二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゆらのと

INDEX|29ページ/373ページ|

次のページ前のページ
 

そして、今、桜並木の道を、神楽を背負い、新八と肩をならべて歩いている。
紅葉の季節で、桜の葉は橙や赤に色づいてる。
吹く風は冷たく、銀時の洋装の上に片袖脱ぎに着た白地に青い紋様の入ったきものの袖をはたりと揺らす。
腰には真剣ではなく木刀を差している。
ふと。
もうなにも背負わないと決めたのに。
そう思った。
なにもかもを失った気がして、もう自分にはなにも背負えないと、なにも護れないと、絶望したときのことを思い出した。
過去の記憶がよみがえる。
同じ場所で同じ時を過ごし互いに認め合った仲間たちが傷ついた無残な姿で大地に転がっている光景が、脳裏にカッと光が差すように浮かんできた。
どうして。
そんなことを考えてもしかたがない。
自分に彼らを護るだけの力がなかっただけだ。
それを今さら悔いてどうなる。
彼らがこの世に帰ってくるわけでもないのに。
思い出すな、暗黒に引きずりこまれそうになるから。
そう思うのに、また思い出す。
今度は、自分が背負われたときのことを。
幼いころのことだ。
捨てられて、生まれ故郷を離れ、さまよっていたときに、拾われた。
生まれて初めて、微笑みかけられ、優しい声をかけられ、そして、背負われた。
松陽。
思い出すな。
自分にそう言い聞かせる。
思い出せば、憎しみが、松陽を死なせた者たちへの憎しみまで思い出す。
心の奥底にしまいこんでいる、しまいこんでいるだけにしかすぎない、激しくて醜い感情が引きずり出されてしまうだろうから。
「銀さん」
新八に名前を呼ばれて、ハッと我に返る。
「どうかしたんですか?」
足が止まっていた。
二階家の二階へと続く階段が眼のまえにあった。
「なんでもねーよ」
銀時は階段をのぼり始めた。
この二階家の二階に万事屋がある。
一階では大家のお登勢がスナックをやっている。
お登勢は顔にいくつか皺が刻まれているが、粋な雰囲気の漂う女である。
何年かまえの雪の降った日、墓石に背を預けるように座っていた銀時と、その墓に参りにきて出会った。
妙な縁だ。
銀時は神楽を背負ったまま階段をのぼる。
その途中で、万事屋の玄関のまえによく知る相手がいることに気づいた。
長い黒髪に、整った顔立ち。
桂だ。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio