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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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廃棄処分認定製品(リジェクトメモリ)




「リジェクトメモリ?」
翔太郎は未だにホワイトボードに単語を書き出している青い顔のフィリップに問う。
「そう。別名、廃棄処分認定製品。その名とおり売り物として市場には出せなくなったガイアメモリだね」
フィリップはホワイトボードに慣れた手つきでreject memoryと書き込む。
「そのメモリによって理由は異なるとは思うのだけれど、何らかの事情で不適格品のレッテルを張られたメモリのことをさすらしい。僕も調べるまではその存在を知らなかったよ」
「? ちょっと待て。"ミュージアム"にいたお前が知らないガイアメモリだって? そんなものがあるのか?」
ミュージアム。
以前、風都でその強大な影響力を誇っていた、とある富豪が設立したとされる、ガイアメモリを開発・流通の秘密結社。
非公式・非合法の裏組織。
その存在の一切が謎。
しかし、街のドーパント事件の記録から推測しても少なくとも10年以上前から活動していたとされる。
ガイアメモリは真っ当な流通手段では販売されず"闇のセールスマン"と呼ばれる裏社会の販売員たちによってさばかれていた。
彼らは欲望を持つ人間ならば誰にでも大量のガイアメモリを売り、永田のようなドーパント犯罪を助長させていた。
さらに、風都のいたるところに研究施設を持ち、日夜ガイアメモリの人体実験も行っていた。
まさに倫理や道徳といった概念の一切を無視した所業。
警察もミュージアムの存在は認識していたが、組織のあまりに大きすぎる規模や権力、加えて警察側にも報酬目当ての内通者がいたりなどして、結局はその全容を掴むまでに至らず、捜査線上に出てきても途中で消えてしまうのが常だった。
しかし、数年前に組織の頭目だった男が死に、加えてスポンサーの支援を打ち切られたことにより組織は完全に壊滅、現在ではガイアメモリの流通も沈静化の兆しをみせていた。
フィリップは鳴海探偵事務所に来るまでは、そのミュージアムで中核を担う働きをしていた。
「廃棄処分が決定していたメモリだったけれど、一部のミュージアムの研究員が秘密裏にメモリと研究データを持ち出していたみたいだね。かなり巧妙に盗んだから上層部には関知されなかったみたいだ」
「・・・・・・あのミュージアムの上層の、園崎家も知らないメモリ・・・・・・」
その呟きの響きに、翔太郎は何か得体の知れない寒気を感じる。
フィリップは翔太郎の言葉に頷く。
「そう。そしてその後もリジェクトメモリの研究と調整は組織内部の深いところで続けられた。―――その研究員たちによって」
「!? ということは、サイレント・キーパーの正体ってのは!?」
「元ミュージアムの研究員、という可能性が高いね」
壊滅したはずの悪の組織の残党。
街を支配していた恐怖の破片。
それらと幾度も戦ってきた翔太郎は軽い戦慄を覚える。
「それじゃあ永田は元はミュージアムの研究員だったってコトか?」
「いや、おそらく永田は違うだろう。ミュージアムの研究員はその研究を隠匿するために原則的にその研究所の敷地から外へは出られない。君が調べた永田の経歴をみても、長期的にどこかに雲隠れをして社会とのつながりを絶っていたという記録はない。永田はサイレント・キーパーの下っ端だと考えるのが適当じゃないかな」
「じゃあ、サイレント・キーパーってのは」
―――"お、お前ら、さでは『あの人』の敵だな。おで達の計画を邪魔じに来だヤツラだな!"
永田の言っていた『あの人』。今回の連続誘拐事件の発案者。
―――"ぞうはざぜない! おでは選ばれし者なんだ! もう誰にも、おでのごどはバカにはざぜない! お前らなんがに邪魔ざぜでなるものか!"
そして永田の劣等感を利用してその計画に加担させている人物。
―――"や、やっだ! 助げが、助げが来だんだ!"
そしてその人物はおそらく。
"な、なんたって、ぞ、ぞの怪人はな! お、お前ら仮面ライダーの、"
「あの、光の怪人か・・・・・・っ!」
雷鳴とともに現れ落雷を身に纏ったように眩い光を発する。
まるで雷を人間という形に作り直したような人型。
永田のような人の形状から外れた姿ではなく、あくまで人間としての形を維持したフォルム。
顔はマスクで覆われており、両目には光る赤い複眼。
・・・・・・それはまるで、ダブルの劣化品のようなドーパント。
「決め付けるにはまだ早いよ、翔太郎。まだ仮説の段階さ。しかし、例えばあの光の怪人がリジェクトメモリを使用したドーパントだとして、あの怪人が、なにかの『プロトタイプ』の怪人だとしたら・・・・・・」
ダブルは存在するガイアメモリのなかでトップクラスの能力を誇るメモリ。
それを産み出すためにミュージアムが幾度もの『試行錯誤』を繰り返したかなど言うまでもない。
その『試行錯誤』の結末の一つが、あの光の怪人だとしたら。
「あいつがダブルの原型だとでもいうのかよ!」
フィリップの推論にかみ付く翔太郎。
仮面ライダーは街の守護者。
仮面ライダーという名前は街の人々がつけてくれた、平和の称号。
それとよく似ている者、形質の近い者が不当な暴力を使い不正な犯罪に手を染める。
仮面ライダーという言葉に誰よりも誇りを持っている翔太郎はフィリップの言葉を容認するわけにはいかなかった。
「あくまで僕の予想の話さ」
熱くなる翔太郎とは対照的にどこまでも冷静な態度のフィリップ。
「ただ、」
しかしその態度は、相棒を落ち着けるための、彼の仮面にすぎない。
「ただ今言えることは、あの光の怪人が僕らを一瞬で叩きのめせる強力なドーパントで、あの危険な思想を持つ永田、サイレント・キーパーの一員である、ということ。つまり、
―――彼らを野放しにしてはいけないということさ!」
フィリップの目には、翔太郎と同じくこの街の悪を許さない熱き感情が渦巻いていた。