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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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反応



古代同様、多くの地球の一般市民もこの報道にア然としていた。過熱していたのは軍や政府関係者と、マスコミだけといっていい。むしろ彼らがアツくなるほど、大衆は冷めてしまったようだった。〈ヤマト〉? 〈イスカンダル〉? 〈コスモクリーナー〉? そのおかげで計画停電? 何をギャンギャンわめいてるのだ。オレが心配しているのは、あした食べるための米をどこで手に入れるかということなのに……そう思っていたところに出たのがその映像だった。17基のミサイルの爆発による巨大な黒い煙の中から、現れた突拍子もない形の軍艦。それは昔の沈没船が脱皮したものであるという。

話についてこいというのがどだい無理な話だった。軍人どもはとうとうホントに頭がおかしくなっちまったな。国が敗れるというのはこういうことなんだな……多くの人はそう考えた。もういいや。あすは競輪でもやりに行こう。パンがなければケーキを食べればいいじゃあないか。

十億人と少しになった地球人類の多くはやはり、降伏すればガミラスは命は救けてくれるなどとはまるで期待していなかった。この一件も、なんとか女に子を産ませようとする政治家どもが、またバカなこと始めたか――そんなふうにしか受け止めなかった。男より女の方が敗け戦(いくさ)に強いという。しかし今の地球には、それはあてはまらなかった。

日毎(ひごと)に濃度を高めていくと言われる水の放射能。しかしコップをながめても、それは眼ではわからない。ただ噂が聞こえるだけだ。どこの誰の頭の毛が抜け落ちた。誰の子供が奇形で生まれた。どこかの家がまた心中で全員死んだ。何も猫まで殺さなくてもよさそうなのに……。

西暦2199年。それが地球の地下都市だった。乾坤一擲(けんこんいってき)。起死回生(きしかいせい)。そんな言葉に躍(おど)る者などイカレた右翼団体の類(たぐい)か、とにかく自分が120まで生きられるなら他はどうでもいいとわめく頑固じいさんくらいなものだ。

そこへ今のあれである。ねえ見ましたか。例のナントカ。困りますよね、畑に光を当てないなんて……自然のものと違うのに、そんなことして大丈夫かしら……。

船務長の森雪が聞いたらイスカンダルなんか行くのはやめてこのクルーだけの星を探そうと言うかもしれないような会話が、されてしまうのが現実だった。そして一方、一部の者はすぐさま言い出し始めていた。〈コスモクリーナー〉? 騙されるな。あの船は、あいつらだけで地球を逃げる気に違いないぞ……。

むろん、強硬な降伏論者が考えを変えるはずもない。公開された映像は暴動に火を注ぐだけだった。引き返させろ。いや、ガミラスにくれてやれ。〈彼ら〉は実は地球を恐れているだって? はっ、バカらしい。だったらなおさら、絶対服従の証(あかし)として、そのナントカ計画を放棄すればいいだろう――。

さてところで、このように多くの反応があるなか、しかしたった一点だけ、誰もがほぼ一致する見解を持ったことも忘れず付け加えておかねばならないだろう。それはこのようなものだった。

いずれにしても船のたった一隻で、何をどうできると言うんだ……。