そもそもお前と私じゃ友情なんてモノはないアルよなー。と神楽は言葉を続けようとした。
だが、沖田の声にかき消される。

「愛情的な意味で」

ガーン、と頭が打ち付けられたような感覚。

そして、さっきとは別の意味で顔があつくなった。

(えー?えぇ?えぇぇぇぇえええ!?)

沖田に限って、そんなことあって良いのだろうか。いや無い。沖田が私に告白なんてするわけがない。

「だから、あれだ。・・・俺と付き合え」

しかし現実に沖田は目の前にいる。そしてはっきりと告白をした。

「・・・偉そうアルナ」

「あぁ?・・・別に良いだろ」

答えを、出さなければいけないのだろうか。

「いいわけないネ。大体お前・・・・・・告白しているアルよな?」

「あーはいはい俺の言い方が悪かった。・・・俺と付き合ってください」

今すぐ、答えを出さなければいけないのだろうか。

「な、なんで2回も告白するアルカ!?」

「お前がダメ出ししたから」

「なっ!?」

答えは、出ない。

私はこいつの事が好きなんだろうか?

そもそも、『好き』って何なんだろうか。

「・・・で、お前の答えは?」

「・・・っ」

神楽は混乱の中、答えを出そうとした。

しかし告白されたという羞恥と、答えを待たせているという罪悪感と、なかなか答えが出ない自分への苛立ちと、その他もろもろ。

それらが重なって、神楽は動き出していた。

「―――っ」

沖田から逃げるために。

走る。

「あっ!お前っ!」

沖田の声も聞かず。

逃走。

(あーもうっ。何アルか!)

自分が本当にしたいことは何なのかわからないまま、学校を抜ける。

(何でこんなにムカムカするネ!!)

桜並木を通り抜ける。

「まてやァァ!!おらァァァ!!」

「げっ」

後ろを振り返ると沖田が追いかけてきていた。

「うおおぉぉぉ!」

神楽は全力疾走する。

「てめっ!!どこまで走るつもりでィ!!」

「ちょっとそこまでェェ!」

「意味わかんねぇよ!!」

気がつくと沖田はすぐ後ろにいた。

神楽は意地になって走る。

「お、らぁっ!!」

「て、てめっ・・・」

神楽は楽しんでいた。

この状況に。

(え・・・。楽しい・・・?)

ついに沖田は神楽を追い越した。

「はぁ・・・。おま、っ。どんだけ、走るつもりだよ・・・」

「はぁっ・・・はっ・・・。・・・私の勝手ダロ・・・」

(信じられないアル・・・。何で『楽しい』だなんて・・・)

ますます、自分の事がわからなくなった。

(この場面で、何が楽しかったアルか・・・?)

ぐるぐると頭が回る。

(わからないネ・・・)

今すぐには、答えは出ない。

「沖田」

「何だよ」

「ごめん!もうちょっと!!」

そういうと神楽は走り出す。

「は?はァァァァ!?」

逃走。

逆走。

(急いで今出した答えは・・・違う気がするアル)