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ゆらのと

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「銀時?」
力が抜けた。
胸の中で溢れ出そうになっていた激しい想いは静まり、代わりにむなしさを感じた。
身体を起こす。
「明日、話し合うほどのことじゃねーよ。せっかく落ち着いたんだ。よそに行く必要はねェ」
そっけなく告げた。
「そうか。なら、いいんだが」
納得する桂の身体の上から、自分の身体を退ける。
桂は上体を起こした。
「……銀時、大丈夫か?」
心配そうに声をかけてくる。
疲れているのだろうと本気で思っているのだ。
イラ立ちを覚えた。
しかし、それをぶつけるわけにはいかない。
顔を背ける。
視線の先が、たまたま、文机の上で止まった。
書物が開いた状態で置いてある。
「なに読んでたんだ」
話題を変えたくて、たいして興味のないことを口にした。
「ああ、それか。葉隠だ」
そう桂が答えるのを聞きながら、書物に書かれていることをざっと読む。
「……くだらねェ」
「くだらなくなんかない。葉隠は松陽先生も好んでよく読まれていた」
「松陽が好きだったからっていいもんだとは限らねーよ」
畳を蹴って立ちあがった。
直後、桂が聞いてくる。
「どこに行くんだ?」
「厠だ」
短く答え、部屋を出た。
廊下を歩いて、やがて玄関に着き、そして、外に出た。
墨を溶かしたような空に、白銀の丸い月が泳いでいる。
その下を歩き、ふと、さっき眼にした書物に書いてあった和歌が頭に浮かんだ。


恋死なんのちの煙にそれと知れ
ついにもらさぬ中の思ひを

恋焦がれて死んでいこう。
最後まで告げなかったこの胸の中の想いは、私の亡骸を焼いた煙で知ってください。


「……くだらねェ」
ぼそっとつぶやいた。











作品名:ゆらのと 作家名:hujio