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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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離昇



『いま映像が入りました! 皆様、おわかりになれますでしょうか。これです。これが〈ヤマト〉です! 噴煙から姿を出したこの船。これが、宇宙戦艦〈ヤマト〉であるということです! あの爆発を受けながらまったく無傷のように見えます。これが人類が救われる最後の希望なのでしょうか!』

アナウンサーが机からもう少しで前に転がり落ちそうになって叫んでいる。古代はそれをテレビで見ながら、今度こそ完全に自分は気が狂ったのかと思った。一体全体なんやねんなあのドカーンちゅう騒ぎは。それからなんや出っ来の悪いエレベーターに乗ってるような気がするで。と、思っていたらテレビが映し出したのがこれだ。ひょっとするとこの部屋、何かドッキリ仕掛けのドタバタハウスなんとちゃうのか。

こんな今どき子供向けのアニメでもようやらないようなこと、大のおとながマジメな顔してやってんのか。おれはその主人公にだけはなりたくないな。ハハハ……戦争ごっこもたいがいにしたらええのんちゃうかい。

そうは思うが、体が震える。いや、床が揺れてるのだが、そればかりでもなさそうだった。むろん、武者震いなんかじゃない。それだってことは絶対にない。だいたい、人類救済だとか、地球を元の青い星にとか、そういうのにはまったくこれまでついていけなかったのだ。そりゃあ、思うよ。なんとかしたい。なんとかしなけりゃいけないだろうと。でもそのなんとかをやるひとりに自分がなどと考えると、途方に暮れてしまうのだ。

この船に乗ってるやつら、全員が、本気で自分が人類と地球を救おうと考えているわけだろうか。そうなんだろなあ、うん……やっぱり。冗談じゃないよ。それならボクは、この船にいるべき人間じゃありません。輸送機飛ばしのただのトラック運ちゃんですから。

そうか。あの艦長というヒゲのおっさんは言ったな。おれを、航空隊の隊長って……あれはひょっとして、ひとりしかいないがんもどき隊の隊長ってことかな。そうだよなあ。こんな船でも運送屋くらい要るだろうしな。そう言やただ逃げるのがうまけりゃいいみたいなこと言ってたもんな。

でもヤだ。がんもどき乗りなんて、そうでなくてももっとでっかい輸送機乗りに小突かれるのに、この船にはきっと特攻野郎Aチームなカミカゼ部隊があるに違いない。そんなやつらがおれを見たなら一体どんなイジメを食うか。

ましてやこいつで何ヶ月も旅するなんて冗談じゃないことですよ。ええと、なんて言いましたっけ。〈イスカンダル〉? そこに何かを取りに行くと。ははははは……なんかおかしな宗教で全員頭がクルクル回ってるんじゃないのか。

そうでなければ、と古代は思った。わざわざ船をこんな昔の軍艦まんまの形にしたりはしないんじゃないかな。だいたいなんだ、〈やまと〉ってえのは?

『ええ、戦艦〈大和〉と申しますのは、本来が250年前に海に沈んだ軍艦であるということです。政府は波動エンジン船の建造にあたり、この残骸をカモフラージュに活用することにしました。これはエンジン始動に莫大な電力が必要なことから地球以外で発進させるのは考えられず、といって地下深くからでは外に出せないことから生まれた苦肉の策ということです。なお建造にあたりまして、ビームの砲身などは擬装したものを夜間に取り付けたものの、それ以外は沈没船を内側から、皮一枚残すように……』

「ははは」古代は力なく笑った。「絶対にバカだ」