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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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無限の図書館




鳴海探偵事務所には地下ガレージがある。
ここは一般の依頼人には公開しない鳴海探偵事務所のシークレット・スペースであり、捜査に使う『機材』を収納する部屋でもある。
翔太郎とフィリップの二人は、その地下ガレージの真ん中に立っていた。
「・・・・・・いいのか、お前まだ本調子じゃないんだろう?」
翔太郎はまだ少し青い顔のフィリップに問いかける。
「問題ない。確かに長時間でより深くまでダイブする『検索』は難しいが、短い時間、限られた情報だったら取得可能なハズさ」
フィリップの『検索』。
地球の記憶の全てが存在するという精神世界、『地球の本棚』にアクセスし知りたい情報を閲覧すること。
膨大の情報が溢れかえっている『地球の本棚』のなかから、翔太郎たちが外部調査で収集した情報をキーワードにし任意の情報を絞り込む。
十数年前のとある事故がきっかけでフィリップのなかに宿った特殊能力。
難事件やドーパントがらみの超常事件の際には犯人や犯行の手口、アジトなどの特定に一役買っている。
「さぁ、―――検索を始めよう」
その声をきっかけに、、フィリップは深い精神世界へと潜って行く。
真っ白な空間にある無数の本。
縦も横も終わりのみえない無限の本棚。
この無機質で無制限な知識の図書館。
これがフィリップの心象世界。
「では、翔太郎。キーワードを」
目を瞑りトランス状態に入ったフィリップが翔太郎に問う。
「一つ目のキーワード、『サイレント・キーパー』だ」、
それに応える翔太郎。
すると、その単語をきっかけに膨大だった本棚が次々に整理されていく。
必要のない情報は削除され、関係のある情報は集められ、無数にあった本棚は数台にまでしぼられた。
「まだ絞りきれないね。次のキーワードだ」
「二つ目のキーワード、『永田省吾』」
再び本棚は整理され、とうとう棚は一つだけになる。
「ふむ。もう一息と言ったところか。では次のキーワードを、ぐぅぅ!?」
フィリップは突然苦しみ出した。
「フィリップ! 大丈夫か!?」
「も、問題ない。や、やはりまだ食あたりのダメージから完全に復帰出来ていないみたいだね」
青い顔のままトランス状態に入っているフィリップは苦しそうに答える。
「・・・・・・やっぱりまだ早すぎたんだ。『検索』はここまでに、」
「だ、大丈夫だ!」
『検索』を打ち切ろうとする翔太郎をフィリップは止める。
「・・・・・・僕は決めたんだ、君の力になると。この街を守ると。・・・・・・あと一回、あと一回くらいなら本の絞込みが可能だ。・・・・・・翔太郎、キーワードの入力を頼む・・・・・・っ!」
「フィリップ・・・・・・」
苦しそうになりながらもトランス状態を解除しないフィリップ。
(・・・・・・時間がない。ここで迂闊なキーワードを言うわけにはいかねぇ・・・・・・)
こうしている間にも、翔太郎たちに正体を探られたサイレント・キーパーが何をしでかすか分からない。事態は一刻をあらそう。
翔太郎は考える。
どんなキーワードを入力するか。
真倉との共同捜査で何を得た情報か? いや、もしかしたらそれじゃ絞込みが弱いかもしれない。もっと決定的なキーワードが必要だ。
永田省吾との戦闘の情報か? しかしさっき固有名詞で『永田省吾』と打ち込んだのに絞りきれなかった。おそらく『プレスメモリ』と入力しても『永田省吾』の情報と近すぎて、おそらく本が絞り込めないだろう。
あの光の怪人についてはどうか? しかし『サイレント・キーパー』、『永田省吾』ときて別の怪人の情報を入力したらかえって遠くなってしまうのではないだろうか。
(フィリップの体力は限界だ・・・・・・ミスるわけにはいかない・・・・・・っ!)
「・・・・・・分かった」
そう呟いた翔太郎の顔には覚悟の色が滲んでいた。
「それじゃあ最後のキーワードだ、フィリップ」
翔太郎の静かな言葉にフィリップは額に大粒の汗を滲ませながら頷く。
「最後のキーワード、―――『劣化品』だ」
"ごの力はおでと同じ劣化品! おでと同じ境遇のメモリなんだ!"
翔太郎は永田の言葉を思い出していた。
ガイアメモリの劣化品。
永田はそう言っていた。
その言葉はおそらく字面通りの意味。
裏の市場にすら決して流通されない、試作段階ではじかれた劣化品。
そんな売り物にもならない、ある意味で希少度の高いメモリを永田は一体どこで手に入れたのか。
もしかしたら、そのメモリをもらった場所こそが、サイレント・キーパーの根城なのかもしれない。
翔太郎はこの単語からその劣化メモリの流通経路、そしてその経路に必ずあるサイレント・キーパーのアジトの場所を突き止めようと試みた。
「問題は、今のキーワードだけでフィリップの『検索』が絞りきれるかどうか、ってところか」
「・・・・・・」
額に大粒の汗を浮かべて検索を行うフィリップ。
かなり精神をすり減らしていることが窺える。
その様子に翔太郎まで力んで思わず拳を握ってしまう。
「頼むぜ、―――相棒!」
「ぐ、がはぁぁ!」
何か堪えていたものを吐き出したようなフィリップの絶叫。トランス状態が完全に解かれた。
「フィリップ! おい、大丈夫か!?」
ぜーぜー、と肩で呼吸をするフィリップ。翔太郎はそれに近づき介抱しようとする。
それをフィリップは手で制する。
「だ、大丈夫だ、翔太郎。も、問題ない。それより分かったことがある」
フィリップは未だに肩で呼吸をしながらもマジックペンを取りホワイトボードの前に立つ。
「分かった事は二つ」
まだ青い顔のまま、フィリップはホワイトボードに何かを書いていく。
「一つ目は永田省吾の所持していた『劣化メモリ』について」
フィリップはいくつかの英単語を書く。
「そしてもう一つは、正体不明の連続誘拐犯、サイレント・キーパーのアジト、だ」
そこに書かれていたのは風都のとある住所。
今まで警察の目をかいくぐってきた、完全犯罪者のアジトの場所が書かれていた。