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ゆらのと

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第二部 三、


朝のうちは空一面が重たげな雲で覆われていたのが、昼まえから雲が切れるようになり、今では淡い水色の空が大きく広がる中に薄い雲が所々に浮かんでいる。
かぶき町でもその手の店が多い界隈ではなく、住宅の多いあたりの道を、銀時は歩いていた。
その銀時の横を少年がふたり駆け抜ける。
「ホラ、早く来いよ!」
そのうちのひとりが振り返り、笑って言った。
「ええー、待ってよー!」
先を行くふたりよりも小柄な少年が弱っているような表情をしつつ足をもつれさせそうになりながら前方から走ってきて、やがて銀時の横を通り過ぎていった。
銀時はそのまま歩き続ける。
面識はなくて興味もたいしてないが、あの三人がいくつぐらいかをなんとなく考えた。
おそらく自分と桂が出会ったばかりぐらいの歳だろう。
自分があの歳のころ、あんなに無邪気だっただろうか。
いや、そんなことはないだろうと、すぐに否定する。
親に捨てられて、生まれ故郷をあとにして、争いごとのあとを亡骸の転がっている現場を漁って生きていたのは、桂と出会うまえだ。
無邪気ではいられなかった。
だが、それでも今と比べたらまだ無邪気だったような気もする。
そんなたわいのないことを考えながら歩いていて、何気なく向けた視線の先に花があった。
門の近くに樹が植えられていて、その枝に花をいくつか咲かせている。
幾重にも花びらをつけ、濃い緑色の葉の上でふわりと咲き誇っている。
花びらの色は純白、そしてそこに艶やかな薄紅色が少し混じっている。
サザンカだ。
樹の下の地面には花びらが何枚も重なって落ちている。
これから会うつもりの相手のことを思い出した。
昨夜の桂の姿が頭に浮かんでいた。
行為のあと、ぐったりと身を横たえていた。
長い黒髪は布団の上で乱れ、下半身は銀時の放った精と桂本人の流した血で汚れていた。
男とするのは初めてだと言っていた。
それは間違いないことだろうとは思った。
しかし、あのとき、本当に初めてだったんだなと痛感した。
咲き誇る花を落として、その花びらを地上に散らしたのは、自分だ。
サザンカの咲く門を通りすぎる。
しばらくして、桂の家の門が見えてきた。
昨夜に訪れ、今朝に出た門である。
そのまえまで行くと、いったん立ち止まった。
どうするか一瞬考えて、それからふたたび歩きだして玄関のほうへ進む。
玄関の戸のまえで足を止め、ガンガンガンと叩いた。
そして、家の中に呼びかける。
中から応える声はない。
だが、それでも待っていると、中から足音が聞こえてきた。
やがて、玄関の戸が開けられる。
敷居の向こうにいるのは、もちろん桂だ。
「どうしておまえは呼び鈴を鳴らさないんだ」
「めんどくせェんだよ」
「戸を打ち鳴らされると、うるさくて、近所迷惑だ」
なら、合鍵をくれ。
そう思ったが、言わず、敷居のほうに足を踏み出した。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio