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ドラゴンクエスト・アナザー

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第三話 「存在理由」


 セーラが目を覚ましたとき、既に夜が明けていた。
日の光の下で見ると、改めて村の悲惨な状況が理解できた。
気がつくとマリアが泣いている。
「おじいさまが……村が……みんなが……」
セーラはマリアにかける言葉がなかった。

 しばらくしたのち、二人はカイとアレフを探した。
カイたちは放心状態で瓦礫の上に座っていた。
「カイ、アレフ」
「ああ……」
「あの、二人ともけがの具合はどうですか」
「セーラが手当してくれたんだな。ありがとう。けがは大丈夫だ」

 マリアは昨日の出来事をカイとアレフに話し始めたが途中で泣き出してしまい、後はセーラが説明した。
アレフがうなずく。
「やっぱりあいつは天空の剣を狙ってきたのか」
「でも本当にあったんだな、天空の剣」
「何のために持って行ったんでしょうね」
「わからんが、人間の利益になることでないことは明らかだ」

 しばらく考えていたカイがみんなにたずねた。
「なあ、これからどうする?」
「どうすると言われてもな」
「オレは奴らを追いかける。奴らを倒して天空の剣を取り戻す」
「一体どうやって奴を倒すつもりだ? 奴は強い。強すぎる」
「それなら希望はあるわ」
泣き止んだマリアが答えた。
「昨日セーラがすごかったの。誰も装備できなかった家宝の剣を装備できたし、その剣が光りだして攻撃はすべて会心の一撃。あいつ……バルガをあと一歩まで追い詰めたんだから」
「そうなのか? セーラ」
「はい。なぜ会心の一撃ばかりになったのかはわかりませんが……」
「よし、俺たちも旅に出て経験を積みながら敵討ちを目標にしよう!」
「あたしも行くわ」
「セーラはどうする?」
「私も一緒に行きたいと思います」
「それじゃ、用意をして出かけよう!」

 四人は旅の支度をしたあと、生き残った人々に別れを告げ旅に出かけた。
途中、キリキリバッタに出会った。
「それじゃ見せてもらおうか」
「任せてください」
セーラは家宝の剣を構え、キリキリバッタに切りかかった。
しかし当たらない。
そして家宝の剣も光っていない。
「……あれ?」
セーラの攻撃はことごとくはずれた。
見かねたアレフが、キリキリバッタを切り刻んだ。

「なぜかはわからんが、今のセーラにはその剣を使いこなせていないようだ。それでは
実戦に向かない。しばらくこれを使っていてくれ」
アレフはそういうと銅の剣を渡した。
「はい……」
セーラはすっかりしょげ返っている。
「変ね。昨日はあんなにすごかったのに」
マリアも首をひねった。

 四人はあたりでしばらく経験値稼ぎをすることにした。
セーラ以外の三人は順調にレベルが上がっていく。
だがセーラだけは、何度戦闘に勝利しようともレベルが上がることはなかった。
カイがアレフに声をひそめて話しかけた。
「マリアの言うセーラの力って本当だったのか?」
「わからん」
マリアがセーラをいたわる。
「セーラ、気にしないで。街に着いたら神父様に見てもらいましょう」
しかしセーラは、またしても落ち込んでしまうのであった。

 日が落ちてきたため、一行は近くの街ミラへと向かった。
ミラは中規模の街であったが、セーラたちには問題ない品ぞろえであった。
しかしどうやらこの先の崖が崩れて通れないらしい。
一行はしばらく滞在することにした。

 十分補給をし装備を買い替え、宿に行こうとするとセーラがいない。
「あら? セーラはどうしたの?」
「あそこで占い師に捕まっているな」

 そのころセーラは困っていた。
「あの、私お金持っていないんです」
「大丈夫じゃ、ただで占ってやるわい。お主の運気は何かこう……」
「セーラー! 宿に行くわよー!」
「はーい!」
しかしセーラは振り向いた時に黒い珠を落としてしまった。
すぐに拾い上げ、占い師に謝る。
「おじいさん、ごめんなさい。お友達が呼んでるからまたね」
「ああ、ちょっと待たんか! その珠は一体!」
「行ってしまったか。さてあやつは希望か絶望か……」

「セーラ、お風呂行く-?」
「んー、私なんか眠くなっちゃいました。お風呂後で入ります」
「そう? じゃ、あたし入ってきちゃうね」
マリアが部屋を出て行った後、いつしかセーラは眠りに落ちていった。
夢の中でセーラは魔物たちと戦っていた。
しかしどんなに切りつけようと、魔物たちを倒すことができない。
いやそれどころか、セーラが切りかかる度に魔物は分裂し増殖する。
とうとうあたりは、魔物だらけになってしまった。
「たっ助けっ!……あ、夢……」
少し落ち着いたセーラは、喉が乾いたので水を飲もうと部屋を出た。

 廊下に出ると、向かいの部屋から話し声が聞こえる。
「そんな簡単に切り捨てちゃかわいそうじゃない! もっと長い目で見てないと!」
「長い目っていつまでだよ! もしかしたらこのままずっとレベルアップしないかもしれないんだぞ!」
「落ち着け、カイ。神父も言われていたが、レベルアップに必要な経験値は得ている。だが何らかの原因でレベルアップができていないと」
「じゃあ、その原因とやらがわかるまでここにいるのか? オレはそんなのはごめんだ!」
「カイ! もう少しぐらい様子を見てあげてもいいじゃない!」
「だいたいおまえらも人がいいよな。マリアは何回ホイミをかけてやった? アレフは何度かばってやった? 弱い敵ならまだいいだろう。だけどこれから敵はどんどん強くなるんだぞ! 足手まといが一人いるだけですぐ全滅の危機にさらされる! はっきり言おう。セーラはこれから先の戦闘には耐えられない! 彼女はここに置いていくべきだ!」

 そのとき部屋のドアがバタンと閉じた。
「今のは……」
「まさかセーラ!?」
三人は部屋を飛び出した。
向うに、雨の中宿を飛び出していくセーラの姿が見えた。
急いで追いかけるが、既にセーラは街の外に出てしまっていた。

「追いかけなきゃ」
マリアはカイの方を向いてキッとにらんだ。
「セーラに何かあったら許さないから。アレフ、早く探しに行きましょ!」
「ああ。……カイ、おまえが一刻も早く親父さんの敵をとりたいというのはよくわかる。それは俺も同じだからだ。だが俺たちの中で一番心細い思いをしているのは誰だ? そこらへんをよく考えてみるんだな」
そういうとアレフはマリアと街を出て行った。