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漆黒と純白・5

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「え、先生、帰ってきてないノ?」

耀に提出する為の資料を片手に男性用スーツを着込んだ湾が部屋の入り口で驚いた表情で菊を見つめていた。

湾はこのファミリーの中で数少ない女性で、肉弾戦に優れている。
大男を軽々と投げ飛ばし、ダンベルは100キロは余裕で持ち上げてしまう。
湾自身男装が好きで女装した耀と潜入捜査を行う場合が多々ある。
その為湾も性別が不明で有名。
普段から長い髪の毛とエリザベータとお揃いの可愛いお花の髪飾りは欠かさず付けて女性意識はあるのだが、何故かその格好で普段は男性用の黒のスーツを着込む少し変わった女性だ。

耀と香が任務に出てからもう一日が経つ。
菊も遅いと机を指で叩いていた所であった。

「確かに、耀さんと香さんの腕前からすると遅すぎますね。相手は臓器売買の裏組織の雑魚なのに…。」

椅子を回して窓から外を眺める。
月が酷く美しい。
蝉が鳴くこの夜は恐ろしいほど静かである。
何か嫌な予感がするのは気のせいであって欲しいのだが。
椅子を回転させて未だ扉の前で資料片手にきちっと立っている湾へと体を向けた。

「湾さんの所に連絡は?」
「うぅん、きてないヨ。」

ふと菊は頬杖をついた。

『おかしい…耀さんが任務終了して連絡を寄越さないなんて。今までになかった。』
『まさか、殺されてしまうなんて事はないだろう。相手は臓器密売組織。しかも、もう消える寸前なのに…。』

はっと顔を上げた菊の目は動揺の色を隠せないでいた。
一つの考えが彼の頭を過ったのだ。
もしこの予想が当たっていたら耀と香が危ない!
菊は勢い良く椅子から立ち上がった。

「湾さん至急装備確認、今から出掛けますよ。念のためエリザベータさんも呼び出ししてくださいね!」
「は、はい!」

何かを察した湾は走って出て行った。
肩にホルダーを掛けて拳銃に弾を詰める。
刀を懐に仕舞う。
急がなければ手遅れになる可能性が高い!
菊は無線で勇洙に声をかけた。

任務失敗も、耀と香を失うのもどうにか避けなければならないのだから。

「至急、ヘリの用意、急いで!!」


*****


人通りが少ないあちこちに腐ったゴミが捨てられたフェンスがずっと先まで張られているコンテナ置き場に革靴の音が多数響き渡っていた。
色も形もとりどりのコンテナが高く積み上げられていれば低く積んであるものもある。
まるで山脈のようなそこには男たちの荒い息が遠くからでも十分に確認できた。
何かに怯えて逃げ惑っている。
コンテナを上手く使い、右へ曲がったり左へ曲がったりとまるで迷路を適当に走り回っているようだった。
パスンと軽い音が響き、男が一人胸を撃たれてその場に倒れた。

「ひ、ひぃ、もう、助けてくれ!!」

走るのに無我夢中になっていた男たちは後ろを振り返りハンドガンでおもむろに震える手で弾を乱射した。
しかし弾はほぼコンテナに当たり、誰に向かって撃っているのかわからない。
弾が無くなると男たちは悲鳴を上げてハンドガンを捨ててまた後ろを向いて走り出した。

パスン、また男が一人倒れた。

「や、止めろ!止めてくれー!」

残りはグレーのよれよれのスーツを着崩した男のみ。
脚が震えて荒く息切れした男は足取り悪く走り出した。
その走る男の前に一人の人間が空から降ってきた。
華麗に着地すると此方に拳銃を向けた。
男の顔が青くなる。
拳銃を向ける者は前を開けた黒のスーツと黒のスラックスに女性的な顔、そして長い髪は肩に凪がしていた。
この美人から物凄い殺気を感じた男は回れ右をして逃げようとしたが後ろにもショットガンを此方に向けた男が居たのだ。
同じ様に黒のスーツを着込んだ彼も整った顔立ちをしている。

男の両サイドは高く積み上げられたコンテナに道を遮られていた。

「ゆ、許してくれ…。お、お前ら、一体、なん、なんなんだ!」
「てめぇなんぞに話す事は何もねぇある。」

長い髪の人間は言った。
男は両腕を横に上げる。
恐怖で顔がひきつって震えている。

「お願いだ、見逃してくれ、お、俺には、女房と、ま、まだ幼い息子が、」
「そんな仕事やってて家庭作るなんてスッゲー馬鹿的な?」

前では拳銃の安全装置を外し、後ろではショットガンを構え直す。
もう終わりだ。
男が固く眼を瞑った瞬間だった。


「おっと、そこまでだ。」


第三者の声が静かなそこに響いた。

「……お前、は“アッシュローズ”。」
「久しぶりだな、“緋舞”。いや…王耀?」
「――っ!?」

こいつに拳銃を突き付けられるのはこれで二度目になる。
男に拳銃を向けていた耀の後頭部に先程の声の主が銃口を向けていた。
今更振り向く事など出来ない。
そして声と煙草と薔薇の匂いからしてこいつは今一番逢いたくて逢いたくない“アッシュローズ”だ。
ショットガンを構えていた香は急な事に驚いたが動揺せずに標準を“アッシュローズ”に捉えた。

「“馨”、早くその男を殺すある。我の事は放っておくよろし。」
「“馨”、か?わかってるよな、その男を撃てば耀は死ぬぞ。」
「我の名前は耀では無いある。」
「言い逃れなんて出来ねぇよ。」
「チッ、一体どこで…。」
「………。」

香は戸惑っていた。

任務に失敗すれば組織的にも不味い。
しかし大切な耀の命には変えられない。
例え耀が助かっても怒られるだろう。
どちらを撃てば…。
迷ってはいるが身体は“アッシュローズ”を捉えたまま動かない。
香はショットガンの引き金に指を掛けた。

「…先生が死ぬとボスに怒られる的な?それにもう任務失敗したッス。」
「ほう、なかなか賢い部下だな。」
「…餓鬼。」

会話を続けている隙に男は逃げたらしく、香と耀の間には大きな隙間が出来た。
耀は構えていた拳銃を下ろした。
耀は香を睨んだが香は其より相手に弾を当てるのに集中していた。
“アッシュローズ”は耀の背後に居るため、的が小さい。
素早く耀が避けてくれたら都合が良いが此方から合図をすると“アッシュローズ”には完璧にバレてしまう。
とんだ間抜けをした。

「取り敢えず逃げますか先生。」
「へぇ、追いかけっこは得意か?」
「大嫌い、ある!!」

耀は背後の“アッシュローズ”の肩に手を置いてそのまま踏み込むと彼の上で一回転し、“アッシュローズ”の背後に着地した。
香はショットガンを一発“アッシュローズ”に向かって撃ったが軽々かわされた。
耀はそのまま“アッシュローズ”に背を向けたまま走り出した。
香もコンテナに乗り上げて猿の様にコンテナの上を耀と同じ方向に走り出した。
“アッシュローズ”はにやりと厭らしく笑うと二人に向かって走り出した。



(続)
作品名:漆黒と純白・5 作家名:菊 光耀