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【C83サンプル】エチュードを一緒に

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オムライス!



その日の食堂は少し込み合っていた。四人が一番お気に入りの場所は空いていなかった。結局三番目ぐらいに気に入っている場所があいていたので、まどか達四人はそこで昼食をとることにした。お弁当組のまどかと仁美が席を取っている間に残りの二人が列に並ぶ。ほむらは今日はどうしても食べたいメニューがあると言って果敢にも長い列に挑戦しに行ってる。さやかの今日のチョイスはかつとじ定食。ほむらが戻ってくるまでの取り留めのない話題は何となく先ほどの授業の話になっていた。
「さっきの授業中、まどかったらなんかぼーっとしてたでしょ?」
さやかは笑いながら聞く。まどかは恥ずかしくなってうつむいていた。
「珍しくまどかが指名を無視しているからさ。何事って思って。振り向いたらなんか口を半開きにして遠い目をしてるし……」
まどかはガバっと顔を起こした。驚きと恥ずかしさで赤くなった頬を手で隠している。
「え?私そんな顔を!」
思えばテレパシーを使っているときの顔を鏡に映して確認をしたりは当然していないわけで。これまでは会話相手もマミさんしかいないから、まさか授業中に送るわけにも行かないし……。つまりそう言うときの表情を客観的に観察されるのは今回がはじめてだということで。でもそんなひどい顔を……。ほむらちゃんは何も変わらない様子で会話してきてたのに。これが経験の差っていう奴なのかな……。
「まどかさんさっきはどうしたんですか?」
仁美の問いをどうごまかそうかとまどかが考え始めたとき、ほむらがテーブルに戻ってきた。ものすごくテンションの上がったうれしそうな声でだ。
「お待たせしました!これデミオムライスです!すごくないですか!」
ほむらがテーブルにおいたトレイには学食には似つかわしくない本格的なオムライスとこれまた大きめのサラダ、そしてスープが乗っていた。
うちの学食は教職員も利用するから、こういう本格的なメニューが一日に一つか二つ出る。たまに有名なお店が出張してくれることさえある。そう言うときはお値段も学生が買うには結構高く設定はされるけど、別に教職員しか頼んではいけないのではなかった。だから奮発して注文する生徒がそれなりにいるのだ。
ほむらの持ってきたオムライスは一番上に半月上のタマゴが載って、その下にドーム状のライスが乗っている。ライス部分も単なる炒めご飯ではない、ちゃんと炊き込んで作ったチキンピラフだ。周囲に添えられたデミハッシュがかぐわしい。
「すごい……」
「学食レベルじゃないね、これは」
「あのお店で出るものと大きく変わらない出来ですね」
三者三様の感想を聞いてほむらは得意げな表情をした。
「じゃあ行きますよ」
仁美以外は何がどう行くのかよくわかっていないのだろう。不思議な顔をしている。仁美はとても楽しみそうな顔でほむらの手元を見つめている。
ほむらはナイフを手に取りオムレツの真ん中に切れ目を入れ切り裂いた。とたんに中に詰まっていた半熟卵と半分溶けた小さめのキューブチーズがピラフの上に覆い被さって行く。
まどかは息をのんで止まっている。さやかは思わず声に出して感心している。仁美は驚いてこそはいないけれどきれいに完成したデミオムライスに素直に感心している。
「思った以上においしそうです!今週の予算半分使った甲斐がありました!」
「え?半分使っちゃったのほむらちゃん」
笑顔で何気なく答えたほむらの顔を心配そうにまどかが見る。
「うん。明日から金曜日までは野菜カレーだよ。二五〇円」
「うわそれはそれで厳しいな」
確かに学食のカレーは美味しくて安いけど、毎日それだけというのも大変だ。
「でも私オムライスに目がなくて。我慢できずに頼んじゃいました!」
ほむらは周りの動揺に気がつかないようにマイペースな口調で嬉しそうに答える。
「確かにあの店の味が食べられるならこの価格はむしろ安いですよね」
仁美はお弁当を広げながらそうフォローした。まどかもあわててお弁当を広げる。
まどかはほむらちゃんが楽しそうならそれでいいや、そう思った。そう思ったとたんなんだか目の前のオムライスが食べてみたくなった。
「ねえほむらちゃん。一口食べさせてもらってもいいかなあ?」
「いいですよ。たこさんウィンナーとトレードです」
「え?うーん」
「そこで悩むなよ……。わたしも一口ちょうだい。プチトマトとトレード希望!」
無理難題をふっかけられたように手を組んで悩んでいるまどかに軽く引きながら、さやかも交換交渉を始めた。でも交渉条件がちょっとフェアで無いのを仁美に指摘される。
「それはさやかさんの苦手なものではありませんか」
「えへへばれたか」
舌を出しておどけるさやかを見て、ほむらは微笑みながら答えた。
「私プチトマト好きですからいいですよ。一口お裾分けです」
そう言ってさやかにスプーンの差し出す。ひょいっと口に入れて幸せな表情でとろけているさやかを横目にまどかがほむらに話しかける。
「あ、わたしもプチトマト好き!うちのはパパが家庭菜園で育ててるんだよ!」
「あら。まどかさんのおとうさんは多才でいらっしゃいますわね。プチトマトって育てるの大変だそうですよ……」
「え?そうなんだ」
そんな会話をわいわいしつつ四人は昼食をそして食後のおしゃべりを楽しんだ。まどかの様子がおかしかったことは、もうみんなの中から消え去っていた。

【続きは頒布版にて】
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