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新生勇者戦記ブレイヴサーガ・ディザスター 第92話

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  第92話 「ココロに癒しを・・・」


  あの事件より数日。遂に学園祭が二日後に控える。だが、ブラックノワールが引き起こし
た事件は、数人のメンタルを蝕む結果となった。

  澪もロミジュリの練習に励もうとするが、どうもおぼつかない様子だった。無理も無い。

  澪 「・・・・傷ついた人を笑う人間は、傷ついたことの無い人間だ!!笑いたければ・
・・・笑え・・・・っっ。」

  セリフの意味の中にもこの前のビジョンがリンクしてしまう。自らが受けた心の痛み。

  澪 「・・・・・っっ!!」

  今日の練習は集大成の状態と言っても過言ではない。一緒に練習していた律は、ただなら
ぬ澪の状態を見抜いていた。

  律 「おいおい・・・・ずっと今まで練習してきただろ?ここ数日なんか調子がおかしい
ぞー??」

  澪 「ぅぅっ・・・!!!」

  律は長年の親友だけあって、今現在、澪の中で何かが彼女をぎこちなくさせているのがわ
かったのだ。律は台本を肩でぽんぽんしながら言う。

  律 「絶対なんかあるよなー・・・・?だって、ついこの前は一通り出来てきてたじゃん
!だいぶ時間はかかってたけどさー。部活だってなんかいつもと調子が違うしさー。」

  澪 「う、うん・・・・けど・・・なにも・・・ない。」

  遭った事件が事件なだけに、親友である律でさえも告白できないでいた。無論、さわ子も
知らされた事件の報告から彼女達のことを考慮して、学校への報告はしていなかった。

  紬もシナリオ監督の務めに十分徹し切れていない。

  クラスの女子 「ねぇ、琴吹さん?ここのところのセリフの演技の仕方もう一度確認した
いんだけど・・・・・・・ねぇ、琴吹さん??」

  紬 「・・・・・。」

  深刻な表情のまま、質問の返答が返ってこない。心ここにあらずと言った状況だ。クラス
の女子は瞬きを何度も繰り返し、彼女の目の前で手を上下に振る。

  クラスの女子 「琴吹さーん??」

  紬 「・・・・はっ!!あ、ご、ごめんなさい、考え事しちゃって・・・何のことだった
かしら??」

  そんな紬にも律は顔をかしげる。ほとんど同じタイミングで様子が変になってきたからで
ある。

  律 「うーん・・・・そういえばムギも様子が変だよなー?ひょっとして二人とも同時に
なんかあったのかー?!」

  澪 「っ!!!た、たまたまじゃないか?!ほら、もう後残り少ないし!!ムギも緊張し
てるんだっ。私だって、あと少しって思い始めたら急に緊張しちゃってさ・・・!!」

  律 「・・・・・あやしい・・・・ま、まさかっ・・・お前ら・・・・!!!」

  澪 「―――っ!!!」

  澪はある意味の戦慄を覚えた。親友の律の事だ。結局はこの事件のことは隠し切れないの
だ。そう思った澪だったが・・・。

  律 「同性愛を始めたのかっっ―――!!?」

  一気に珍妙な事を言い放った律にガクッとなる。彼女のぎこちないやり取りを見ていたさ
わ子は、やりきれない想いでいた。

  さわ子 (無理も無いわね・・・・ふぅ・・・でも、普通ならとても学校に来れない。あ
の子達は、想像以上に無理をしているわ・・・。)

  いずれにせよこのままでは学園祭に支障をきたしたままだ。かといって時間も無い。さわ
子は放課後に今一度彼女達と話す場を作った。

  音楽準備室。さわ子と澪、紬が向き合う。さわ子は無理をさせない方向で意見を出す。も
ちろん、そうすれば劇や部活に影響は避けられない。増してや彼女達にとっては最後の学園祭
なのだ。

  さわ子も苦肉な意見を提示する。

  さわ子 「今のあなたちを見てると・・・とても苦しくなる。本当に無理なら、無理をさ
せずに自宅で落ち着くまで休ませてあげたい。私としてはね。澪ちゃんとムギちゃんがそれで
も劇と部活を貫き通すっていうのなら、その意見を尊重するわ・・・。今一度、あなた達の意
見を再確認したいの。」

  澪 「確かに・・・正直、普通に振舞っている事自体がキツイです。でも、私達が辞退し
ちゃったら、劇やライヴに影響が出る・・・!」

  紬 「確かに今は苦しいです・・・・でも、最後だからやっぱり務め切りたいっ!!最後
までやらせてください!!!」

  案の定、彼女達は自分の身を後回しに、クラスのみんな、部活の仲間の為を想った意見を
出した。もちろん、さわ子も十分にその気持ちを再確認し受け止める。

  さわ子 「・・・・・そう・・・わかったわ。それが今のあなた達の気持ちね。」

  付け加えて、紬はもう一つの意見を出す。

  紬 「あと・・・この事、さわ子先生はみんなに内緒にしてくれていますけど、せめて仲
間のみんなには知っておいてもらいたいんですっ!!!きっとみんなショックを受ける。けど
コソコソ隠しているほうがもっと嫌なんです!!!」

  さわ子 「ムギちゃん・・・!!」

  澪 「っ・・・・・ムギ・・・!!」

  澪はこの紬の言葉に、はっとなるモノを覚えた。むしろ自分は逆に言いたくない、言えな
い状態にあった。だが、紬はその逆であった。仲間だから故に知っていて欲しい。痛みをみん
なで分かち合いたいと考えていた。

  澪は紬の意見に洗われて、正直な気持ちを表す。もちろん律に本当のことを言いたいとい
う気持ちだ。

  澪 「・・・・私も、律にこのことが言えない、言いたくない自分がもどかしかった。な
んで言えないんだろうって・・・でも、今のムギの言葉で吹っ切れた。私も、みんなに本当の
ことを言いたい・・・!!」

  この意見にさわ子は改めて彼女達の心の強かさを見た。思わず二人に腕を回して抱きしめ
た。さわ子の突然の抱擁に少し驚いた様子だ。

  澪&紬 「え・・・?!」

  さわ子 「・・・・私だったらとてもそうはなれない・・・きっと引きこもってる。それ
に比べ、あなた達はそういう意志をもちながら他が為を想う強さがある。立派よ・・・。」

  さわ子は抱擁しながら、もう一人心に傷を負った人を想う。恋人である要だった。自らの
判断で出撃し、その際に駆り出したSWAT隊に殉職者を出させてしまったのだ。

  ボロボロの状態で要は遺族達の家に謝罪して回る。無論、帰ってくるのは罵倒や非難がほ
とんど。それでも謝罪を続ける。

  要 「この度は、ご家族の皆様にこの上ない悲しみを与えてしまい、申し訳ありませんで
したっっ・・・!!!全ての責任は協力を要請し、駆り出した自分にありますっっ!!!本当
に申し訳・・・!!!」

  殉職者の妻 「謝っても主人は帰ってきませんので、お引取りください・・・・正直、目
障りなんですっっ!!!出てって・・・・・早く出てけっ、人殺しっっ!!!」

  追い出され、途方に暮れるかのように歩を進める要。どのくらいの件数を回り謝罪しただ
ろうか。要の精神はかつてないほどボロボロになっていた。

  要 「ははは・・・・・俺は・・・なんて罪人なんだ・・・!!!」

  要は、してしまったミスの清算と責任を一人で被ろうとしていた。そんな要を気遣い、冴