The world make kaput <1章:2>
肉焼き奉行
エリス:
「一撃…」
ラウル:
「なんつー物作ってんだ…」
エリス:
「倒せたんだからいいじゃないですかぁ~…あ!」
ラウル:
「どうした?」
エリス:
「頭がぁ…」
ドスゲネポスの頭は原型を留めていなかった。
ラウル:
「当たり前だろ」
エリス:
「ぶー。あ、私お肉焼きたいんで先にキャンプに帰ってて下さい」
ラウル:
「あまり遅くなるなよ」
エリス:
「は~ぃ」
「♪…フフフン、フフフン、フフフン、フフフン、フンフンフン♪上手に焼けましたぁ♪♪♪」
鼻歌を歌いながら焼き上げた肉を太陽にかざし、
「おいしそぅ…」
と洩らし、次の肉を設置する…
と、そこに一つの影が忍び寄る…
???:
「小娘よ!そんなもので満足しているのか!?」
ビクッとして声の方を振り返ると、そこには中年の男が立っていた。
エリス:
「…おじさん…誰?」
???:
「見るがよい!肉焼きとはこうするのだ!!」
と、エリスの発言を無視し使い込まれた自前の肉焼きセットを取り出して肉を焼き始めた。
エリス:
「あの…」
???:
「…破アァッ!!」
いきなり大声を出し立上がると、エリスと同じ様に太陽に肉をかざし、少ししてからエリスの前に差し出した。
エリス:
「…食べろって、事?」
静かに頷く謎の男
恐る恐る口にするエリス…
エリス:
「モグモグ……!!!んんんんんんまぁぁぁぁぁ!!!!!」
腹の底から出した声は乾いた大地に響き渡った
エリス:
「おじさん!凄く旨いっス!どうやって焼いてんですか?モグモグ」
そう言いながら肉を食べ続けるエリス
???:
「はっはっは!肉焼きとは人に教わる物では無い。己の目で!鼻で!口で!幾度と無く焼き続ける事で成せる業なのだ!」
エリス:
「モグモグ…奥が深いんですね!モグモグ…」
???:
「娘よ。お主もこれを期に肉焼きの高みを目指すがよい!」
そう言いエリスに背を向け、去ろうとする男
エリス:
「モグモグ…ゴクン。そうだ!おじさんお礼にコレ…」
と先ほどのドスゲネポスの素材を差し出すが、既に男の姿は無かった…
エリス:
「…あれ?」
ラウル:
「エリス!どうした!?」
先程の叫び声を聞いてラウルが駆け付けてきた。
エリス:
「あ、ラウルさん。このお肉食べてみて下さい!」
差し出した肉は食べるとこなどほとんど残されては無かったが僅かに残っている所を食べてみる…
ラウル:
「こ、これはっ…!?」
エリス:
「凄いおいしいでしょ!さっき変なおじさんが来てね…」
ラウル:
「エリス!その男、スルギと名乗らなかったか!?」
肉を食べるやいなやエリスの言葉を遮るラウル。
エリス:
「え、あ…お礼しようとしたらもう居なかったんです…知ってるんですか?」
ラウル:
「そうか…あぁ向こうは知らないだろうがな…肉はもういいのか?」
エリス:
「はい♪」
ラウル:
「…じゃぁ帰るぞ…」
いくつかの謎が残るまま2人は褐色の大地を後にした…
作品名:The world make kaput <1章:2> 作家名:ますたーど