あなたと会える、八月に。
◆11
そうして、ジュリアスの誕生祝いの席にコンシェルジュが通信装置を持ち込む。ロザリアの父からだった。そして祝いの言葉に礼を言うとジュリアスは、すっとそれをロザリアに差し出した。
「替わって欲しいそうだ」
同席していたシルヴィとミレイユ、そして懸命に辞退したけれど、祝いの席だからと引っ張り出されたコラの三人が一斉にロザリアを見た。どうやらジュリアスの手紙が無事届いたらしい−−カタルヘナ家の館に、そして主の心に。
相変わらずロザリアは泣きはしない。けれど嬉しさは隠せない。その満面の笑顔にコラはほっとした。そして礼を言うべくジュリアスを見たとき、ジュリアスが本当に慈しむような眼差しでロザリアを見ていることに驚いた。ただしそれは、ロザリアだけに向けられたものではない。ましてやそこに男女の情という質のものも感じられない。親しくて厳しくてそして……優しい視線で、ロザリアを通してカタルヘナ家の人々を見守っている。
まるで、ふだんは存在しない『もう一人の家族』のようだ。
八月に会えることを楽しみにしているのは、カタルヘナの家の人々だけではないのだということをコラは認識した。
ジュリアス様こそが、望んでいるのはないか?
主の家の人々と会える、八月を。
……家族の一員のような気持ちになれる、八月を。
< 第3章 15歳 - 了 - >
作品名:あなたと会える、八月に。 作家名:飛空都市の八月