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ゆらのと

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桂は視線を落としてその足を見て、身を退いた。
敷居をまたぎ、家の中に入る。
銀時は格子戸を閉め、先に廊下のほうへ行った桂をゆっくりと追いかけた。
ふたり、肩を並べて廊下を歩く。
チラと桂の横顔を見る。
堅い表情だ。
いつものことである。
いや、いつも以上に堅い気がする。
気にしすぎかもしれない。
にっこり笑って出迎えてほしいとは思わないが、もう少しやわらかな表情をしてくれれば安心できるのにと思う。
「身体、大丈夫か」
ボソッと聞いてみた。
桂の表情がますます堅くなる。
「……大丈夫だ」
素っ気ない声が返ってきた。
そのことについてはあまり触れられたくないといった様子だ。
気分が沈んでいるようにも見える。
自分とは正反対だ。
今朝この家を出てからふたたびこうしてここに来るまで、ここで一晩すごしたことを何度も思い出し、会いたくて、会いたくて、会いたくてたまらなくなった。
だから時間を見つけてこうして会いにきたのに、その相手は浮かない顔をしている。
焦れた。
腕をあげ、桂の肩をつかむ。
桂は少し息を呑み、顔をこちらに向けた。
明らかに緊張している。
その顔をじっと見て、言う。
「新八と神楽に会いに行った」
切れ長の涼しげな眼が大きく開かれる。
その唇が動く。
「それで」
続きをうながした。
「会って、謝った。解雇を取り消すって言った」
真剣な眼差しがひたとこちらを見据えている。
それでどうなったのかと無言で問いかけているように見える。
「アイツら喜んでた。じゃあ今から出勤しますって新八が言って、神楽には実力行使みてェに腕引っ張られて、万事屋に帰った」
頭に新八と神楽の姿が浮かんだ。
あのとき、ふたりとも本当に嬉しそうだった。
弾むような足取りで新八の家から万事屋までの道を歩いていた。
自分は新八と神楽にひどい言葉を投げつけたはずだが、ふたりともそんなことはすっかり忘れてしまっている様子だった。
その横にいて、その様子を見て、心が少し浮いた気がした。
認めるのは照れくさいが、自分も嬉しかったのだろうと思う。
作品名:ゆらのと 作家名:hujio