隣人部「学園都市?」 または、とある世界のはがない
真の能力
もはや全員が倒れ、傷一つないのはもはや俺だけだ。
しかし、もう俺も恐怖でガタガタと震えるばかりで、指一本も動かせない。
この時ほど、俺が見た目ばかりでレベル0で何も出来ない男だというのが
物凄く許せなかった。目の前の男よりも自分に腹が立っていた。
「フッフッフ、貴様だけが残ったが・・・
そうか、食蜂の話だと、貴様はレベル0のクズだったな。
まあ、せいぜい小便を垂らしながらこれから俺が帝都を破壊する様を
見届ける事だな」
男は、悠然と理科を抱えながら穴の方に向かって歩く。
と、男のコートを引っぱるものがあるのに気付いた。
「クッ・・・上条め。ゴキブリのようにしぶとい奴よ」
「て、てめえ一人の欲望のために・・・
学園都市を破壊させてなるものかよ!」
そう叫ぶと上条は、男のまとっているマントを一気に引きはがし
男の手から手袋を引き毟った。
「ぐぁっ!貴様!何をする!!!」
上条はマントや手袋を手元に寄せながら再び地面に倒れ込み、叫ぶ。
「今だ! 小 鷹 !!!」
俺は、はっとして我に返る。
そして、無我夢中でそこらにあった石を右手に持って、投げた。
いや、投げるつもりで手を放ったのだ。
左手を、折り重なる星奈と小鳩の身体に触れながら。
ドーーーーーーン!!!!!
何故か俺の真ん前が炎で一杯になり、それは竜巻のようになって
男の方へ真っ直ぐに襲った。
「グアァアアアアアアアア!!!」
男はたちまちにして火だるまになり、穴に向かって転がり落ちて行った。
「・・・ふぇ?」
俺は、右手をじっと見つめた。
なんて事の無い、普通の手だ。
しかし、その手から今、炎の竜巻が吹き出なかったか!?
そいつはまるで、星奈の旋風操作と小鳩の色火創出を掛け合わせたような・・・
そういえば、その時俺の左手は星奈と小鳩に触っていたが・・・
「ははぁーん、それが鷹やんの真の能力ってやつだにゃー」
土御門がようやく起き上がりながら言う。
「鷹やんの能力は、多分鷹やん自体では完結しないんだにゃー。
見るからに、鷹やんが誰か別の能力者に触っている時にのみ
その能力者の能力を借りて発動させる事が出来るみたいだぜよ」
「な、何だって・・・?
・・・もう一回試しても良いかな?」
「にゃ。人が居ないとこにむけるんだにゃー」
土御門の言う通りに誰もいない方に向けてもう一度
片手を二人の身体に触りながらもう片手で放り投げる仕草をすると
再び巨大な炎の竜巻が俺の手から吹き出した。
「ぅお!うおおおおお!!!や、やったぜ俺!!!」
「ほーほーほー・・・つまりだにゃー、
片方の手で複数の能力者に触っている場合は
その能力がミックスされて放出出来るんだにゃー。
まあ詳細は学園都市に戻ってからじっくり調べると良いぜよ」
マジかよ・・・やっぱり俺にも能力があるって事か!
くぅ~、今まで自身を信じてきて良かったぜ・・・
と、こんな事してる場合じゃなかった!
俺達はすぐに上条の所に駆け寄り
傷だらけの上条と、気絶したままの理科を介抱した。
「大丈夫か?上やん」土御門が支えながら上条を起こした。
「ああ・・・何とかな」
「だけどよ、どうして俺の能力が上条に分ったんだ?」
「え?何だ?羽瀬川、お前能力なんてあったのか?」
「・・・はい?」
「いやー上条さんはとりあえず石でも木の棒でも良いから
何か投げて欲しいなーと思っていたトコロなんでございましたよ!
そんで男にスキが生まれれば、どうにかして俺の手でそげぶ!ってね?」
「「・・・」」
上条・・・行き当たりばったりにも程があるな・・・恐ろしい奴だ。
「しっかし強え男だったな・・・ひょっとしたらまだ」
「おい!穴の中が・・・!」上条の声を遮るように土御門が叫んだ。
穴の中を覗くと、ほのかに青い光が穴の底を満たしつつある。
「クソっ・・・しぶとい野郎だぜよ」
穴の底では、男が何か呪文のようなものを唱えていて
呪文が一区切り付く毎に光が増しているようだ。
「クックック・・・まだだ、まだやれるぞ。
かくなる上は私の身体を直接媒介させて召還してやる・・・!
作品名:隣人部「学園都市?」 または、とある世界のはがない 作家名:航宙市民