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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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ヒマなふたり



艦内のどこもかしこもテストのために忙しくクルーが立ち働いている今の〈ヤマト〉の中にあって、逆に第一艦橋はガランと静まり返っていた。就いているのはただのふたりで、他の席は空いている。電子機器の唸る音や空調の音、それに何やらパリポリと鳴る小さな音しかしない。

「島・太田・森・徳川に真田副長の五人はワープテストの準備。新見さんは各種テストの結果入力で大忙しと。艦橋員で今ヒマなのは南部さんくらい?」

ふたりのうち片方である相原が言うと、

「そんなことはないですよお」

スナック菓子をつまみつつ、ぶ厚いファイルに眼鏡をかけた顔をくっつけそうにして読んでいた南部が応えた。と、それから「うわちっ」と叫んで身を跳ね起こす。熱い飲み物を口に含み過ぎたらしい。ストロー付きのカップを顔をしかめて見てから、

「木星行ったら主砲や魚雷をドカドカ撃ちまくるんだから。木星の重力でビームがどう曲がるか見なきゃなんないし。対空砲もあらためてテストし直さないとね。今から準備しておかないと」

「ふうん。波動砲は?」

「やらない。コスモナイトが手に入るならおれとしてはしたいんだけど、艦長がダメと言っているんでね」

「へえ。なんで?」

「それは『地球で撃ったのが最大だ』と敵に教えるようなもんだからさ。木星で100パーセントで撃ったりしてみろよ。明らかに威力が小さいということになりゃ……」

「ああなるほど。100か120のどちらかしかないんだよね」

「そう。単純に二割引き増しじゃなくて、100だと威力は半分のはずなんだけどね。艦長にそう言われたらあらためて撃てない」

「そうか……じゃ、あれは? 〈ワープ・波動砲・またワープ〉と連続してできるなら〈スタンレー〉を一撃離脱できるってやつ」

「それも無理そうだなあ。基地の位置がわかるなら100で狙い撃てるんだけど、わからないから120で全部焼くしかないんだし……」

「白夜の圏にあるはずだって話でしょ」

「それが広いんだからなあ……って、ちょっと待て。おれよりそっちの方がヒマなんじゃないのか?」

「そんなことはないですよ」

「本当か?」

「本当本当。火星の陰に入るのは〈ヤマト〉の姿を見えにくくするっていうのもあるけど、通信機器なんてのは太陽の影響受けるから。今のうちにやるべきことをやっとかないと」

「ふうん」

と言った。元より、ふたりがここに居るのは、第一艦橋に誰ひとり士官が就いていないわけにはいかないという理由による。南部にしても本当ならばテストのために今は艦内を駆けずり回っていたいのであり、相原もそれは同じであることをわからぬはずもないのだった。

「それにどうも……」相原は言った。「さっきから妙な通信傍受してるんだよね。火星の動きが慌ただしいみたいでさ。この近くに艦隊を呼び集めようとしているような……」

「なんだ?」と南部は言った。「艦隊って、味方のか?」